浅見哲也教科調査官に聞く!道徳授業の組み立て方のポイント
2018年4月から全面実施され、新たなスタートを切った「特別の教科 道徳」。「考え、議論する道徳」の実現に向けた学習のポイントについて、文部科学省教科調査官の浅見哲也先生が、 『教育技術 小五小六』4月号の特集で具体的に答えています。
浅見哲也さん
文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。
目次
「道徳」は「国語」にあらず!
「道徳は国語ではない」という認識を、しっかりともっていただきたいと思います。文章を理解させて、登場人物の気持ちを考えるのではなく、ある程度のあらすじを分かった上で「自分との関わり」から考えを深めるのが道徳です。慣れていない先生は「導入」「展開」「終末」の進行の基本型を知っておくと、やりやすいでしょう。
「考え、議論する道徳」とは
「考え、議論する道徳」の実現に向けた学習のポイントは、端的に言うと、次の4点です。
① 問題意識をもって授業に臨む
② 自分との関わりで捉え、考える
③ 多面的・多角的に考える
④ 自らをふり返り、自己の生き方について考える
さらに、授業で大切にしていただきたいことが二つあります。まず一つ目が「学級経営の充実」。子供同士がなんでも伝え合える雰囲気をつくることです。もう一つが、「子供の実態を把握してから授業に臨む」ということです。
「教材を学ぶ」のではなく、「教材を使って生き方を学ぶ」のが道徳科の本来の学習です。だからこそ、実態を把握することが、意図的な発問や、活発な対話を生む重要な要素となります。
そして、子供の道徳性を養い、道徳性を構成する諸要相を育てることを目標として、〝考え、議論する道徳〟の実現を図っていきます。
①問題意識をもって、授業に臨む
教材の中に描かれている問題について子供が問題意識をもてるよう導きましょう。黒板に学習課題(めあて、テーマ)を書いたり、冒頭で「今日考える問題」について簡単に説明したりするのも有効です。
子供が問題意識をもっていれば、「教材を学ぶ」ではなく、自然と「教材を使って考える」姿勢になっていきます。
②自分との関わりで捉え、考える
自分との関わりを表現するための発問の工夫に「自分だったらどうしますか」「あなただったらどう考えますか」があります。
ただ、「自分だったら」と聞かれることで本当のことを言いにくくなる子もいるかもしれません。内容によって、登場人物などを引き合いに出し発問するなど、常に自分との関わりを考えやすくする発問の工夫が必要です。
③多面的・多角的に考える
「多面的・多角的」に考えるためには子供同士や先生との対話、教材の登場人物との対話など、様々な「対話」が求められます。
そして、重要なのはその価値を実際の生活や人間関係とリンクさせて意識付けることです。「この意見はどんな考え方か」「誰と誰は同じで、誰とは違うか」など、対話や意見の違いを整理して板書にまとめましょう。価値理解だけでなく、人間理解や他者理解が進み、「多面的・多角的」な視点へとつながります。
④自らをふり返り、自己の生き方について考える
これからの生き方について、課題や希望をもつための大切な時間です。ワークシートや道徳ノートの活用もよいでしょう。必ず書かなくてはいけないということではありません。自己の生き方について、考えを深めるための手段の一つが、「書く」活動なのです。大切なのは、自らをふり返り、考える時間をもつことです。
道徳教材「ブランコ乗りとピエロ」を使った授業の進め方の具体例はコチラ!→小5・小6道徳「ブランコ乗りとピエロ」指導アイデア
構成・文/ルル
『教育技術 小五小六』2019年4月号より