子供たちが自主的に整列するようになる指導法
「どうしたら子どもをきちんと並ばせることができるのか」とお悩みの先生! 「気をつけ」や「前へ習え」をするのが整列をする目的になってしまってはいませんか? ここでは、子供たちが自主的に整列するようになる、とっておきの指導法を伝授します。
執筆/東京都公立小学校・松原夢人
松原夢人/1981年生まれ。東京都公立小学校主任教諭。教員14年目。研究分野:算数
目次
「整列」の言葉を辞典で調べてみると…
「整列」の言葉を辞典で調べると、「列をつくって、きちんと並ぶこと」という意味が示されています。
「列をつくる」というのは、例えば…
- 1列(背の順で男女サンドイッチ)
- 1列(男女名前順)
- 2列(男女別背の順)
- 4列(赤白男女別背の順…体育の授業)
- 6列(集会で並ぶ場合)
など、様々あります。
ではここでみなさんに質問です。
〔発問〕
「きちんと並ぶ」というのは、どういうことでしょうか?
〔予想される反応〕
・まっすぐ並ぶ
・ふらふらして立たない
・前から見た時に、はみ出ている子がいない
・前の人とぶつからないように並ぶ
そうですね。今、みなさんが言ってくれたように子供たちをきちんと並ばせなければなりません。
次の質問です。
〔発問〕
どうすれば、子供たちはきちんと並ぶことができるのでしょうか?
〔予想される反応〕
・「気を付け」の姿勢を保つ
・腕を前に伸ばして、「前へ習え」をする
その通りです。特に「気を付け」の姿勢は、挨拶で相手と対面する時やお辞儀をする前の基本的な姿勢となります。また、体の向きが斜めの状態で並んでしまうと、列全体も斜めになってしまうため、隣にいる他の学級(学年)に迷惑がかかってしまいます。これらの意味をしっかり子供たちに理解させて指導することが大切です。
次は重要なことをお聞きします。
〔重要な発問〕
では、どうして腕を前に伸ばして並ぶ必要があるのでしょうか?
〔予想される反応〕
※理由が分からないようなら、話し合わせる。
・腕をまっすぐ伸ばせば、まっすぐ並びやすくなるから
・腕がぶつからないように、前の人と間隔を空けて並べるから
正解です! つまり、「自分の腕を伸ばした時に、前の人とぶつからない間隔を空けるようにするため」ということです。
ではまた次の質問。
〔発問〕
ラーメン屋さんの行列や遊園地のアトラクションで並んでいる時に、だれも腕を伸ばして「前へ習え」で並んでいる人がいませんよね!? どうしてでしょうか?
〔予想される反応〕
・大人なら、腕を伸ばさなくても前の人との間隔を空けて並べるから
そうですね。それでは最後の質問です。
〔発問〕
もし、ラーメン屋さんの行列や遊園地のアトラクションで腕を伸ばして「前へ習え」で並んでいる人がいたら、どう思いますか?
〔予想される反応〕
・おもしろい
・おかしい
その通りです。
腕を伸ばして「前へ習え」で並ぶことは、周囲から見たら非常におかしいことなのです!
それを、子供たちにいつまでさせるのかを考えていかなければなりません。
手段が目的になってはいませんか?
整列の目的(意味)は「列をつくって、きちんと並ぶこと」だと、最初に言いました。
「気を付け」の姿勢をとることや腕を伸ばして「前へ習え」をすることは、整列をさせるための「手段」です。目的ではありません。みなさんには、手段が目的になってしまっていないかという疑問をもってほしいのです。
実際に腕を伸ばさなくても、腕を伸ばした長さくらいの間隔を空けるというのは、算数の学習でいうところの「量感」に当てはまります。みなさんも経験があるでしょう。この長さは1mくらいかな(長さの感覚)、この重さは1kgくらいかな(重さの感覚)…という感覚です。子供たちは算数の学習や生活経験の中で「量感」を身に付けていきますし、私たち教員は子供たちの「量感」を育てるための指導をしていなければなりません。
ですから、1年生から「前へ習え」をやっているのに、6年生になっても「前へ習え」をやって整列しているということは、長さの量感が全く育っていないことになってしまいます。でも、実際は育っていると思います。6年生でなくても、もっと下の学年の子供たちでも量感が身に付いているのなら、腕を伸ばさなくても、目測すれば腕を伸ばした長さをほぼ同じ間隔で「前へ習え」をすることができるはずです。
ですから、子供の実態を把握した上で、段階的に整列の指導をしていきましょう。
整列の指導は段階的に
【レベル1】
- 「気を付け、前へ習え」で整列できる
↓
できるようになったら、子供たちに次のように話します。
気を付け、前へ習えができるようになったね。だから、もう1つ上のレベルにアップします。『目で前へ習え』というものです。きっと、みなさんならできるようになると思います。もし、いい加減に整列をするようになったら、レベルを1つ下げて腕を伸ばして整列することに戻るから気を付けてくださいね。
【レベル2】
- 「気を付け、目で前へ習え」で整列できる
- 目測つまり、目で量感を使って自分の腕の長さとほぼ同じ間隔を空けて並ぶ
↓
【レベル3】
- 「並びましょう」の一言で整列できる
↓
【レベルMAX】整列の最終目標
- 先生が何も言わなくても、自主的に並ぶ
「レベル2にするよ」と伝えた時点で、数人の子供たちから「レベルいくつまであるの?」と質問されると思います。その際はレベル3、レベルMAX(整列の最終目標)まで具体的に説明しましょう。
子供たちはレベルを上げて目標を達成させるためにがんばると思いますし、レベルが上がるにしたがって整列が楽に早く、そして楽しくなっていきます。子供の実態に応じてレベルをもっと細かく設定しても構わないと思います。少なくとも卒業するまでには、レベル3あるいはMAXになってほしいものです。