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漢字って、おもしろい! カードゲーム『カンジモンスターズ』で子供たちの興味を引き出す授業

2025年4月某日、東京都公立小学校の4年1組の教室を訪れた。1時間目は国語。朝の光が差し込む教室で、担任の田中愛先生は授業の冒頭、「漢字が好きという人と、苦手、嫌いという人に分かれていると思うんだけど」という言葉で、「漢字のイメージ」について児童たちに問いかけた。

児童たちは事前にそれぞれの思いをパドレットに書き込んでいた。「いろんな文字があって、たくさんの漢字があるから好き」と答えた児童がいる一方で「たくさん漢字があるから嫌い」という声も。「ひらがなで書く文章も漢字で書けば短い文章でまとめられる」と実用的な視点で書き込んだ子もいる。それぞれの子供たちの素直な反応を紹介しながら、「漢字って、おもしろい! しらべるって、たのしい!」という単元の第1時が始まった。

授業者:田中愛 先生
広州日本人学校、東京都公立小学校、長野県公立小学校、東京学芸大学附属特別支援学校を経て現職。一昨年、放送大学大学院情報学プログラム修了。Microsoft認定教育イノベーター、TeacherCanvassador、4児の母。

「漢字はむずかしい」から「漢字っておもしろい!」へ

同クラスでは、事前アンケートの結果、多くの児童が「漢字は覚えられないから嫌い」と回答しており、漢字学習への意欲が単なる「漢字=記憶すべきもの」に限定されているという課題が見受けられたという。この課題に取り組むため、田中先生が選んだのは従来の「繰り返し書く」学習方法ではなく、カードゲーム『カンジモンスターズ』を活用した新しいアプローチだ。

このゲームは「マナ」と呼ばれる部首やつくりのカードを、漢字一文字を表す「モンスターカード」に配置し、それぞれのモンスターの技を発動させてカードの枚数を競うという、子供たちが親しみやすい対戦バトル形式のカードゲームである。

「今日の授業の目標は、漢字を楽しんで好きになることです。嫌いって書いてた人も、ちょっと楽しんできたら好きっていうのに変わるかもしれないね」と田中先生は授業中に児童たちに語りかけていた。

第1時:漢字の「へん」と「つくり」を復習しよう

漢字の左側にある、大まかな意味をあらわす部分のことを何といいましたっけ?

1時間目の授業では、3年生までに学習した「へん」と「つくり」を復習するところから始まった。

「話」という漢字をスライド投影し、「この漢字の左側、みんなから見て左側にある、大まかな意味を表す部分って、これ、なんていうの?」と田中先生が問いかけると、「へん!」と児童たちが元気よく答える。「お、覚えてた、良かった」と田中先生も満足そうに微笑んだ。

続いて「顔」という漢字を投影して「じゃあこの漢字の右側は?」と問うと、「右がつくり、おおがい」と発言する児童がいて、「そこまで知ってるの!? じゃあ今日やることないじゃん、もう先生」と田中先生が冗談を交えて驚く場面も。その後も「かんむり」「あし」「しんにょう」など、漢字の構成要素についての知識を次々と披露する児童たちの様子に、教室は活気づいていった。

「じゃあ、漢字ってどうやって生まれたの?」という問いかけには、「中国からお米のような文化とともに伝わってきたから」とある児童が答え、別の児童が「すべて中国から伝わってきたわけではなくて、峠とかは、日本で作られた」と補足する場面も。

印象的だったのは、ある児童の「形から由来するものと、中国から伝わってきたものを少し変えましたっていうのと、あと合体するっていう、そういう大まかな種類に分けられるから、形で日本で作るっていう場合もある」という発言だ。これに対して田中先生は他の児童に向いて「理解できた? すごいね。今言ってくれたのはね、五年生で習うんだけど」と感心しながら、「形成文字」「会意文字」といった専門的な用語にも触れていった。

漢字は絵から生まれてきた――漢字のモンスターカードを見せながら説明

田中先生は「手」の字が絵から生まれたことを説明し、「友」の字については「手が二枚」という構成について、「なぜ手が二枚なんですか」と問いかけた。「握手、手をつなぐから」という児童の回答に「なるほど。手と手をみんな友達で繋ぎ合わせて仲良くしようねみたいな」と田中先生が共感を示し、漢字の成り立ちに関する興味を深めていった。

「兵」の字についても田中先生が「もともとどんな絵だったんですかね」と問いかけ、部首で色分けしたスライドを見せると、形から気付いた児童から「あ! 兵士だからオノ(斧)を持っているのか、だから(「斤」は)オノづくりっていうのか」という発見の喜びを感じさせる反応が返ってきた。この「なぜ」を考える瞬間こそ、漢字学習の本質に触れる貴重な場面だったのではないだろうか。

続いて児童たちは「光」の漢字について考え、「人」と「火」の組み合わせであることを学んだ。田中先生は「昔、火ってすごい貴重なもの、神聖なものだったらしい。そんな火を人が掲げてる様子、神聖な火を偉い人が掲げてるっていう様子、それが光という字の成り立ちと言われているのです」と漢字に込められた意味を説明した。「昔だから、松明とか持ってたかもしれないね。漢字の法則から昔の人々の暮らしが分かるっていうのも、ポイントだと思う」と続け、漢字から歴史や文化を読み解く視点を示した。

1時間目の後半には、児童たちが各自「カンジモンスターズ」のカードから好きな漢字を一枚選び、ワークシートに訓読みや部首を調べて書き込む活動に取り組んだ。

好きな漢字カードを選んで、その漢字についてワークシートに書き込む

田中先生にとって印象的だったのは、ある児童の変化だという。「字を書くのが苦手で、普段ノートを開いても全く鉛筆が進まない児童が、カンジモンスターズのワークシートを夢中になって書きながら『全部のモンスターズの漢字について書きたい』と言い出し、追加のシートを求めてきたんです」

ゲームのルールを知ろう

ワークシートへの記入が一段落すると、田中先生はルール説明動画を児童たちに見せた。ゲームのルールは概略以下のとおりである。

まず対戦者それぞれが、漢字を表す3枚の「モンスターカード」と、部首を表す20枚の「マナカード」を選ぶ。

裏返したモンスターカードの上に、交互に引いたマナカードを置いていく。漢字の部首がそろったら、モンスターカードを表にして「技」を発動して、相手のマナカード(=ライフ)を減らしていく。

相手のライフをゼロにしたら勝ち

実例とともに分かりやすく解説されるルール説明動画に、児童たちは熱心に聞き入っていた。すでにルールを知っている一部の児童は、はやくプレイしたくてワクワクする様子を隠しきれない。

漢字の部首を表す「マナカード」ゲーム中はライフの役割も果たす
漢字を表す「モンスターカード」はどの3枚を選ぶかで強みや特性が変わってくる。どの組み合わせで戦うか、創意工夫が求められる

第2時:カンジモンスターズで漢字バトル!

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