子供たちと読みたい 今月の本#3 今日の天気は雨かな、晴れかな

全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子先生にすてきな本を紹介していただく連載です。3回目のテーマは、「今日の天気は雨かな、晴れかな」。日本の気候や台風、防災など、天気について知る数々の本を紹介します。気候や自然災害について考えるきっかけになるでしょう。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。
監修/全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子

目次
絵本
絵本で分かりやすく台風や防災、天気などの知識が身に付きます。防災については、低学年の子供にも、自分で何ができるかの気付きにつながるでしょう。

『たいふう どうするの?』
編著/WILLこども知育研究所 絵/せべまさゆき 監修/国崎信江
金の星社刊(発行:2017年)
子供の身の回りで起きる災害や犯罪、危険なことから、自分で自分の身を守る方法を学ぶ、防災・防犯の知識絵本シリーズの台風編。絵本を通じて子供自身に考えさせ、日頃から備える大切さを伝えます。巻末に大人向けの解説付き。
石橋先生のおすすめポイント
題名からも分かるように低学年の子供向けに平易な言葉、ひらがなで書かれています。イラストも親しみやすく、1人で読んでも、教室でみんなで読んでも、家庭でおうちの方と話し合いながら読むのもおすすめです。第2巻のこの本は子供にもできる台風への備えや対策が描かれます。また集中豪雨や竜巻、雷の危険性にも触れています(低学年向き)。

『かみなり』
監修/妹尾堅一郎 協力/音羽電機工業「雷写真コンテスト」
ポプラ社刊(発行:2022年)
ふしぎいっぱい写真絵本シリーズの雷編。激しい光に大きな音をとどろかせる雷。雷の正体は一体何? 雷の正体や種類、ギザギザの理由や冬の雷についてなど、美しい大迫力の写真で雷の秘密に迫る写真絵本。
石橋先生のおすすめポイント
提供されている写真は全て音羽電機工業の「雷写真コンテスト」の受賞作品です。どのページも雷のカラー写真で迫力満点! 写真を見せながら読み聞かせると、子供たちから「こんなかみなり、見たことないよ」「怖いなあ」「かみなりってきれいだなあ」といろいろな声が上がると思います。ひらがなだけで書かれているので低学年から1人で読むこともできます。巻末には雷の発生の仕組みやQ&Aが載っていて、中学年以上の子供たちの興味関心に応えてくれます(全学年向き)。

『四角い空のむこうへ』
文/由美村嬉々 絵/羽尻利門
晶文社刊(発行:2024年)
「いつかぼくは、人工呼吸器をつけた気象予報士の第1号になるんだ」。中学2年生の主人公は、生まれつきの筋肉の病気で、人工呼吸器と車いすの生活を送っています。気象予報士になる彼の夢を知った父親は、彼が寝ている居間の天井に天窓を作ります。そこから見える空の表情を眺めながら、気象予報士になる夢をふくらませていきます。
石橋先生のおすすめポイント
実話に基づくフィクションで総ルビの絵本です。中2のあきら君は、「先天性ミオパチー」という病気で人工呼吸器や食事などのケアが必要な「医療的ケア児」ですから、学年や子供の実態に応じて先生からの簡単な病気の解説とともに本を手渡したり読み聞かせたりしてみてください。あきら君は、家族に「天気予報オタク」と言われています。そんな彼の生き方、家族との関わり方、そして何より気象予報士になるという夢の実現に向けて見上げる「四角い空」についてみんなで話ができると素敵だと思います(中学年以上向き)。
図鑑
季節や四季、防災などの知識や情報を多くの絵と文章で分かりやすく解説。教科の学習と関連させても子供たちの興味を引きそうです。

『絵本で知ろう二十四節気 夏』
作/ふじもとみさと 絵/喜田川昌之
文研出版刊(発行:2021年)
二十四節気をわらべ絵と絵文字を用いた散文で描いた全4巻の絵本の「夏」。こいのぼりや藤棚、テントウムシ、アジサイ、カタツムリ、茅の輪くぐり、天の川、海水浴など、立夏から大暑までの節気を子供たちの関心がわくような工夫で取り上げています。
石橋先生のおすすめポイント
春夏秋冬別の全4巻のうちの1冊。この巻では、暦の上で夏となる立夏から始まり、聞くだけで暑そうな大暑までが載っています。興味あるページから読んでもよいし、見開きごとのミニコラムだけに目を通すのも面白いです。ミニコラムは、こいのぼり、カタツムリ、七夕、スイカのように季節感が満載ですから、給食時の校内放送の材料としても使えます(全学年向き)。

『自分を守る!食べもののそなえとじゅんび』
著/今泉マユ子
フレーベル館刊(発行:2019年)
「『もしも』のときに役に立つ!防災クッキング」シリーズの第3巻。自然災害に備えて、学校や普段の生活、自分たちでできることがあります。災害時の暮らしの変化、水の備え、食べものを備えるときのコツ、様々な災害食、「ローリングストック」について学べます。「もしも」のときのために、子供たち自身の「生き抜く力」を養います。
石橋先生のおすすめポイント
管理栄養士・防災士の資格をもつ著者が「災害時の食生活」を中心に書いた本です。社会や理科、総合の授業で地域の実情に合わせた防災教育が行われていると思いますが、その際の参考になります。高学年は自分で読めますし、低中学年には部分的に読み聞かせたり、クイズ方式で紹介したりすると授業で使えます。また、保護者の方にも知ってほしい内容が満載ですから、授業公開日に活用するのもおすすめです(全学年向き)。

『日本の天気・気象災害』
作/勝丸恭子
小峰書店刊(発行:2022年)
「気象予報士に挑戦! お天気クイズ」シリーズ(全4巻)の日本の天気・気象災害編。最高気温クイズや天気予報の始まりなど、日本各地の天気の記録、歴史にかかわる天気、そして気象災害など、社会の学習に役立つクイズの数々を掲載。活躍中の気象予報士が出題します。
石橋先生のおすすめポイント
この第3巻は日本各地の天気の特色や歴史に関することや、防災についてのクイズが載っています。子供たちが住んでいる場所や学習した地域に関するクイズを出すと「えっ! 本当?」「そうだったのか」となりますよ。歴史問題では、浅草の「雷門(かみなりもん)」の正式名称や信長が「桶狭間の戦い」で勝てたのは天気が関係しているなど、先生方も子供たちと一緒に楽しめること、間違いなし!(中学年以上向き)。
読み物
子供たちが物語の世界に入る楽しさを味わえる読み物です。主人公が子供なのでより身近に感じることでしょう。

『江戸の空見師 嵐太郎』
作/佐和みずえ 絵/しまざきジョゼ
フレーベル館刊(発行:2020年)
「いつかきっと、だれもが空見(天気予報)を必要とする時代が来る!」。江戸に生きる空見の得意な少年が、「黒船再来航の日を予測する」という一世一代のお達しに挑む、幕末ファンタジー!
石橋先生のおすすめポイント
お話は嘉永6年(1853年)の年末から始まります。この年の6月にペリーが浦賀に来航して開国を迫りました。そんな時代背景を踏まえ、社会の授業で江戸時代を学習するときに紹介してあげてほしい1冊です。江戸時代の人物のパワフルな生き方がテーマの本はたくさんありますが、主人公が子供で、天気を予想することを家計の足しにしていたことはきっと高学年の子供の共感を呼びますよ。史実を踏まえた物語で、黒船来航が嵐太郎の運命に大きく関わる冒険物語です(高学年向き)。

『雨ふる本屋』
作/日向理恵子 絵/吉田尚令
童心社刊(発行:2008年)
ルウ子はカタツムリに誘われて「雨ふる本屋」へ。出迎えてくれたのは、摩訶不思議な本と、ドードー鳥の店主と助手の舞々子、そして妖精たち。ドードー鳥の店主が、ここにある本は、人間に忘れられた物語に雨をかけてできあがるという……。
石橋先生のおすすめポイント
「本なんて、大嫌い」というルウ子のお話。小学4年生以上の子供におすすめで、会話文と場面の情景が浮かんでくるイラストが多くて、とても読みやすい本です。物語の始まりが印象的で17ページまで読むと「雨ふる本屋」に到着します。先生方は子供たちを「雨ふる本屋」の入り口にぜひ案内してあげてください。このシリーズは全5巻。1冊読破すると続きが読みたくなり、物語の世界に入り込む楽しさを味わえます(高学年向き)。
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石橋幸子先生からのメッセージ
これから日本の多くの地域は梅雨に入ります。日本は四季があるので、その日の天気を気にする人が多いようです。梅雨のない地域もありますが、これから夏、秋、冬と季節が変わるにつれてどんなふうに天気が変わるのか、また、最近増えている自然災害についても本を通して考えてみましょう。高学年向きには天気に関係する物語を用意しました。どちらも主人公が魅力的ですよ。
監修
石橋幸子(いしばしさちこ)
全国SLA学校図書館スーパーバイザー
東京学芸大学非常勤講師、明星大学非常勤講師、和洋女子大学非常勤講師
長年、東京都の小学校教員を務める。また司書教諭として全教員が学校図書館を授業に活用することを目標として学校図書館を経営。退職後は大学で司書教諭の資格を取得する学生を指導。本を読むことも本で調べることも大好き。もっと心が躍るのは楽しい本を子供たちに手渡すこと。本連載が、先生方と子供たちの本の架け橋になればうれしい。
取材・文・構成/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介

著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよく分かります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。