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学級開き、気になる子どもへの関わり方と学級づくりのポイント【特別支援入門 こう取り組めばうまくいく】①

通常学級の担任の先生は特別支援教育の知識がますます必要な時代になってきました。特別支援教育について、子どもたちや保護者とどのように関わっていくか、チーム学校でどのように取り組んでいくかなどを特別支援教育の専門家である、京都教育大学総合教育臨床センター学びサポート室講師・榊原久直先生と京都教育大学総合教育臨床センター長・相澤雅文先生に対談していただきました。その内容を「特別支援入門 こう取り組めばうまくいく」の3回シリーズで紹介します。第1回目の今回は「学級開き、気になる子どもへの関わり方と学級づくりのポイント」です。多様な子どもたちと関わる担任にとって、学級開きや年度初めにどのように子どもたちと関わっていくことが大切かをお届けします。ぜひ新年度の学級経営のヒントにしてください。

相澤先生と榊原先生
相澤雅文先生(写真左)と榊原久直先生

新年度当初、新しい学年の「見通し」を伝えよう

――学級開きや新年度当初に多様な子どもたちに接する際の担任の留意点を教えてください。

相澤 まず、担任として、多様な子たちが学級にいることがあたりまえという認識をもつことが重要になります。そして、子どもたちが安心できる環境をつくることが学級づくりをしていくうえで大切です。そのため、みんなと一緒にこういうふうにして楽しみながら学校生活をしていきたいというメッセージや簡単な約束事、ルールなどを共有していきましょう。約束事といっても特別なことではなく、例えば、「朝、登校してきたときには、互いにあいさつをしようね」など、人と人との関わりをつくっていくような基本的なことです。

榊原 その約束事は子どもたちを縛るためのものではなく、「こういう学級にしていこう」と先生の考えがわかり、子どもたちが「見通し」をもつことができるという意味合いです。新年度当初は、学級や学級の仲間が変わり、担任の先生も変わり、最初はどうしていいかわからないときに、見通しを示すことによって、安心感をもたらすことができるようになります。

相澤 安心感は心のエネルギーのようなもので、安心感がないと頑張れないのです。榊原先生がおっしゃっているように見通しを示すことによって、子どもたちは安心感をもつようになります。例えば、3年生になると理科が始まり、理科室を使うようになります。それを伝えながら理科室に行くなどするとよいでしょう。年度当初や1学期には、何があって、どういう学校生活が待っているのかなど、見通しがもてる働きかけが大切です。

榊原 「学級開き」という言葉は、先生たちにとって、とてもプレッシャーのかかる言葉だと聞きます。子どもたちも保護者のみなさんもドキドキしていますが、それ以上に先生方も緊張されていると思います。4月のスタートダッシュがうまくいかないと1年が大変なことになる、と思われるくらい気負われているのではないでしょうか。

そのようなとき、先生同士で「4月はどうされていましたか?」「どうしたらよかったですか?」といったことを聞き合うなどして、子どもたちだけでなく、先生たちも安心できるような環境を整えることが大切です。

相澤 私は小学校の担任をした経験があります。担任のときには、子どもの様子を観察する時間をつくるようにしていました。授業中だけではなく、休み時間の様子や子ども同士の関わりの様子などを知ることも学級づくりには大事になってくるでしょう。

――子どもに支援が必要かどうかを判断するには、子どもの何を見ればよいのでしょうか?

相澤 私たちが先生方と話をするときには、「いろいろな視点から子どもを見てください」と伝えています。認知的な側面、人との関わりなどの社会性の側面、運動面、不器用さなどの側面、家庭の環境、友達の環境などです。それから、「時系列」と言いますが、その子と出会ってからどのように変化しているのかということも大切な視点の1つです。気になるところが増えてくるのであれば、早期に対応していく必要があるでしょう。それから、学級の活動にどういうふうに参加しているのか、学びの中に何かしらの困難さが見受けられるかなど、集団生活の中で見ていくことも気付きにつながります。

榊原 集団生活の中で、いわゆる「問題行動」を起こすことがあります。これは、不安や心配、苦手なことなどを言葉で伝えることができなかったり、本人が気付いていなかったりして、「先生、助けて!」というSOSの場合があり、「子どもが困っている」と理解していただけるとよいと思います。

このように行動上の問題が外側に向かって広がるタイプは、トラブルを起こすなどで先生方にとってもわかりやすいのですが、子どもたちの行動上の問題の中には、内側に向かって広がるタイプもあり、こちらはわかりにくいと言えます。このようなタイプは、例えば「感情のメリハリがない」「気力がない」「友達を避ける」などの特徴が見受けられます。その子たちも忘れずに意識的に見ていってください。

それから、テストやプリントで誤答が多かったり提出物を出せていなかったりということはないものの、本人や家族が見えないところで非常に頑張って何とか乗り切っている子どもがいます。一見、物事を問題なくこなしていますが、人の何倍も時間とエネルギーが必要で、どんどん疲弊していく子どももいます。その子たちも見ていただけたらよいと思います。

「できた」と思えることを増やしていく

――学級担任は、気にかかる子に対してどのように接して、どのように支援していくとよいのでしょうか? また、心を閉ざす子どもに対して、どのようにすれば心を開いてもらえるのでしょうか?

相澤 子どもの課題と感じられる行動には必ず背景があります。環境的な要因かもしれませんし、個人的な特性からくるものかもしれません。その背景を観察しながら理解していくことが必要です。また、「どう感じているのか」「どうなりたいのか」を本人に聞くことも大切です。そこから、一緒に考えながらアプローチして、本人も「できた」と思えることが自己効力感につながっていきます。その際、子ども自身が自分のよさに気付くことが大切です。先生方や私たち大人は、子どもの苦手なところを直すことを考えがちですが、苦手なところはなかなか直らないことが多いです。直そうとして圧力をかけるのではなくて、その子のよさを引き出すという視点で子どもと関わっていくことが重要です。

榊原 そのとおりだと思います。子どもには得意不得意があり、先生や私たち大人は、よかれと思って子どもの不得意を何とかしようとするのですが、子どもにとっては、「そのままの私ではだめなの?」というふうに傷つく可能性もあります。「そのままのあなたも好きだよ。大事にしているよ」ということを子どもにしっかり伝えていくことが、心を開きにくい子どもには特に大切になります。
「苦手なことは苦手と言っていいし、そのままでもいいけど、好きなことがあるんだったら、すてきな部分を伸ばしていこう」というふうに伝えれば、子どもは「この人は私と一緒にいてくれるんだ」と安心感をもち、閉ざした扉からこちらをのぞくようになってくれます。

相澤 それから、学校の中でその子が困ったときに安心して相談することができる人がいることも大切です。それは、担任の先生だけではなく、養護教諭や通級の先生、スクールカウンセラーなど、いろいろな立場の方が担うことができます。子どもが選べる、ということも大切です。担任の先生は、責任感もあり、「私に言ってね」と子どもに伝えることがあると思います。しかし、そういうつもりはないにしても、「私以外の人には言ってはいけない」というふうに子どもは捉えるかもしれません。「私に言ってもいいし、私でなくても言いやすい先生に言ってもいいよ」というふうに伝えることをおすすめします。担任の先生は身近すぎて直接話すことを遠慮してしまう、ということもあるでしょう。これは先生と子どもとの信頼関係の有無の話ではありません。チームで関わって、多面的に子どもを支えていくことが大切なのです。

気にかかる子を支援する場合、その子だけに何かをするというより、多様な子どもがいる中で、学級みんなで仲良くしていき、誰とでも話ができるような学級の雰囲気(学級風土)づくりが大切だと思います。また、授業では、ユニバーサルデザイン授業など、みんながわかりやすい状況をどのようにつくっていくかが重要になります。

何か支援をしないといけないということではなく、柔らかく受け止める部分とここは頑張ろうねという部分とのメリハリをどのように付けていくかがポイントになります。特別支援教育には「特別」という言葉が付くのですが、「特別」ではなく、その子にとって必要な支援を考えていくということです。「特別」となると、先生も保護者も構えてしまうようになりますが、必要な支援の方法や理解の方法を考えていくという捉え方をすると、周囲の子どもたちも特別なことではないという捉え方をしていくのではないでしょうか。

心のゆとりが子どもによい影響をもたらす

――小学校の学級担任が支援して、実際に成功した事例を教えてください。子どもはどのような変容があったのでしょうか。

榊原 4月当初、ある担任の先生は、わがままで、落ち着きがない子どもだとネガティブな見方をしていて、他の子どもたちのためにならないから、律しようときつくたしなめていました。しかし、状況を見ていると、わざと反抗しているわけではなく、その子が困っていることに気付き、また、先生にも余裕が出てきたため、以前であれば厳しく注意していた場面で、踏み留まるようになってきたのです。そして、その子には直球で指導するのではなく、少し冗談を入れながらリアクションしたり、難しさや疲れを分かち合うようなコメントをしたりするようにしたら、学級全体にもほんわかとした温かい雰囲気が漂い、結果的に、その子も学級の子どもたちも、もうひと頑張りできるようになったという事例があります。

相澤 私が小学校の教員で特別支援教育コーディネーターをしていたときのことです。2週間に1回くらいのペースで訪れるスクールカウンセラーさんに、多動で衝動性の高いその子を見てほしいとお願いしました。心理的な側面を見たてたり、ソーシャルスキルトレーニングをしたりしながら、学級の中でその子に対してどのような関わり方をしていけばよいのか、チームで考えていきました。チームの体制をつくり、その子に関わる人が増え、理解する人が増えることで、その子は心理的にも安定して落ち着いてきたのです。心の側面が満たされてくると行動自体も落ち着くというような効果があったという事例でした。

――小学校の学級担任のみなさんに、「支援」をどのように考えればよいかのアドバイスをお願いします。

相澤 「支援」というのは、その子に代わって何かをすることではなく、その子が自分でできることを増やしていくことが基本になります。そのため、ハードルを上げすぎず、できたときは「できたね」といってしっかり認めて、その子自身も自信につながっていくことが大切です。

榊原 「支援」という言葉にはいろいろなイメージがあると思いますが、最近、この子は他の子と比べて能力が低いので、そこを埋めるという意味合いが濃くなっていることに少し懸念をもっています。そういう部分もありますが、子どもが自信や興味・関心をもつことによって、様々なことにチャレンジする機会を提供し、結果的に能力が伸びたり、行動が獲得できたりしていくことが、発達支援の考え方になります。

子どもが楽しくいきいきと学び続けていくためには、何が必要か、何に困っているのかなどを考えていったり、この子は何を願っているのかを知ったりするところが一番の土台であり、出発点であることを意識することが大切です。穴を埋めるのではなくて、経験値をプラスしていく視点が肝になります。

相澤 その子が得意なところでは活躍してもらい、難しいところは補って、必ずしも全部できなくてもここまでできたらよいというくらいの幅をもつことが大事だと思います。子どもたちにも先生方にも穏やかな学校生活が送れるような環境をつくることを意識するとよいと思います。

榊原久直(さかきはら・ひさなお)
京都教育大学総合教育臨床センター学びサポート室 講師 博士(人間科学)
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。臨床心理士 公認心理師。専門は臨床心理学、発達心理学。共著に『心理職の仕事と私生活』(福村出版、2023)、『コンパス 保育の心理学』(建帛社、2024)など。

相澤雅文(あいざわ・まさふみ)
京都教育大学総合教育臨床センター長 教授 博士(教育学)
東北大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。公認心理師 特別支援教育士SV 臨床発達心理士SV 。専門は特別支援教育、臨床発達心理学。著書に『集団適応に困難をかかえる子どもの理解と対応』(学苑社、2025)、共著に『新訂版 教員になりたい学生のためのテキスト 特別支援教育』(クリエイツかもがわ、2024)など。

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

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京都教育大学教育創生リージョナルセンター機構 総合教育臨床センター(特別支援教育臨床実践拠点・学びサポート室)/監  
榊原久直 ・ 相澤雅文/編   
A5判/224ページ 定価:2,420円(税込) 
ISBN978-4-09-840249-6

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