ページの本文です

子供たちと読みたい 今月の本#9 日本の文化についてどんなことを知っているかな

連載
子供たちと読みたい 今月の本
連載
子供たちといっしょに読みたい 今月の本 
関連タグ
子供たちと読みたい 今月の本 バナー

全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子先生にすてきな本を紹介していただく連載です。9回目のテーマは、「日本の文化についてどんなことを知っているかな」。日本文化についてどれくらい知っていますか。あまり知らないという子供が多いのではないでしょうか。魅力的で歴史がある日本文化について、本を通して触れてみてください。子供が興味をもつきっかけにつながることでしょう。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。

監修/全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子

子供たちと読みたい 今月の本#9 日本の文化についてどんなことを知っているかな 図書館の展示

絵本

落語やおせち料理、書道に関する様々な絵本があります。いたずら好きのたぬきが登場する物語やおせち料理の素材に込められた願い、書道具セットのお話など、日本文化に興味をもつ入り口になることでしょう。

『らくごえほん ごんべえだぬき』

『らくごえほん ごんべえだぬき』作・絵/川端 誠 KADOKAWA刊(発行:2020年)

作・絵/川端 誠 
KADOKAWA刊(発行:2020年)

子供も大人も大笑い! 日本語の楽しさが詰まった「落語」の世界。山里のはずれに住んでいる、ごんべえさん。ある日の夜、うとうとしていると、たぬきが転がり込んできました。たぬきをつかまえて、「二度と悪さしねぇようにな」と、こらしめてやることに……。さあ、いたずら好きのたぬきの運命は?

石橋先生のおすすめポイント
ちょっと間抜けなたぬきのお話。分かりやすいお話なので、絵を見せながら読み聞かせれば、低学年の子供たちでも理解できます。たぬきが頭で戸をたたいてごんべえさんのことを変な名前で呼ぶ場面では、笑いが起きるのは必定。つかまったたぬきがどうなるかと子供たちは興味津々で聞き入ることでしょう。そして落語にとって大事なおちは、ちょっと分かりにくい子がいるかもしれません。でも、作者の川端誠さんがそんな子のために、絵本ならではの一工夫をしてくれています。おちのその後が裏表紙に描かれているのです。子供の反応によっては、これを見せてからお礼を言いに来たたぬきとごんべえさんのやり取り、おち、裏表紙、最後に表紙を見せると一件落着間違いなし(全学年向き)。

『おせち』

『おせち』文・絵/内田有美  料理/満留邦子  監修/三浦康子 福音館書店刊(発行:2024年)

文・絵/内田有美  料理/満留邦子  監修/三浦康子 
福音館書店刊(発行:2024年)

おせち料理に込められた願いを伝える美しい絵本。「くろまめ ぴかぴか あまい まめ。まめまめしく くらせますように」など、おせち料理を一つ一つ紹介しながら、そこに込められた願いをリズミカルな言葉で伝えます。

石橋先生のおすすめポイント
表紙の真ん中に蒲鉾や昆布巻き、伊達巻が詰められた重箱。田作りの光沢や黒豆の丸みから、おいしそうな写真だと思うことでしょう。その重箱と題字「おせち」を見せた後で、「文・絵 内田有美」という表示を見せると「えーっ?」という声が上がりそうです。「料理 満留邦子」とありますから、実際に作られた料理をもとに描かれたことが分かります。本文はすべてひらがな表記でリズムよく続きます。子供たちと一緒に絵を見ながら声に出して読むと楽しいですよ。何回か読むと覚えてしまう子もいると思います。おせちは昔の人の知恵や願いが込められた日本文化であることを実感できる絵本です(全学年向き)。

『すずりくん 書道具のおはなし』

『すずりくん 書道具のおはなし』作/青栁貴史 絵/中川 学 あかね書房刊(発行:2021年)

作/青栁貴史 絵/中川 学 
あかね書房刊(発行:2021年)

書道具セットを手にした子供たちの前に現れたのは、道具の精霊です。手をかけて作られ、古来宝物とされてきたと誇る道具たちを通じて、文字の成り立ちや道具の歴史、アナログの道具だからこそ生まれるゆとりや思いやり、書く喜びを親しみやすく描きます。

石橋先生のおすすめポイント
製硯師(せいけんし)である作者が後書きで書いているように「私たちの毛筆文化」を身近に感じられる一助になるように作られた絵本。はっきりした色調の大きなイラストの絵本で、初めて「文房四宝(ぶんぼうしほう)」(書道セットに入っている筆、墨、紙、硯の4つ)を使う子供たちにも、すでに書道を続けている子供たちにも筆で文字を書くことに興味をもたせることができます。四宝それぞれの作られ方や毛筆の歴史も紹介されていて、子供だけでなく、先生方も初めて知ることがあり、一緒に楽しめる絵本です(中高学年向き)。

図鑑

文様、和食のだし、歌舞伎、茶道、浮世絵、日本画、焼き物など、日本の伝統文化に関する様々な図鑑があります。子供たちには少し分かりにくいところがあるかもしれませんが、絵や写真を見ることで関心が高まるでしょう。調べ学習にも最適です。

『日本の文様ずかん1 生き物の文様』

『日本の文様ずかん1 生き物の文様』監修/並木誠士 指導/青山由紀 小峰書店刊(発行:2025年)

監修/並木誠士 指導/青山由紀 
小峰書店刊(発行:2025年)

私たち日本人は、古くから身の回りのものを文様で飾ってきました。空や陸、水の中の生き物、伝説の生き物などの文様を紹介。込められた願いの数々や、文様のつくりを分かりやすく解説。美しい文様をページいっぱいに展開して視覚的に魅力を伝えるとともに、意味や願いを紹介し、日本の文化や風習に親しみます。

石橋先生のおすすめポイント
中高学年の子供たちにとって「文様」という言葉はあまりなじみがないかもしれません。人気アニメの主人公の衣装や家紋、お守り袋などに文様が使われているので、文様について簡単に説明をしてからこの本を紹介すると、見たことがある文様が見付かるでしょう。見返し部分や「はじめに」に文様についての解説がありますから、まず先生方が概略を知ってからすすめてください。見ているだけで昔から受け継がれた文様の意味や使われ方に興味がわきます。後ろの見返しはワークシートになっていて本を生かした学習が展開できます(中高学年向き)。

『和食のだしは海のめぐみ 1 昆布』

『和食のだしは海のめぐみ 1 昆布』文・写真/阿部秀樹 監修/日本昆布協会
偕成社刊(発行:2021年)

写真・文/阿部秀樹 監修/日本昆布協会 
偕成社刊(発行:2021年)

2013年、ユネスコ(UNESCO=国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された「和食:日本人の伝統的食文化」。和食の味付けの基礎となるのが「だし」の役割で、だしの1つが「昆布」です。第1巻「昆布」では、昆布の歴史、いろいろな昆布、昆布だしのとり方、昆布料理、お祝いに使われる昆布、海の昆布に迫る危機などを、美しく豊富な写真を使って、分かりやすく紹介。

石橋先生のおすすめポイント
まず4、5ページと32、33ページの昆布を使った料理の写真を見せてください。給食前だったら大騒ぎになるかもしれませんね。そんなおいしい和食の料理に欠かせないのが昆布です。次に見返しに載っている「?」を子供たちに聞いてみてください。「昆布の海が昆布くさくないのはなぜ?」「昆布についている白いものって、食べても平気?」のように大人でも答えられない「?」です。5年生で水産業を勉強する際や、家庭科で味噌汁の調理実習をするときに紹介するのもよいでしょう。和食の魅力と共に昔からの人々の知恵にも気付かされるシリーズです(中高学年向き)。

『ふれてみよう! 伝統芸能 歌舞伎ってなんだ!?』

『ふれてみよう! 伝統芸能 歌舞伎ってなんだ!?』監修/児玉竜一 イラスト/マキゾウ ほるぷ出版刊(発行:2025年)

監修/児玉竜一 イラスト/マキゾウ 
ほるぷ出版刊(発行:2025年)

「歌舞伎」は、その名の通り、「歌(音楽)」と「舞(舞踊)」と「伎(演技)」が一体となった演劇です。江戸の庶民から絶大な人気を得て、庶民が好んだ文芸、浮世絵、ファッション、音楽、落語など、様々な文化とつながり、流行を生み出し続けてきました。この本では、歌舞伎の歴史や、役と衣裳、舞台や音楽に加えて、人気の演目のあらすじを紹介します。歌舞伎俳優・尾上右近氏のインタビューも収録。

石橋先生のおすすめポイント
この本は2025年に出版された伝統芸能に関するシリーズの1冊です。全5巻で「狂言」「能」「人形浄瑠璃」「歌舞伎」「落語」があるので、探究学習の課題を考える際に役立ちます。『歌舞伎ってなんだ!?』は表紙に演目、舞台装置、隈取など多くの情報があるので、その紹介から始めるとよいでしょう。次に目次を見ると歴史や歌舞伎ならではの表現、隈取や髪型など、子供が興味をもちそうな事柄が並んでいます。1つの項目が見開き2ページに大きめのイラスト・写真とともに総ルビの小学生に理解しやすい解説文が載っています。最後のページには確かな情報源が記載されていますから、子供の学びだけでなく、先生方の教材研究にも役立ちます(高学年向き)。

『伝えよう! 和の文化 お茶のひみつ② 茶道を体験しよう』

『伝えよう! 和の文化 お茶のひみつ② 茶道を体験しよう』監修/桐蔭学園茶道部 国土社刊(発行:2024年)

監修/桐蔭学園茶道部 
国土社刊(発行:2024年)

古くから受け継がれてきた日本の伝統文化・茶道。茶道はどんな道具を使い、どんなふうにお茶を飲むのでしょう? お茶や道具、茶室にお菓子、料理、服装まで、茶道にまつわる基本的なことがら、様々な日本の伝統文化とのつながりを写真で分かりやすく紹介。

石橋先生のおすすめポイント
緑茶は飲んでいても抹茶はお菓子でしか知らない子もいると思います。この本(第2巻)では大きな写真で抹茶の種類や道具、たて方を説明しています。このシリーズは4巻に分かれていて、お茶の工場、お茶の文化と歴史についても調べることができます。そのため、日本文化の中の茶道について調べたい子供の課題に確かで十分な情報を与えてくれます。また、具体的な課題を決めるためには「はじめに」と目次が役に立ちますから、ぜひ使い方の指導もしてください。お茶と聞いたらペットボトルしか思いつかない子にも昔から受け継がれてきたお茶の文化を知ってほしいですね(高学年向き)。

『日本人なら知っておきたい『北斎漫画』の世界(1) 日本中で人気沸騰『北斎漫画』って何?』

『日本人なら知っておきたい『北斎漫画』の世界(1) 日本中で人気沸騰『北斎漫画』って何?』監修/浦上 満 フレーベル館刊(発行:2023年)

監修/浦上 満 
フレーベル館刊(発行:2023年)

「大波」の絵(神奈川沖浪裏)で有名な絵師・葛飾北斎。北斎は江戸時代の浮世絵師で、当時としてはかなり長寿の90歳まで生き、最後まで絵の上達を願って描き続けたと言います。そんな北斎が弟子のためにつくった15冊の絵手本が『北斎漫画』です。『北斎漫画』には絵が4000ほど詰まっています。北斎が描いた下絵を職人たちが木版画で摺って仕上げた本です。

石橋先生のおすすめポイント
監修の浦上さんは、『北斎漫画』が大好きで、50年かけて1600冊以上をコレクションしている方です。高学年で日本文化について総合や社会、図工、国語で探究学習をする学校も多いと思います。その中で子供たちに人気があるテーマの1つが「マンガ」です。世界に誇るマンガ文化の源の1つといえる『北斎漫画』について詳しい図鑑ですから、子供たちの興味をひく事柄が満載です。また、江戸時代の庶民の娯楽、仕事や暮らし、旅行などの様子も『北斎漫画』から多くの情報を得ることができますので、課題づくりや情報収集の場面で活躍する本です。社会科で江戸時代を学ぶときに、職人や農民の絵をぜひ見せてください。生き生きとした庶民の様子が絵と解説から読み取れます(高学年向き)。

『いっしょに探検!日本の伝統文化と芸術 ④日本画・焼き物・彫刻を探検!』

『いっしょに探検!日本の伝統文化と芸術 ④日本画・焼き物・彫刻を探検!』監修/稲田和浩 教育画劇刊(発行:2025年)

監修/稲田和浩 
教育画劇刊(発行:2025年)

様々な日本の伝統文化と芸術に出合えるガイドブック。この4巻では、日本画・焼き物・彫刻の魅力を探検します。絵巻物、障壁画、浮世絵、各地の焼き物や名品、仏像や建築の彫刻、彫金などをたっぷり紹介。興味が深まる1冊です。

石橋先生のおすすめポイント
中高学年で、日本の伝統工芸や日本文化について探究学習する際に、このシリーズの本を自由に手に取らせて、パラパラとページをめくらせることをおすすめします。全4巻で様々な日本の伝統文化が網羅されていますから、見ているだけで楽しいし、自分が調べたい、面白そうと思うテーマを見付けることができます。事前にまず目次を見て、概要を知ることを伝えてください。1冊の本を何人もで閲覧するわけですから、効率よく自分がほしい情報を得られるように子供たちを育てていきたいですね。また、情報量が多い本ですから、必要な箇所だけを読み、情報カードなどに記入することを指導したいものです(高学年向き)。

読み物

この記事をシェアしよう!

フッターです。