論理的思考力と表現力を養い、よりよい人間関係を築く「ディベート」の指導法【学ぶ意欲と力を育てる 学習指導の極意⑩】

子供たちの学ぶ意欲と力を育てるためには、教師はどのような指導をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に学級経営の本流を踏まえて、学習指導の基礎基本を解説します。第10回は、「ディベート」の指導法について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章
ディベートは、「話すこと」「話し合うこと」の技術を向上し、話すことに必要な論理的な思考力を育成するために効果的な学習方法です。テーマに対してあえて肯定側と否定側に分かれ、ルールに沿って議論します。「ディベートでできること(論理的な思考力の育成など)」と「ディベートでできないこと(学級生活上の問題解決など)」を踏まえ、学級の実態に合わせ、アレンジした学級独自の方法を構築していきましょう。
ここでは、ディベートを学習活動に取り入れて指導するにあたって、次の3つのキーワード「ディベートのルール」「ディベートの展開」「ディベートの実践上の配慮点」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① ディベートのルール
ディベートは、肯定側と否定側、そして討論に対して判定する第三者が三角形の位置で実施します。ディベートでは、次のようなルールを踏まえて学習を展開するようにしましょう。

ディベートを行う上でのルールを確認します
(1)発言と人格は別ととらえます
ディベートでは、肯定側と否定側に分かれて議論しますが、その立場での意見と人格は別のものであることを事前に確認しておきます。
(2)意見の理由を明確にします
論理的に考え、相手が納得できるように伝えるためには、意見の根拠となる理由が必要です。第三者を説得する目的で行うことから、理由を明確にしていきます。
(3)時間設定を明確にします
ディベートを行う際には、「立論」や「反論」の各段階で制限時間を設定します。制限時間を設けることで、簡潔に分かりやすく相手に伝える力を育成することにつながります。
CHECK② ディベートの展開
ディベートは、一般的に次のような流れで実施します。特に、「立論」では、テーマの問題点、問題解決のプラン、プランの実現性、プラン実行の長所・短所などについてグループごとの考えをまとめて発表します。
(1)立論発表〔各グループ1人、賛成論・反対論〕
(2)作戦タイム〔各グループ〕
(3)質問・反論〔自由発言〕
(4)作戦タイム〔各グループ〕
(5)まとめの論〔各グループ1人、賛成論・反対論〕
(6)審判による判定〔審判の合計得点〕
判定の視点を明確にして討論できるようにします
ディベートは、審判の判定により、勝敗をつける方法をとります。そのため、事前にどのような視点での判定基準であるのかを明確にしておく必要があります。学年の発達段階や学級の実態にもよりますが、5点満点の評価基準で各項目の判定を行い、その合計点で勝敗を決めます。
一般的には次のような判定項目が考えられます。
・やる気のある態度が感じられる
・ 具体例があり、とても分かりやすい
・ 相手の意見に反論できている
・他の人の意見も取り入れている
