タネのこと、もっともっと深堀りしたい!植物の不思議な生存戦略を見てみて!~楽しいタネの話あれこれ②~
前回の記事では、植物がタネを使って、どんな生存戦略を企てているのかを総論的にさらっとご紹介しましたが、それだけではタネの面白さがなかなか伝わりません。そこで今回は、タネについて、もう少し詳しく深掘りしてみたいと思います。調べれば調べるほど興味深い植物の世界。筆者もその楽しさにドップリはまり、数多くのコレクションをしてきました。それらをご紹介するとともに、前回好評だったタネの模型作りをバージョンアップさせて、新しいものをお付けしました。指導案もご紹介しますので、ぜひ子どもたちと楽しんでみてください。冬の教室で楽しめますよ!
【連載】モンタ先生の自然はともだち #29
執筆/森田弘文
目次
①風散布
まずは、風に乗って遠くに飛んでいくタイプのタネです。薄い膜や綿毛などで、風の影響を受けやすい形になっています。タネそのものも非常に軽くなっており、宙を舞うのに適していますが、反面タネの中の栄養分は少ないです。さらに、風に乗ってどこに飛んでいくのか分からないので、発芽して定着できる可能性が低く、かなりバクチ的要素が強いと言えそうです。
綿毛の仕組みは物理学なんダネ!

綿毛を持つタネには、ご覧のようにさまざまな形をしたものがありますね。
実は、こうした細かい綿毛の間を流れる空気は小さな渦をつくり、そこだけわずかに気圧が下がります。空気は気圧の高いところから低いところに流れますよね。綿毛のタネはこの働きで下の空気から押し上げられるような力を得るので、長い間宙を飛び続けることができるのです。
翼や羽をつけてクルクルと飛ぶんダネ!

膜のような薄い羽をもち、その空気抵抗を活用して飛ぶタネです。ヒラヒラと縦方向に回転しながら舞ったり、ヘリコプターのように回転しながらゆっくりと降下したりします。こうしたデザインを生み出す自然の力には驚かされます。なお、これらのタネは、高木の植物体の傾向があります。
枝全体や個体の姿が飛びやすくなっているんダネ!

タネが葉の根元にあり、枝全体が風に乗って飛んでいったり、大きな実の中にたくさんのタネを入れて、船のように風に乗って実を運んだりします。中でもフウセンカズラは、紙ふうせんのような形の実が愛らしく、必見です。
②水散布
プカプカ浮かぶんダネ


水に浮き、水流に乗って遠くまで運ばれるタイプのタネたちは、水をはじく頑丈な殻に包まれています。タネの中には空気が入っていたり、コルク質になっていたりして、しっかり浮力を持っており、長時間水に浸かっていてもふやけたりせずにプカプカと浮いていられます。もちろん、この種のタネを作る植物はいずれも、川辺や海辺に繁殖します。
③付着散布
くっついてヒッチハイクするんダネ
子どもたちも大好きな『くっつき虫』のオンパレード! 逆さトゲやカギ針、粘液でベトベトなど、くっつく技はバラエティーに富み個性的です。虫メガネで見れば、その作りの精巧さに驚くこと間違いなしですよ。これらのタネは、動物の体毛にくっつくことが狙いですので、人間の体で言うとヒザ下あたりの低いところに、目立たない色をして生えています。

くっつき虫の「けんさく」コーナー
くっつき虫が大好きな子どもはたくさんいますので、見つけたくっつき虫がなんという植物のタネなのか見分けるための検索表を作りました。ぜひご活用ください!
④被食散布
いろいろな動物に食べてもらうんダネ

色とりどりで良い匂いを放つ果実を実らせ、それを森の動物たちが食べて、動物たちの移動先でタネがウンチと一緒に排泄され、土地に定着します。また、リスなどが食料保存のために貯蔵しておいたタネが忘れ去られ、そのまま芽を出す場合も多くあります。そこでドングリなどの木の実も仲間に入れました。
⑤重力散布
ポトンと落ちてコロコロ転がるんダネ
もっとも単純な散布方法で、散布範囲も最も狭いです。タネは重力で落ちて、地面で多少転がるだけです。自分の親である木のそばで定着して芽を出すわけですが、これはつまり、親株が生育するような、条件のいい土地で繁殖できることを意味しています。落下の衝撃に耐える、硬く頑丈な殻を持っており、また多くの種がタンニンを含んでいるため、食べるとしぶいので、他の動物から食べられるのを防ぐ工夫もしています。

★前回の記事もあわせてご覧ください。植物の遺伝子を運ぶ船・タネの旅を体験してみよう! ~楽しいタネの話あれこれ①~
写真/森田弘文

森田弘文(もりたひろふみ)
ナチュラリスト。元東京都公立小学校校長。公立小学校での教職歴は38年。東京都教育研究員・教員研究生を経て、兵庫教育大学大学院自然系理科専攻で修士学位取得。教員時代の約20数年間に執筆した「モンタ博士の自然だよりシリーズ」の総数は約2000編以上に至る。2024年3月まで日本女子大学非常勤講師。その他、東京都小学校理科教育研究会夏季研修会(植物)、八王子市生涯学習センター主催「市民自由講座」、よみうりカルチャーセンター「親子でわくわく理科実験・観察(植物編・昆虫編)」、日野市社会教育センター「モンタ博士のわくわくドキドキ しぜん探検LABO」、あきる野市公民館主催「親子自然観察会」、区市理科教育研修会、理科・総合学習の校内研究会等の講師を担当。著書として、新八王子市史自然編(植物調査執筆等担当)、理科教育関係の指導書数冊。趣味は山登り・里山歩き・街歩き、植物の種子採集(現在約500種)、貝殻採集、星空観察、植物学名ラテン語学習、読書、マラソン、ズンバ、家庭菜園等。公式ホームページはこちら。

