若手の良いところを見つけて、「あなたらしく」と伝えよう【連載|若手が育つ! センパイのための伴走力トレーニング #2】

大ベテランの先生でも、実は初心者マークがついてしまうかもしれないこと、それは、若手教員の育成かもしれません。初任者指導担当の経験を持ち、地域の垣根をこえて様々な教員から相談を受けている森万喜子先生は、「若手育成の基本は、その人が持っているよさを客観的な立場から認める、ユニークな点などに興味を持って聞くこと」と言います。どんな教員にも、理想や意欲はあります。それを引き出すためにできることは、上からの「指導」ではなくフラットな「伴走」。それは人手不足の教育現場で教員の離職を防ぐためにも、センパイ教員の大切なスキルです。
執筆/元北海道公立中学校校長・森 万喜子
目次
中堅・ベテランの皆さんにチェックテストです
年度初めから2か月がたちました。中堅、ベテランの皆さんに、若手教員との関係やその様子について、お聞きしたいです。
◻︎若手教員は、イキイキとして楽しそうに授業や学級での様子を話しますか?
◻︎一日にどのくらいコミュニケーションをとっていますか?
◻︎若手教員の興味のあること、お悩みなど、最近じっくり話を聞いたのはいつですか?
忙しい学校現場では自分の持ち場を回すので精いっぱい、欠員もある学校も珍しくないですから、例えていえばサッカーの試合に自分のチームは7人で出場していますとか、バレーボール大会の試合に4人で出ていますって感じ。若手のケアまで手が回らないよ、というのが現実だったりします。
さらに、パワハラと思われたら困るから、気になることがあっても何も言わないようにしようというムードの学校もあると聞くと、ちょっと気になります。
今日は、指導は得意だけど傾聴や伴走は苦手というセンパイたちと、若手とともにすてきな学校をつくるということを考えたいです。
初任者層は学生時代コロナ禍だったことを忘れずに
人間って、カテゴリー分けとレッテル貼りが好きなんだなあ、とつくづく感じるのですが、〇〇世代という言葉があります。
私が就職したときは、確か自分たちは「新人類」と呼ばれました。親と全く価値観が違う、価値観がかみ合わない若者たちという意味だったようです。確かに自分のことを振り返っても、ジェンダーとかキャリア観などの変わり目の時代だったような気がします。あの頃職場で「まったく、新人類だからね……」なんて言われたことも覚えています。たぶん今、学校で管理職の立場にいらっしゃる方は、新人類より少し若い、バブル世代、X世代、団塊ジュニアなんて呼ばれたことがあるのではないでしょうか。そして、今、初任者として学校に配属された若いお仲間たちは何と呼ばれているかというと、Z世代。デジタルネイティブで情報取得や共有が得意、多様性を大事にし、グローバルな視点をもつ傾向が高いと言われる人たちです。なるほどそういえば……と身近な若い人たちの顔を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。
もう一つ、若い世代を語るときに抜け落ちていることがあります。それは、初任者層の人たちは「大事な学生生活のさなかにコロナ禍だった」ということ。
私が2年前に担当した熱心な初任の先生はとっても前向きで勉強熱心な頑張り屋。だけどその先生は大学時代に教育実習を経験していません。教育実習初日に緊急事態宣言が発令され、教育実習が中止になったということです。代替科目を履修することで単位は取得できたのでしょうが、教育実習の機会がなかったと聞いたときは衝撃でした。大学に通って講義や実習を受けるという至極当たり前なことを経験できずに教員になった人たちが少なからずいるということに。2020年からおよそ3年間、サークル活動などで人と関わることや実習や活動を伴う学びの機会がなかったり、旅行や留学などがほとんできなかったりした彼らは、実際に学校で働くときに苦労したのではないかしら、と。
だけど世の中はあの頃のことを忘れています。若い人たちに、教職の先輩たちは、経験の少なさを埋めるための、特別なサポートをしていますか?