本番の成功は予備実験・調査にかかっている|中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑪

前回は、「個別ゴール」に向けて、どんな実験・調査をどんな方法で行うかを具体的に検討するところまでお話ししました。今回はいよいよ、本格的な実行に移る直前。いわゆる「予備実験・調査」と呼ばれる、大切な準備段階について考えていきます。
執筆/四天王寺大学教育学部准教授・仲野純章
【連載】探究のすすめ方 ~方法論編~ <中学校・高等学校>
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◆中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう①~考えを整理して、テーマを決める~
◆課題研究の実現可能性をチェックしよう! 中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう②
◆先行研究をチェックして、研究テーマにストーリーをもたせよう! 中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう③
◆研究テーマが決まったら、研究の道すじを考えよう─中・高等学校の【課題研究】はこう進めよう④
◆研究の「最終ゴール」を明確にしよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑤~
◆「やることリスト」を整理して、研究の全体像をつかもう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑥~
◆個別実験・調査項目の中身を具体化しよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑦~
◆「個別ゴールに届いたといえる事象」を考えてみよう~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑧~
◆「どうすればできる?」の見通しをつかむ~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑨~
◆「どうすればできるか」を具体化する~中・高等学校の探究学習【課題研究】はこう進めよう⑩~
目次
「予備実験・調査」は“仮の本番”
個別実験・調査の計画ができたからといって、すぐに本番に進むのは少し危険です。いざ実行してみると、予想と違う反応や、思わぬ操作ミス、記録の不備など、さまざまな改善点が見えてくるものです。それを本番で初めて知るのでは遅い、ということで必要となるのが予備実験・調査です。
「練習」というよりも、「本番を完璧に実施するための検証作業」と言った方が近いでしょう。ここで目的とするのは、最終ゴールに向けた本実験・調査をより確実に、信頼性高く行えるようにすること。つまり、方法や環境、記録の仕方を一つひとつ見直し、精度を高めていく工程です。

記録が研究の“土台”をつくる
予備実験・調査の段階で特に重要なのが、ラボノートの扱いです。「いつ」「何を」「どのように」「どんな結果が得られたか」を正確に残すことが、研究全体の信頼を支える基盤になります。形式は自由ですが、次のような項目は、できるだけ記録しておきましょう。
- 実験・調査のタイトル
- 日時・天候・場所
- 使用した材料・道具・設備(メーカー名や型番も記録)
- 方法(必要に応じて図や写真も)
- 結果・考察・気づき
できればボールペンで書き、消したり書き直したりせず、後から読み返しても状況が明確にわかるようにしておくことが大切です。生徒には、「未来の自分が読む記録」としてしっかり書く意識をもたせると良いでしょう。
