【相談募集中】子どもとの距離の取り方が分からなくなってきました
小学5年生を担任する先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。周囲の目を気にして自身の言動に注意を払うあまり、笑えなくなり子どもとの距離を感じるようになってしまったそう。これを受けて回答したのは、東京都の公立小学校教諭の内田聡先生。その内容をこちらでシェアします。
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目次
今年で7年目、子どもとの距離感が分からなくなってきました
子どもとの距離感の取り方が分からなくなってきました。今年7年目ですが、年々子どもとの距離感が分からなくなっていきます。自分は、けっこう周りの目を気にして生きてきたので、「この行動をしたらどう見られるかな」「どう見えているかな」ということをどうしても気にしてしまいます。
学級経営をする中で、ひいきしている、いじめられる原因になった等を言われないように言動に注意を払ってきました。でも、そうすると、どんどん自分が苦しくなっていって、「この子に話しかけたらひいきと思われるかな」「笑っちゃうようなちっちゃな失敗だけど、笑ったら馬鹿にされたと思われるかな」「あの子は褒めるときすごくリアクションしてくれるのに、私にはあの子よりも小さいリアクションだと思われないだろうか」と思うようになってしまい、子どもがいる時間に笑顔を作ることも苦しくなってしまいました。
笑えなくなると、今度は、「あの先生は怖い先生」「あの先生がいるから静かにしないとだ」等の声が聞こえるようになりました。その一方で、経験年数もあると思いますが指導はすんなり通るようになり、先生方からは「指導力がある」「ビシバシやってるね」等の言葉をいただくことが多くなっています。ですが、子どもからの評価はきっと良くないです。
きっと考えすぎなんだと思いますが、どう考えて、どのように子どもと接すればいいのでしょうか。
(萩の月・20代男性)
A. 子どもたちの声が耳に入ることも、悩む余裕ができたことも成長の証です
7年目。校内では、もう立派な先輩先生。みんなから頼りにされる、そんな毎日だと思います。でも、まだ7年目。きっと上手くいかないことも、悩むことも多い時だと思います。
萩の月先生は、きっと教師という仕事に真摯に向き合われているステキな先生なんだと思います。だからこそ悩む。心が少し悲鳴を上げているのかな、そう感じました。
さて、人の目を気にすることは、決して悪いことではないと思います。人の目を気にするから、オシャレもするし、言動にも気を付ける。それも一つの事実ではないでしょうか。
ただ、気にしすぎるのは、ちょっと立ち止まって考えてみる良い機会だと思います。私は、20代後半、高学年担任をしていた時に、子どもたちのヒソヒソ話が気になり、子どもたちを心から信じられなくなった時期がありました。
教室に行くのも辛い、授業をしていても上の空、子どもたちの「ことば」が「目線」が、気になって、気になって仕方がない。自然に笑えない、子どもたちと目が合わせられない、もう最悪の状態……。萩の月先生とちょっと似た経験をしました。
そんな時、冴えない私を見かねた先輩が声をかけてくれました。私は、思い切って悩んでいることを先輩に話しました。
すると、先輩は、「何だ内田さんも一丁前の先生になってきたな」と笑いながら、「じゃあさ、昨日、俺の着ていた服のこと覚えてる?」と言いました。
何を言ってるんだろう。からかわれているのかと思いました。ただ、思い出せないのです。昨日、職員室で話したのに……。
先輩が言うには、「教師になったのだから、人の目が気になるのは当たり前。自分のことで精一杯の時は気にならなかっただけ」とのことでした。
そして、先輩は最後に、「先生も悩める余裕が出てきたんだね。成長したね」とほめてくれました。
それ以来私は、萩の月先生のような気持ちになった時は、次のように子どもたちに質問するようにしています。
「先生が昨日来ていた服は何色だった?」
子どもたちの答えは、もうバラバラです。ちゃんと覚えているのは本当に数名です。
「なーんだよ、ちゃんと覚えててよ。覚えていてくれた人ありがとう。みーんな、人は他人のことなんてそんなに見てないんだよ。だから気にしすぎる必要ないんだよ。大丈夫」。そんな話をします。
「大丈夫!」
子どもたちだけではなく、自分への励ましと確認の言葉でもあります。
萩の月先生。子どもたちの声が耳に入ってくるようになったことも、悩む余裕ができてきたことも立派な成長の証だと思います。
大丈夫。
私は萩の月先生を応援しています。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。