いじめ【わかる!教育ニュース #62】
![わかる!教育ニュース #62
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第62回のテーマは「いじめ」です。
目次
追跡調査での「仲間外れ、集団無視」、子供回答は約70%、教員回答は10%台
文部科学省の調査のたびに件数が増える、いじめ。昔より多いとは限らず、いじめを見付けようとする学校側の努力の表れとも言えます。ただ、見逃しやすいいじめがあることは、理解しておいたほうがいいでしょう。
国立教育政策研究所(国研)が行った「いじめ追跡調査」の結果を、文科省の「問題行動調査」の結果と比較したところ、いじめ被害の多い内容が、子供と大人で食い違うことが分かりました(参照データ)。
追跡調査は、国研が同じエリアで時期を変えて行っています。今回は2019~22年、ある地方都市の16小中学校の小4~中3の4000人超に実施。各年6月と11月、4年間で計8回調べました。調べたいじめの形は「冷やかし、からかい、悪口」「金品をたかられる」など、問題行動調査と同じ8つの行為です。
両者の結果を分析すると、子供が回答する追跡調査で70%近くに上る「仲間外れ、集団無視」が、教員が答える問題行動調査では、10%台。同様に、「軽くぶつかられる、遊ぶふりで叩かれる、蹴られる」も子供回答が40%台に対し、教員回答は10~20%台と開きがあります。他にも、問題行動調査で10%に満たない「ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする」が、追跡調査では20~30%台に上りました。
子供と教員の受け止めのずれは一部のいじめの形で見られる
この隔たりについて、国研は尋ね方の違いが影響していると指摘しています。
追跡調査は、8つの行為一つ一つについて、被害があったかどうかを尋ねています。つまり、それぞれの行為について被害の有無が明確に出るのです。
一方、問題行動調査は、教員が把握した被害を基に回答しています。でも、同じ時期に様々な形のいじめを受けた子が、被害すべてを教員に伝えるとは限りません。けがなど目に見える被害や、他の子供の証言といった客観的な事実を基に把握することも多いでしょう。教員が捉えた事実や主だった被害で回答する調査手法の違いが、結果の差に表れたと国研は見ています。
一方で、「冷やかし、からかい、悪口」はどちらの調査も60~70%に上り、大きな隔たりはありません。つまり、子供と教員の受け止めのずれは、どのいじめにも生じるわけではなく、一部のいじめの形で見られると言えます。
国研はいじめの把握件数が近年増加傾向ではあるものの、つかみきれていないいじめがまだある可能性に触れた上で、両調査で食い違いがあったいじめの形について、「見逃しやすいいじめの態様だという認識をもって、対応することが望まれる」と説いています。
教員の目の届かない学校外でのいじめや、インターネット上での中傷など表に出にくいいじめもあります。けれど、「見逃しやすいいじめ」がどういうものかをあらかじめ知っていれば、子供の様子にどこか違和感を抱いた時に、見逃しやすいいじめを疑って、発見に向けて動くこともできます。
【わかる! 教育ニュース】次回は、2月28日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子