「摂食障害」とは?【知っておきたい教育用語】

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食事に関する行動にさまざまな問題が現れる「摂食障害」。10代の思春期前後の子どもが発症するケースが世界的に増えています。今回は、摂食障害とはどのような病気なのか、その症状や治療方法などを解説します。

執筆/文京学院大学名誉教授・小泉博明

摂食障害とは

【摂食障害】
極端に食事を制限し、著しくせる「神経性やせ症」(拒食症)と、「むちゃ食い」と体重増加を防ぐために嘔吐や下剤の乱用を繰り返す「神経性過食症」がある。青年期にかかることが多く、女性の割合が高いですが、誰でもかかりうる病気。

神経性やせ症とは、拒食症ともいわれますが、肥満への恐怖心があり、十分にやせているのに本人はやせているとは思わず、もっとやせようとする摂食障害の一種です。拒食症は、食べる量が極端に少ない場合だけではなく、「むちゃ食い」と呼ばれる過食をすると、激しい後悔に襲われ、嘔吐をしたり下剤や利尿剤を使用したりして体重を減らそうとします。標準体重の85%以下の状態が続くと、拒食症への注意が必要となります。

神経性過食症は、家族のいないときや夜中などに、短時間に大量に食べたり、食べ始めると止まらなくなったりします。「むちゃ食い」をしては自分で吐く、あるいは下剤、利尿剤などで排出します。その後、食べ過ぎたことを後悔して落ち込みます。拒食症のように、やせているわけではなく、体重は標準くらいの人が多いようです。また、活動性が低下し、人と会いたくなくなり、引きこもりのようになる場合もあります。

摂食障害の症状

摂食障害によって、栄養が不十分となり、女性の場合は生理が止まったり、むくみが出たり、低体温になったりします。さらに進行すると、栄養失調から腎不全や低血糖に、不整脈や感染症といった重大な合併症を引き起こすこともあります。

嘔吐や下剤の乱用により、電解質の異常があります。頻繁な嘔吐は食道の損傷や出血、虫歯の原因となることもあります。神経性過食症は、低体重の状態ではないため致死的な身体的合併症は少ないですが、自殺率が高いというデータもあり要注意です。

摂食障害への治療

摂食障害は生命の危険もある病気であるため、専門家のサポートが必要となります。あまりにも極端にやせている場合には、入院も必要となります。抗不安薬、抗うつ剤、抗精神病薬などの薬と併せて、カウンセリングや栄養指導が行われます。

摂食障害になる人は、自分の体型に対する認識(ボディイメージ)のゆがみ、極端な完璧主義、自己評価の低さなど、考え方に偏りを強くもっている場合が多く見られます。カウンセリングでは、そのような考え方を修正する認知療法や、正しい食事習慣を身につける行動療法などが行われます。

また、摂食障害はダイエットをきっかけに発症することが多いといわれています。子どもは、両親の別居や離婚など家庭環境の変化や、人間関係などによるストレスが要因となる場合もあります。

子どもが摂食障害にならないよう、教員の配慮も重要です。特に、子どもの心身の健康状態を観察、把握し、健康相談や健康指導に従事している養護教諭や保健管理担当者は、摂食障害を早期に発見し、早期に治療、支援につなげるうえで、重要な役割を担います。

そして、摂食障害が疑われる子どもに、どのように気づき、寄り添えばよいかを考えなければなりません。なお、摂食障害全国支援センターによる摂食障害支援拠点病院があり、摂食障害の治療の支援体制の充実を図っています。

▼参考資料
摂食障害情報ポータルサイト(ウェブサイト)「摂食障害で悩んでいる方へ 10代のあなたへ
厚生労働省(ウェブサイト)「こころの病気について知る 『摂食障害』
厚生労働省(PDF)「エキスパートコンセンサスによる摂食障害に関する学校と医療のより良い連携のための対応方針 小学校版」2017年3月
摂食障害全国支援センター(ウェブサイト)「摂食障害全国支援センター ホームページ

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