写真と動画で叶えるデジアナ折衷のオンライン授業例

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備えあれば憂いなし!オンライン授業・ICT活用術

オンライン授業は、もっと柔軟に考えていい。使うのは使い慣れたツールでいい。紙のドリルを写真に撮ったり、音読の様子を動画に撮ったりしたものを教師に送り、教師からコメント共に子どもたちにフィードバックするという、デジタルとアナログを融合させた双方向の遠隔授業を行っているという井上美鈴先生に、その行い方を教えていただきました。

執筆/京都教育大学附属桃山小学校・井上美鈴

自宅オンライン学習手元
写真AC

完全デジタルにこだわる必要はない

2020年3月から続いてきた休校。教育を止めないため、子供たちと繋がる手段を模索していた本校では、4月の始業式の段階でオンライン授業を行うことを決めていました。始業式は1時間だけ行い、家にタブレット端末がない家庭にはタブレットを貸し出すことになりました。

「オンライン授業」というと、きっと多くの方が「児童・生徒の顔が見えて、教師が授業をリアルタイムでしている」というイメージを持たれるのではないかと思います。しかし、このスタイルはかなり難易度が高いです。

日中は保護者が仕事で不在かもしれませんし、1回しか出会ったことのない子どもたちに新しい方法を実践することはかなり難しいものです。

私が担任をしている中学年では、学校で普段から使っているアプリ「ロイロノート・スクール」を使い、始業式に渡した紙のドリルや課題を子どもたちが写真や動画にしてオンラインで提出するという形をとることにしました。子どもたちの健康観察もそこで行っています。

【関連記事】「ロイロノート・スクール」を使った授業のアイデアについては、こちらの記事も併せてお読みください→小学校オンライン授業実践例:使うツールは?保護者への連絡は?

1日にやるべき課題の分量をわかりやすく示す

本校では当初4月20日までの休校となっていたため、20日までの予定は提出日にかなりの幅をもたせてのスタートとしました。ただ、これだと1日にどのくらい課題を進めたらいいのかがわかりにくいという保護者の声があったので、1日に少しずつ課題を提出する設定にし、朝からしっかりと学習に取り組める習慣がもてるようにしました。

休校中の家庭学習内容(改定前)
当初の家庭学習の予定表。当初は「1日にどれくらい課題を進めたらいいかわかりづらい」という保護者の声が。
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休校中の家庭学習内容(改定後)
1日にやるべき課題がわかりやすいように改善。
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そのうちに、自分でスケジュールを立て、「こんなふうにがんばっています」と自主的に写真を送ってくる子も出てきました。

子供から送られてきた1日のスケジュール
子供から送られてきた1日のスケジュール

このようながんばりを、おたよりなどを使ってクラス全体で共有することで、子どもたちは自分なりの一日の過ごし方に見通しを持ち、取り組んでいるところです。

一番最初に出した課題は「自己紹介」

私が子どもたちにはじめに出した課題は自己紹介です。

本校では始業式が1時間ありましたが、三密を防ぐため、子供たちが学校に来て、前の学年の担任から成績をもらい、今年度の担任から休校中の課題を聞いて帰るだけでした。学級開きどころではありません。子供たちの顔をじっくり見る時間もなく、帰った後には虚しい気持ちでいっぱいだったからです。

課題では、自分自身の写真を必ず入れることを指示し、まず担任がお手本の自己紹介カードを送りました。子どもたちは個性たっぷりに自己紹介カードをつくり、一人ひとりの顔が見えてきました。

音読やリコーダー演奏は動画で提出

国語科の音読や英語活動の自己紹介、音楽科のリコーダー演奏などは子どもたちが動画を提出するため、教師は子どもたちの声や表情がわかります。国語科の「春のうた」の音読では、一人ひとりの工夫が感じられ、家で何度も練習したことが伝わってきて、うれしい気持ちでいっぱいになりました。

子供の写真にコメントをつけて返却する

子どもたちとのやりとりでは、提出された作品(自分のノートなどを写真に撮ったもの)に赤字で添削やコメントを入れて返却をしています。子どもたちは提出しっぱなしという一方通行ではありません。教師が返信をすることでつながりを感じ、次の学習への励みになっているようです。

児童のノート
児童のノート
教師からの返信の例
教師からの返信の例
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保護者との連携は欠かせない

教師側も手探りの状況なので、オンライン授業開始一週間後に短いアンケートを保護者にお願いしました。これにより、家での様子を知ることができ、次週の課題設定につなげることができました。

保護者へのアンケートの結果
保護者へのアンケートの結果

それだけでなく保護者からのコメントが励みになりました。

「大変お世話になりありがとうございます。子どもたちのためにたくさんの事を考えクラスティングやロイロノートで配信していただき、細やかな配慮ありがとうございます。学校でお友達や先生と一緒に学ぶという事の大切さ・ありがたさを感じています。これからもよろしくお願いいたします。先生方皆さま、お疲れの出ませんように」

「休校中ですが、学校との関わりが薄れる事なくお友達と会えない時間の共有ができているように感じております。ありがとうございます」

誰も予想していなかったこの事態に「教師は何ができるのか」と考えている人が多いと思います。私たちはこのように「できることから」をキーワードに進めてきました。日本全国の実践から学びながら「教育を止めない」ための方策を、一緒に考えていけたら嬉しいです。

井上美鈴・ 1984(昭和59)年愛知県生まれ。2008年京都教育大学附属桃山小学校に着任。2010年臨床心理士資格取得。

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