免除される場合も知っておこう!職務専念義務違反への対応~シリーズ「実践教育法規」~
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- シリーズ「実践教育法規」


教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第33回は「職務専念義務違反への対応」について。職務専念義務はどのように規定されているのでしょうか。また、免除となるのはどのような場合なのでしょうか。

執筆/千々布 敏弥(国立教育政策研究所総括研究官)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)
【連載】実践教育法規#33
目次
職務専念義務とは
地方公務員法は「職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」と規定しており、このことを職務専念義務と称しています。
職務専念義務免除
職務専念義務は、法律または条例に特別の定めがある場合に免除されます。教育公務員特例法は、教員が本属長(校長)の「承認を得て勤務場所を離れて研修を行う」場合は職務専念義務が免除されます。なお、職務命令により研修に参加する場合は研修参加自体が職務と見なされています。
また、教育公務員特例法は「任命権者の許可を受けて、三年を超えない範囲内で年を単位として定める期間……その課程を履修するための休業をすることができる」としています。いわゆる大学院修学休業制度のことですが、この制度による休業期間中も職務専念義務は免除されます。そのほか、労働基準法により勤務時間の中で45分~1時間設定される休憩時間は「自由に利用させなければならない」と規定されています。
地方公務員法では「職員が在職のまま職員団体の業務に専従することは、原則としてできない」が「任命権者の許可を受けて、登録を受けた職員団体の役員としてもつぱら従事する」場合は可能としています。また、人事委員会に登録された職員団体が任命権者である教育委員会と勤務条件に関する交渉を勤務時間中に行うことは可能であり、教員が交渉にあたって職員団体が指名する役員となっている場合には職務専念義務は免除されます。
以上のほか、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児休業法)による育児休業、条例が定める休日、休暇等などが職務専念義務免除の対象となっています。
職務専念義務が免除された期間でも、教員は信用失墜行為の禁止など身分上の義務は負います。
職務専念義務違反の事例
これまで職務専念義務違反とされた凡例に次のようなものがあります。
相当の期間、勤務時間中の組合活動が行われ、学校内で慣行と認められていても、それは違法であると判断されています。勤務時間中に組合の主張を書いたリボンを着用した教員に対して「精神的活動の面において注意力のすべてが職務の遂行に向けられなかったものと解される」ために職務専念義務に違反するという判例もあります。
飲食などのために休憩時間以外の勤務時間中に勝手に職場を離れることがあれば、職務専念義務違反となります。しかし、正規の休憩時間内に給食指導などのために昼食がとれない教員もいます。そのような教員が休憩時間を勤務時間の最後にとって事実上早退することを申し出たとしましょう。休憩時間は勤務時間内に職員が職務に専念できるために適度な休養を与えるものですから、勤務時間の最後に休憩時間を設定することはできません。では、忙しい教員はいつ休憩をとることができるかという問題が生じます。
働き方改革について議論した中教審は2019年の答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」において「給食の時間も指導を行い、児童の休み時間も児童と一緒に活動し、児童の安全への配慮等を行っていることが多いことから、休憩時間が確保できず、連続勤務になっている」と問題を指摘し、「教職員が適正な時間に休憩時間を確保できるようにすることを含め、教職員の勤務時間を考慮した時間設定を行う必要がある」と提言しています。
『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正