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全国学力・学習状況調査【わかる!教育ニュース #65】

連載
中澤記者の「わかる!教育ニュース」
わかる!教育ニュース #65
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第65回のテーマは「全国学力・学習状況調査」です。

全国学力・学習状況調査が2027年度からオンライン方式に全面移行

紙からオンラインへの切り替えが、様々な場面で進んでいます。小6と中3を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)も同様。文部科学省は2027年度から、オンライン方式(CBT)に全面移行する考えです。ただ、出題や解答をオンラインでする、という単純な話ではないようです。

CBT化の意義や特徴を踏まえたテスト結果の扱いを検討する有識者会議で、文科省がこのほど、都道府県や政令市ごとの平均正答率を従来通り国が公表し、時期は全国の結果より1か月ほど遅らせる提案をしました(参照データ)。2025年度調査から変更する考えです。

まず、文科省からの公表は3回に分けます。最初は全国の平均正答率を現行通り7月中旬に。このとき、学校にもデータを返却します。今より早めることで、夏休み中の学びに生かしてもらうためです。都道府県教育委員会には7月下旬にデータを渡します。2回目の公表は全国のデータの分析結果で7月末、最後が都道府県ごとの結果で8月以降。3回目の公表前に、教委が自らの結果と分析を公表することもできます。 

なぜ時期をずらすのでしょうか。一つは、教委へのデータ返却から、文科省が全国や都道府県の結果を一緒に公表するまでの期間が短く、現場の分析時間が足りないという声があるためです。また、今回の案では、各教委は他県の状況が最後の公表まで分からないため、自分の地域の傾向を、全国の結果も踏まえて主体的に分析することも見込めます。

全知事のうち29.8%が、全国の結果のみの公表を望む

でも、問題はまだあります。そもそも、文科省が都道府県ごとの結果を出すべきなのか、です。

全国学力テストが約40年ぶりに復活した2007年当初から、文科省は抽出調査の年を除いて、全国と都道府県別の結果を公表してきました。一方、全国知事会の調査では、全知事のうち29.8%(14人)が、全国の結果のみの公表を望んでいます。「都市部と地方の教育資源の格差や家庭環境を無視した比較がされ、誤った認識を招く」「全国平均との差や順位が独り歩きし、現場の混乱を助長する」という声もありました。

結局、文科省は「調査実施主体として、国が説明責任を果たす」と、都道府県別結果の公表を続ける姿勢をとりました。一方で「正答率だけに注目するのは適切ではない。多面的に解釈できる示し方にする」と、公表する際は分布状況が分かる箱ひげ図や散布図など、様々な角度で「学力」を見るデータも出す構えです。

全国学力テストの目的を踏まえれば、その結果とは「成績」ではなく、国や自治体の教育施策や予算配分、現場の指導の改善の「材料」。結果を基に地域の学力の現状を複層的に見て、問題点をあぶり出す作業は欠かせません。とはいえ、文科省が全県の平均正答率を一覧で出せば、「順位」が話題になってしまうのも事実。今回の変更で、そんな状況を本当に変えることができるのか、注目しています。

【わかる! 教育ニュース】次回は、4月15日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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