「校務DX」とは?【知っておきたい教育用語】
文部科学省は、令和5年(2023年)に「GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~」の報告書をまとめ、GIGAスクール構想のもとでの校務の情報化の在り方に関する提案を行いました。これは中央教育審議会「令和の日本型学校教育答申」で、教師の長時間勤務を解消し、学校の働き方改革を実現するために大きな役割を果たすと位置付けたことによるものです。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛
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目次
校務DX導入の背景
【校務DX】
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、デジタル技術を活用して業務やサービスの改善を図る取組を指す。校務DXは、この概念を教育現場に応用したもので、教育の質や効率を向上させるためにICT(情報通信技術)を活用する取組である。
校務DXによる校務の情報化が急がれる要因として、文部科学省は、以下のポイントを挙げています。
●急速な社会変化への対応
社会全体でのデジタル化が進むなか、ICTの活用が教育現場における重要な基盤として位置付けられたこと。また、コロナ感染症のようなパンデミックへの対応や少子化・人口減少が進む社会において、持続可能な教育環境を実現する必要性が高まってきたこと。
●働き方改革と教育の質の向上
教職員の長時間労働や業務の非効率、地域間の学力差といった課題を解消し、教育の質を向上させるため、ICTの導入と活用が有効であると捉えられるようになったこと。
●GIGAスクール構想
1人1台端末の整備を目指したGIGAスクール構想が推進され、学びの個別最適化や協働的学びを支える環境が整備されてきたこと。また、これに伴い校務の情報化が求められていること。
校務の情報化によって、業務効率が向上し、教員の働き方改革の推進につながることが期待されています。
校務DXの活用
具体的な校務DXの活用として、主に4つの柱が提案されています。
①統合型校務支援システムの活用
校務DXの中心となる統合型校務支援システムとして、教務系(成績処理、出欠管理)、保健系(健康診断管理)、学籍系(指導要録作成)、学校事務系などを統合し、情報の一元管理を可能にし、教職員の業務効率化を促進する。
②ICTツールの活用
グループウェアや汎用的なクラウドサービスを導入し、小テストや欠席連絡のデジタル化など、日常業務の効率化を図る。
③ロケーションフリー化
校務用の情報システムをフルクラウド化し、場所を問わず業務が遂行できる環境を整備するとともに、災害や感染症流行時など、緊急時の業務継続性を向上させる。
④標準化とデータ連携
帳票類や業務プロセスの標準化を進め、業務効率を向上させるとともに、教育データや行政データとの連携を強化し、子どもたちの支援や政策決定に活用可能なデータの活用を促進する。
文部科学省は、これらを推進するための「GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリスト(学校向け)」を提示していますので、ぜひチェックしてみてください。
現場の課題
現在、学校現場ではペーパーレス化が進んでいますが、校務DXとはほど遠いものです。校務DXを推進するにあたり、まずは以下のような課題を解消していく必要があるでしょう。
●学校間・自治体間の標準化不足
→指導要録や報告書類のフォーマットが統一されておらず、作業負担が増加。
●セキュリティ対策の必要性
→クラウド環境の導入に伴う情報セキュリティシステム整備や研修。情報管理の分担責任についての明確化。
●教員の負担軽減
→校務DX導入そのものが、教職員にとって新たな負担となる場合があるため、段階的な導入とサポートに加え、ICTリテラシー研修の充実を図ること。
校務DXは、教職員の業務負担を軽減し、教育活動に集中できる環境を整えるカギとなります。さらに、教育データの活用を通じて、子どもたちの学びを個別最適化し、学力向上や迅速な支援にもつながる基盤も提供します。このような取組は、教育の質の向上と学校全体の長期的な変革を実現する重要な手段となるでしょう。
▼参考資料
文部科学省(PDF)「GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~」
小学館(ウェブサイト)「『校務の情報化』とは?【知っておきたい教育用語】」2020年12月14日