小4道徳科 長所をのばす「つくればいいでしょ」

文部科学省教科調査官監修による、小4道徳科の指導アイデアです。今回は、A【個性の伸長】「つくればいいでしょ」の実践を紹介します。本実践では、教材「つくればいいでしょ」を通して、人は成長できるのだということに気付き、自分を伸ばしていこうとする態度を育てることを目指します。
執筆/鹿児島県公立小学校教諭・末吉あゆみ
監修/文部科学省教科調査官・堀田竜次
鹿児島県公立小学校校長
鹿児島県小学校道徳教育研究会会長・永里智広
目次
1 はじめに
授業では、すべての子供が自分なりの考えをもって参加することが、どの教科でも大切です。しかし、実際には、道徳科においても一部の活発な子供の発言に頼って授業が進み、全員が主体的に学んでいるとは言えない場面があります。さらに、授業の終末に書かれた振り返りを読むと、教材への感想にとどまり、本時の学習内容について深く考えられていない子供の姿も見られます。
こうした状況を踏まえて、子供が「自分事」として学びに参加できるようにするためには、学習の中に「自分に問いかける」「自分自身に向き合う」時間を意図的に設けることが重要です。現在では、1人1台の端末が普及し、他者との考えの共有が容易になりましたが、道徳科では、この端末を「他者とつなぐ」ためだけでなく、「自分とつなぐ」ためのツールとして活用できる可能性もあると考えます。
本実践では、端末を活用し、子供が自分の内面と向き合いながら学びに参加する姿を目指し、その効果と課題を明らかにすることを目的とします。
2 展開の概略
①シンキングツールを活用した「自分との対話」
個性の伸長とは、自分らしさを発揮しながら、長所を伸ばし、短所を改善することで、調和の取れた自己を形成し、自己実現を目指すことです。子供たちに「友達にはよいところがありますか」と尋ねると、多くの子供が迷わず「ある」と答えます。一方で、「あなたにはよいところがありますか」と問うと、自信をもって「ある」と答えられない姿が見られます。これは、日頃から友達のよいところを探し、帰りの会で紹介したり、教科の学習で互いの頑張りを認め合ったりしているため、他者の長所に目を向けることは得意になっているからだと考えます。
そこで、自分の長所に意識的に目を向けるために、シンキングツールの「ベン図」を用いて長所と短所を書き出す活動を取り入れました。漠然と「長所はあるか」と問うよりも、言葉にして整理する時間を確保することで、自己理解が深まると考えたためです。
さらに、教材に触れる中で、「短所は努力によって長所に変えることができる」「短所も見方を変えれば長所として捉えられる」といった気付きが生まれた際には、最初に記入したカードを修正したり、配置を変えたりできるようにしました。こうした柔軟な見直しの過程が、自己の成長を実感する機会となると考えます。
また、このカードを使って他者と交流する場を設けることで、子供たちは自分の長所だけでなく短所も含めて「これが自分だ」と受け入れ、認める姿へつながるのではないかと考えました。
②LiveQのコメント欄を活用した自分の考えの再構築
授業の終末に、めあてに対する自分の考えをまとめる場面では、その日の学習を振り返って言葉にできることが理想です。しかし、実際には、考えがあっても言葉にするのが難しく、なかなか書き始められない子供もいます。そこで、「長所を見つけたり伸ばしたりするには、どのような考えが大切か」という問いを提示し、LiveQのコメント欄に自由に記入できるようにしました。
考えがまとまった子供から順にコメントを入力し、共感した意見には「いいね」を付けられるようにしました。また、他者のコメントを参考にしながら、自分が「いいな」と思った考えを取り入れてまとめてよいこと、表現に迷う場合は他者の言葉をヒントにしてもよいことを伝えました。これにより、自分の言葉にするのが難しい子供も、他者の意見を手がかりにしながら、自分なりの考えを再構築し、振り返りを書くことができるようにしました。もちろん、ロイロノートの提出箱によるカード共有機能を使って考えを深めることも可能です。特にLiveQには“♡(いいね)”で反応できる機能があるため、他者の意見に触れて反応する行為そのものが、自分との対話を促す契機になることを期待しています。
③学級活動、総合的な学習の時間との関連
道徳教育は、学校の教育活動全体を通して行います。今回の主題「長所をのばす」を取り上げた背景には、事前に学級活動で自分自身を見つめる活動を行った際、自分の好きなものや自分らしさを書くことにためらう子供が多く見られたことにあります。そこで、道徳科では、ねらいとする道徳的価値について「考え合う」ことを通して道徳性を養うという教科の特性を生かし、改めて自分の長所に目を向ける機会を設けました。他者の考えを受け止めたり、話し合ったりする過程を通して、「長所が見つからなければ、つくればよい」という前向きな気付きにつながることを期待したためです。
さらに、総合的な学習の時間「10歳のお仕事研究」では、家族や友達から見える自分のよさを聞いたり、自分の関心のある職業を調べたりする体験活動を位置付けています。これらの活動を関連付けることで、子供たちが自分らしさに出合い、自分の可能性を広げていくことを目指しました。



