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いち早く春を告げる植物たち「スプリング・エフェメラル」のあったかい秘密

連載
モンタ先生の自然はともだち
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森田弘文

早春。ほとんどの植物が静かに眠っている中、いち早くフクジュソウが黄金色の花を咲かせています。カタクリやアマナなども、これから美しく可憐な姿を見せてくれることでしょう。これらの、早春にいち早く花を咲かせ、「春遠からじ」を感じさせてくれる植物たちをスプリング・エフェメラル(春の妖精・春の儚い命)と呼びます。はかなげな異名ですが、中には熱を操る不思議な特徴を持つものがあります。詳しく見ていきましょう。

【連載】モンタ先生の自然はともだち #34

執筆/森田弘文

スプリング・エフェメラルとは?

フクジュソウの花
フクジュソウ
フクジュソウの花
フクジュソウ

早春、場合によっては雪も残るような寒い時期にいち早く開花し、わずか2~3か月だけ地上で活動。残りの大半の季節を地下で休眠状態となって過ごす植物群があります。フクジュソウやカタクリ、アマナ、ザゼンソウなどです。
これらはスプリング・エフェメラル(春の儚きものたち・春の妖精)と総称されます。

カタクリの花
カタクリ
アマナの花
アマナ

熱を使う不思議な生存戦略を持つものたち

スプリング・エフェメラルは、まだ寒い時期に活動しますから、中には寒さにあらがうように自ら熱を使った生存戦略を企てる、不思議な種もあります。今回は、有名なもの2つをご紹介します。

暖かさを巧みに利用するフクジュソウ

フクジュソウ(2026年2月5日撮影)
フクジュソウ(2026年2月5日撮影)

フクジュソウは気温が10度程度になり、十分な直射日光が当たるようになると開花を始めます。
早春はまだ平均気温は低いものの、太陽の高度が増し、陽光に明るさと暖かさが見られ、光条件は良くなってきていますから、光合成には充分と言えます。
この時期であれば、他の植物たち…特に高いところで光を遮ってくる広葉樹はまだ葉をつけていませんから、太陽を独り占めできるというわけです。
あとは受粉を手助けしてくれる昆虫たちがいればバッチリですね。ハナアブ類などは低温に強く、15度くらいの気温で元気に活動します。より早く活動を始めて、生存戦略を有利に展開しようという目的が合致する相手もいるわけです。
フクジュソウの花の形に注目してください。まるで、衛星アンテナか凹面鏡のように見えませんか。フクジュソウの花びら1枚1枚には光沢があり、太陽の光をよく反射させています。そして、その反射した光の熱は、凹面鏡の原理で花の中心に集まり、花芯を温めます。これは肌寒い時期に活動するハナアブたちにとって最高のサービス。花粉を食べながら身体が温まり、大満足のハナアブは活発に花から花へと飛び回り、花粉を他の花に次々と運び受粉のお役に立つという訳です。

では、フクジュソウの花の中は、どれくらい温かいと思いますか?
これは筆者が2月中旬に、子どもたちと一緒に調べて表やグラフにまとめたものです。

フクジュソウの温度計測実験
フクジュソウの温度計測実験
フクジュソウの温度測定実験(表とグラフ)
フクジュソウの温度測定実験(表とグラフ)

実際にフクジュソウの花の中の温度と、地上5cm、地上50cmの気温を比べたところ、相当な違いが出ることが分かりました。昼近く、日光がよく当たるときには、その差がなんと10度にもなりました。
フクジュソウは太陽に対する感度が高い植物で、太陽の方向を向いて花を咲かせますし、日光のない曇りの日や夜間は花を閉じます。ぜひみなさんも、見てみてくださいね。

ザゼンソウの雪まで溶かす自己発熱
写真AC

森田弘文

森田弘文(もりたひろふみ)
ナチュラリスト。元東京都公立小学校校長。公立小学校での教職歴は38年。東京都教育研究員・教員研究生を経て、兵庫教育大学大学院自然系理科専攻で修士学位取得。教員時代の約20数年間に執筆した「モンタ博士の自然だよりシリーズ」の総数は約2000編以上に至る。2024年3月まで日本女子大学非常勤講師。その他、東京都小学校理科教育研究会夏季研修会(植物)、八王子市生涯学習センター主催「市民自由講座」、よみうりカルチャーセンター「親子でわくわく理科実験・観察(植物編・昆虫編)」、日野市社会教育センター「モンタ博士のわくわくドキドキ しぜん探検LABO」、あきる野市公民館主催「親子自然観察会」、区市理科教育研修会、理科・総合学習の校内研究会等の講師を担当。著書として、新八王子市史自然編(植物調査執筆等担当)、理科教育関係の指導書数冊。趣味は山登り・里山歩き・街歩き、植物の種子採集(現在約500種)、貝殻採集、星空観察、植物学名ラテン語学習、読書、マラソン、ズンバ、家庭菜園等。公式ホームページはこちら。

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