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2つのケースを説明できる? 出席停止~シリーズ「実践教育法規」~

連載
シリーズ「実践教育法規」
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早稲田大学大学院教育学研究科教授

酒井 徹

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第39回は「出席停止」について出席停止には2つの場合がありますが、その1つである「性行不良」が理由となり適用されることはほとんどないのが現状です。出席停止の要件や、命令はだれが行うのかについて見ていきましょう。

執筆/酒井 徹(早稲田大学大学院教育学研究科教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#39

出席停止措置の概要

学校は、児童生徒が安心して学ぶ場でなければなりません。そのために、学校及び教育委員会には児童生徒の生命及び心身の安全を確保することが基本的な責務として課されています。この視点から出席停止の制度があり、実際に行われることがあります。

出席停止には次のような二つの場合が想定されます。一つは公立小学校及び中学校において、学校が最大限の努力を払って当該児童生徒への指導を行ったにもかかわらず、性行不良が改善されず他の児童生徒の教育の妨げになっていると認められる場合です。もう一つは感染症の発生や拡大を防止し予防するために、当該児童生徒の出席を停止させるものです。

性行不良による出席停止

学校教育法第35条等では、市町村の設置する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校前期課程等に在籍する学齢児童、学齢生徒を対象として、性行不良により学校の秩序の維持や他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障する観点からの早急な取組みが必要な場合は、市町村の教育委員会が当該児童生徒の保護者に対して出席の停止を命ずることができるとしています。

つまり校長が命じるものではないことに留意が必要です。また仮に当該児童生徒が学校による継続した指導によっても状況が改善されないとしても、義務教育段階にある当該児童生徒の学習権の確保については最大限に尊重しなければなりません。

そこで、要件として次の4点が法に示されています。

①他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為
②職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為
③施設又は設備を損壊する行為
④授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

さらに、これらの要件が「一又は二以上を繰り返し行う等性行不良」であり、他の児童生徒の教育に妨げがあるときに適用されます。

また出席停止を命じるにあたっては、「あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない」、「出席停止の命令の手続に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める」、「市町村の教育委員会は、出席停止の命令に係る児童の出席停止の期間における学習に対する支援その他の教育上必要な措置を講ずる」としています。

出席停止制度は、本人の懲戒という観点からではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられていますが、文部科学省による「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果からは、ここ数年間にわたり措置件数は全国の小学生、中学生の合計で毎年数件程度となっています。

なお、いじめ防止対策推進法には第26条において、「出席停止制度の適切な運用等」として、「法の規定に基づき当該児童等の出席停止を命ずる等、いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を速やかに講ずるものとする。」と規定されています。しかし、先の文部科学省調査ではいじめを理由とする出席停止件数はほぼゼロです。この事実から、措置の周知が進んでいない実態を示している可能性があります。

感染症対策としての出席停止

新型コロナウイルスによる感染など、感染症の影響が学校教育に大きな影響を及ぼしました。学校は児童生徒等が集団生活を営む場所であるため、感染症が発生した場合には拡大しやすく、教育活動に大きな影響が生じかねません。

そこで、感染拡大予防のため学校保健安全法第19条の規定により、校長は感染症にかかっており、かかっている疑いがあり、またはかかるおそれのある児童生徒があるときは、政令の定めるところにより、出席を停止することができます。また同法の第20条では、学校の設置者は感染症の予防上必要があるときは、臨時に学校の全部あるいは一部の休業を行うことができるとされています。これが学校、学年、学級閉鎖に該当します。

さらに関連法規として同法施行令第6条では、校長は出席を停止するにあたっては理由と期間を保護者等に明らかにすること、その期間は文部科学省令の基準によること、その際に同施行令第7条では、校長はその旨を学校の設置者に報告しなければならないとしています。

出席停止の運用ルール

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