小2国語科「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」全時間の板書例&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度版からの新教材、小2国語科「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」(東京書籍)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、ワークシート例、1人1台端末の活用例等を示した授業実践例を紹介します。

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科准教授・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・橋浦龍彦
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、「読むこと」の指導事項として、「文章中の重要な語や文を考えて選び出すこと」に重点を置きます。
この指導事項を、看板とガイドブックの内容や書き方の違いを考えることを通して身に付けていきます。児童が看板、ガイドブックの違いに気付き、それぞれの役割を考えて重要な語や文を選び出すことができるように、単元をデザインしていきましょう。
2. 単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴
本単元では二つの文章を読み比べることを通して、重要な語や文を考えて選び出す力の育成を目指します。そのため、教材で扱われているアフリカゾウについての驚きや新発見を大切にします。
児童が驚くことの多くはガイドブックに書いてありますが、看板には、短い言葉ですぐに情報が得られるよさがあります。看板とガイドブックのよさを見つけ、どちらも目的に応じた書き方をしていることに気付かせながら、それぞれの重要な語や文を考えて選び出すことができるようにしていきます。
授業では、児童が看板とガイドブックの何を読むのかが明らかになっていると、見通しをもって読むことができるでしょう。
教師は観点を指示するのではなく、児童と学習計画を立てながら読む観点の見通しをもたせましょう。机間指導しながら児童の驚きに共感したり、どのような観点で読んでいるかを価値付けたりすることが大切です。
看板には、「すんでいる場しょ」は「アフリカ」と単語で端的に書かれており、すぐに情報が理解できます。目の前の動物についての補足情報として読み、動物を見ることを楽しむことができます。読み手は実際に目の前にいる動物に興味をもちますから、看板の情報は端的に書かれている方がよいわけです。
ガイドブックには、「すんでいる場しょ」は「アフリカの草原や森林にすんでいます」と文で書かれています。ガイドブックの文章を読むと、看板より詳しく知ることができます。目の前に動物のいる場面に限らず、詳しく知りたいときに読みます。動物を見る前に知っておきたくて読んだり、見た後にさらに知るために読んだりします。
読み始めた当初は、よさについて「看板の方が短くて分かりやすい」「ガイドブックの方が詳しくてよい」と考える児童が、それぞれ一定数いることでしょう。
そこで、教師は、看板のよさに気付かせたいのであれば、「動物園でアフリカゾウを見たとき、どれくらい大きいのかが気になった人には、看板とガイドブックのどちらがよいでしょう。」とたずねます。
すると、児童は「どちらも『四メートルから六メートル』と書いてある。でも、看板には大きさについてそれだけが書いてあるからすぐ分かる。」というように、必要な情報が早く見つかる看板のよさを感じられるでしょう。
ガイドブックの場合も同様に、「動物園でアフリカゾウを見て、どうして大きな耳があるのか疑問に思った人には、看板とガイドブックのどちらがよいでしょう。」とたずねます。
児童は、「なぜ大きな耳があるのか知りたいときに、『体をひやすために』『耳をうごかして、体のおんどを下げます』と詳しく分かる」というように、詳しい情報のあるガイドブックのよさを感じるでしょう。
大きな耳がある理由を知りたいこのような児童にとっては、「体をひやすために」「耳をうごかして、体のおんどを下げます」が重要な文になります。
このように、児童の知りたいことが、看板とガイドブックのどちらに書かれているかを考えながら読み比べることを通して、文章中の重要な語や文を選び出します。
4. 指導のアイデア
〈 主体的に学ぶために 〉 知りたいことがどこに書かれているか見当をつける
児童が主体的に重要な語や文を見つけるために、それぞれの疑問について、看板とガイドブックを読み、必要な情報がどこに書かれているかに見当をつけていきます。
アフリカゾウの何が知りたいかを第1時で書き出し、第2時で計画を立てた後、第3時で知りたいことについて書かれたところを、看板やガイドブックから探していきます。こうして、単元の前半から重要な語や文を選び出すことに向かえるようにします。
食べ物が気になっている児童なら、「見出しに『たべもの』があるぞ。ここに書かれていそうだな。」というように、自分の知りたいことが書かれているところに見当をつけていくと、第4時以降への見通しがもてます。第4時では、「よし、今日は『たべもの』のところに注目して、アフリカゾウが何を食べているか詳しく見つけていこう」と主体的に学ぶことができます。
ただし、「見出しに注目して知りたい情報を探すこと」が既習事項になってからも、つまずきが見られる児童に対しては、教師が「アフリカゾウの食べる様子が知りたければ、見出しに注目しましょう。ほら、ここに『たべもの』と書いてあるでしょう。」と指導することが必要です。
また、看板に目を向けるには、教師の働きかけが必要です。できれば、第1時の導入で、児童が話題にしている動物について、ガイドブックとバーチャル動物園上の看板をモニターに示します。
「同じ動物なのに、説明が違う」「教科書にも、看板とガイドブックがあったよ」というつぶやきが生まれ、教師が指示せずとも児童が教科書の文章に向かっていくでしょう。
※ バーチャル動物園の例
webページ「東京ズーネット」内の「東京Zoovie」(https://www.tokyo-zoo.net/zoovie/)を活用できます。上野動物園、井の頭自然文化園等の園で、マップから360℃を見渡せるバーチャル空間に入ることができます。
他にもweb上で「バーチャル動物園」を公開している園がいくつもあります。学校から近い園を選んで見せましょう。看板まで鮮明に読むことができます。
〈 対話的に学ぶために 〉 選んだ語や文を友達と比べる
看板とガイドブックでは、アフリカゾウを題材に書かれていること、四つの観点(「すんでいる場しょ」「体の大きさ」「たべもの」「体のとくちょう」)が共通しています。内容には、以下の相違があります。
表1 ガイドブックにおける、看板との内容の相違

このため、文章を読む際に考えさせたい点として、次の2点を挙げます。
・知りたいことはどこに載っているか(どのような内容や書き方の違いがあるのか)
・なぜ、内容や書き方に表のような違いがあるのか
実際の授業では、児童がアフリカゾウについて気になったことについて、教科書を読んで探っていきます。
看板とガイドブックから、疑問(気になったこと)の解決につながる言葉を見出しごとにデジタル教科書を使って抜き出します。選んだ言葉を友達と比較すると、知りたいことに応じた重要な語や文が意識され、対話的な学びになっていくでしょう。
その際、ペアの1人が看板、もう1人がガイドブックを開くようにすると、「2人で2台」の端末を活用しつつ対話的に読み進めることができます(第4時参照)。
教師は、児童が驚きを示す内容を共感的に受け止めたり、どの見出しに注目しているかを座席表に書き込んだりしながら、異なる点に気付いている児童同士の対話を促していくとよいでしょう。
〈 深い学びのために 〉 知りたいことに合った語や文を選ぶ
児童それぞれが注目した「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」の言葉が、その児童にとっての重要な語や文になります。
アフリカゾウの体の大きさについて、動物園で見ている状況で簡潔に知りたい場合は、看板の「四メートルから六メートル」でよいのです。しかし、「他の動物と比べてどうだろう」というように、より詳しく知りたい場合は、ガイドブックの「りくにすんでいるどうぶつの中で、もっとも大きい」という文が重要になるでしょう。
また、体の特徴の中でも、アフリカゾウの「太いあし」について詳しく知りたければ、ガイドブックの「大きな体をささえる」「クッション」などが重要な語になります。
同様に、「大きな耳」について知りたければ「体をひやす」、「長いはな」について知りたければ「草をあつめて」「水をすいこんで」などが重要な語になるでしょう。
このように、重要な語や文は、看板やガイドブックの役割に応じて異なります。重要な語や文を見つけるために、次のような手立てが考えられます。
・デジタル教科書中の言葉を指やタッチペンでなぞり、知りたいことについて書かれた叙述を抜き出す(第3~6時)
・観点(「すんでいる場しょ」「体の大きさ」「たべもの」「太いあし」「大きな耳」「長いはな」)をもって読む(第4~6時)
・なぜガイドブックでは詳しく、看板では簡潔に書かれているのかについて、読んだことを基に話し合う(第7時)
5. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: 知りたいことは、どこにある?~読みくらべてわかったことをつたえあおう~
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
① 写真、バーチャル動物園などから、動物を見た経験、看板やガイドブックを読んだ経験を振り返る。「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」を読み、疑問を出し合う。
② 気になったことについて「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」を読んで考え、分かったことを伝え合う単元の学習計画を立てる。
・第二次(3時、4時、5時、6時、7時)
③「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」の看板とガイドブックの内容を見出しから比べ、疑問の解決につながりそうな言葉を、デジタル教科書で抜き出す。
④「すんでいる場しょ」「体の大きさ」「たべもの」について気になることを共有し、「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」から知りたいことがよく分かる言葉を伝え合う。
⑤「太いあし」についての疑問を共有し、「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」から知りたいことがよく分かる言葉を伝え合う。
⑥「大きな耳」「長いはな」についての疑問を共有し、「どうぶつ園のかんばんとガイドブック」から知りたいことがよく分かる言葉を伝え合う。
⑦ 看板が簡潔に、ガイドブックの文章が詳しく書かれているわけについて読み、話し合う。
・第三次(8時)
⑧ 知りたいことがよく分かった語や文を中心に、単元の学習を振り返る。
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美
令和6年度からの国語科新教材を使った授業アイデア、続々公開中です!
