小2道徳「ある日の くつばこで」指導アイデア
執筆/佐賀県公立小学校・小倉美佐枝
目次
内容項目
善悪の判断、自律、自由と責任
自分が正しいと思ったことを勇気を出して行おうとする気持ちや態度を育てる。
趣旨
小学校生活の中で起きることは、楽しいことや嬉しいことばかりとは限りません。時に、悲しいことやつらいことも起きます。子どもたちにとっては、マイナスに感じることのほうが印象に残ってしまうことも多いのです。
二年生になると、行動の幅も少しずつ広がり、友達とうまくいかなかったことをきっかけに、友達に対して、いたずらをしたり、仕返しをしたりすることもあります。
「いたずらや仕返しがよくないことだ」という認識は、二年生なりにきちんとあるのですが、行動がなかなか伴わないことも確かです。だからこそ、授業の中で何度もくり返し考えるチャンスを設けることが大切です。
使用教材
「ある 日の くつばこで」(日本文教出版 二年)
これは、「くつかくし」の話です。多くの方は、学級のある子の運動靴、または上靴が隠された、靴箱からなくなったという経験があるのではないでしょうか。
私も、担任学級でも担当学年でも経験があります(そう考えると、頻繁に起きやすいトラブルの一つかもしれません)。この単元では、靴を隠す立場イコールよくないことをする人として考えて、「靴隠しをしてはいけない」と、生活指導のように進めないように気を付けたいところです。
このお話に登場する3人は、次の通りです。
① 友達(くみ子さん)の靴を隠す、かずみさん。
② 靴を隠す瞬間を見て、後で元の場所に戻した、としおさん。
③ 靴を隠す瞬間を見て、いろいろ考える、まり子さん。
子どもたちが、①の靴を隠す側ではなく、②や③の靴を隠す場面に出くわした人の立場に立って考えることに重きを置きたいところです。
そして、としおさんやまり子さんがその後どうしたのかをふまえて、自分だったらどうするのかを考えさせることで、「よいこと」「よくないこと」を判断する態度へつなげたいと思います。
本時の展開
①「くつかくし」って…。
・お話全文を範読する。
・話の状況を簡単に確かめる。3人の名前、立場、行動(それぞれが何をしたのか)。
「くつかくし」はよいことですか? よくないことですか?
大半の子どもたちが、「よくない」と即答します。その後が大切です。
「くつかくし」がよくないのはどうして?
改めて、靴を隠された人の気持ちになり、想像させます。靴を隠された人がいかに悲しく、つらい気持ちになるかを想像することで、「心がくもっている」まり子さんの気持ちを想像しやすくなります。
②「くつかくし」を見ちゃった…。
「だれにも言わないでね」と言われたけど、どうしよう。みなさんならどうする?
「私(ぼく)なら…しようかな」
「なぜって…だもん」
この二つの話型を提示し、思いを表現する手立てにします。もちろん、話型にこだわらず、自由に発言してかまいません。現時点で、学級の子どもたちが、どのような行動をしようとするのかを、教師が知る機会になります。
・先生に話す。
・黙っておく。
・くみ子さんに教える。
・かずみさんと話す。
だいたい、これらの4つの行動に分かれます。その理由を尋ねると、くみ子さんに教えたら傷付くかもしれない、かずみさんを注意したほうがいいかもしれない、かずみさんも本当は困っているかもしれないと、子どもたちなりの思いがあります。二年生になると、相手への思いやりの意識が見られる場面が増えてくるものです。
③「くつを元にもどした」けれど…。
「くつを元にもどした」から、もう大丈夫だね。それなのに、まり子さんの心がくもっているのはどうして?
靴を元に戻したから一安心とは思っていないまり子さんに気付くことが大切です。靴を隠した「かずみさん」のことを気にしている、心配していることに気付かせ、そのために、まり子さんが「勇気」を出す決心をしたことに気付かせます。
よし! 勇気を出して、まり子さんはかずみさんに話をしに行くよ。あなたがまり子さんなら、どんなことを言うかな?
3人組になり、それぞれがどのようなことを話すかを考え、交流します。この時、その言葉を実際に友達に言ってみて、感想を聞くようにするとよいでしょう。
・靴を隠したらいけないよ。(注意・確認)
・けんかの仲直りをしたほうがいいよ。(仲裁)
・どうしたの? 大丈夫?(寄り添う)
子どもたちなりに、お互いが気持ちよくなるためにはどうしたらよいかを真剣に考えます。その気持ちが、これからの自分自身の学校生活でトラブルに出くわした時の解決の糸口になります。
だからこそ、グループや全体で、いろいろな考えを交流し、知る機会を設けたいところです。
④まり子さんって…。
勇気を出して頑張ったまり子さん。よかったところを振り返って、思ったことをワークシートに書きましょう。
板書例
評価
話合いの様子、表情を観察
靴を隠した友達のことを想像し、自分ならばどのような行動をしたり、どのような話をしたりするかを考えることができたか。
イラスト/小泉直子 横井智美
『教育技術 小一小二』2019年11月号より