支持的風土を育む 学級会での少数意見の扱い方【自治的な活動を促す 学級経営の極意Ⅱ⑮】


子供たちが自治的な活動を行えるようにするためには、教師はどのような指導をしていけばよいのでしょうか。学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に特別活動の本流を踏まえて、学級活動の基礎基本を解説します。第15回は、学級会で取り上げられなかった意見の扱いについて解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章
学級会の合意形成の段階で「取り上げられなかった意見」の扱いは、大切な指導事項です。形式的に賛成・反対意見の数の多少で集団決定することなく、どの意見も大切に扱うという視点を子供たちがもてるように指導することが求められます。そこで、「取り上げられなかった意見」の扱いについて、3つのキーワード「賛成・反対意見の確認」「出された意見の扱いの明確化」「少数意見の扱い」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 賛成・反対意見の確認
学級会で合意形成を目指して話し合う際には、賛成・反対意見を出し合う中で、全体の意見の傾向を把握します。あくまでも意見の傾向を見ることを主とし、単に賛成・反対意見の数によって集団決定することがないように指導します。まずは、どの意見に対しても、賛成・反対意見が出るようにしていきましょう。
賛成・反対意見の出ていない意見について確認します
学級会の話合いで、賛成・反対意見が出されていない意見があるにもかかわらず、賛成意見の多いものに決定してしまう授業を見ることがあります。出されている意見に対して、賛成・反対意見が出ていない場合には、司会からその意見に対する考えを求めることが大切です。出された意見に対して誰も触れない場合は、意見を出した子供の心情を踏まえて教師が助言するようにしていきましょう。
CHECK② 出された意見の扱いの明確化
学級会で出された全ての意見を生かして合意形成を図ることは、現実的には難しいものです。当然、集団決定の段階で取り上げられない意見も出てきます。その際、取り上げられなかった意見をどのように扱うかを考えることが、学級の支持的風土を醸成するためにも大切な視点です。取り上げられなかった意見の扱いについて明確にできる学級会の話合いにしていきましょう。
採決で取り上げられなかった意見の扱いを明確にします

学級会の集団決定の段階で取り上げられなかった意見を、そのまま置き去りにしたまま進行している授業を参観することがあります。大切な友達が考えた意見を生かすためには、どうしたらよいかを考えていくような子供たちになるように育てていきましょう。
CHECK③ 少数意見の扱い
学級会の話合いでは、賛成・反対意見の数に差が出てきます。一般的には、賛成意見の多いものに決定していくことが多く見られますが、あくまでも賛成意見の数の多さだけで決定していくものではありません。ときには、賛成意見の数が少ないものに決定していくこともあります。まずは、集団決定する際には、意見の数の多少ではないことを事前に指導しておきましょう。
少数意見のよさにも目を向けるようにします
学級会は、多数決で決める話合いではありません。出された意見の背景にある思いや願いを理解し合い、可能な範囲でどの意見も生かしていこうとする合意形成を目指しています。その基準は提案理由にあります。少数意見であっても、話合いの根拠となる提案理由に沿っているものもあります。そのため、少数意見も大切にし、どの意見も生かしていこうとする支持的な関係のある子供たちを育てていきましょう。
イラスト/池和子(イラストメーカーズ)