「真面目な子」にフォーカスした学級経営のコツとは
「気になる子」の指導を担任として頑張っていたらいつのまにか、「真面目な子たち」の視線が冷たいような…。そんな事態になる前に心がけるべきこととは? 今回は、「言うことを聞く子」に焦点をあてた学級経営のコツをお伝えします。
執筆/大阪府公立小学校教諭・浅野学
目次
「真面目な子」を先生は気にしなくていいの?
2-6-2の法則というものをご存じでしょうか。これはビジネスの世界でよく使われる言葉で、どのような組織にも「2割の優秀な人、6割の普通の人、2割のあまり働かない人」がいるという法則(経験則)です。
これを学級に当てはめるのならば「2割の先生の言うことを聞く子、6割の普通の子、2割の先生の言うことを聞きにくい子」となるでしょうか(今回は話を伝えやすくするため形式的に「〇割の子」という言い方をしていますが、本来、子ども一人ひとりを見ずに集団として見てレッテルを張るような見方は教育上好ましくないという立場です)。
今回は2割の中でも、様々な教育書においてよく扱われる「先生の言うことを聞きにくい子(気になる子)」ではなくて、「先生の言うことを聞く子(真面目な子)」に焦点をあてた学級経営のコツを伝えていきたいと思います。
2割の真面目な子に指導が通らないとき、学級は崩壊する
みなさんは子どものとき「真面目な子」でしたか? それとも「気になる子」でしたか?
クラスにいる真面目な子というのは、我々教師からするとついつい頼りにしてしまう存在です。猫の手も借りたいほど忙しい教師の仕事において、進んでお手伝いを引き受けてくれる子には何度も何度も助けられてしまいます。
お手伝いだけではありません。クラスがフワフワした雰囲気になりざわつくようなとき、教師から学級全体へ指導をするとします。2割の真面目な子たちはおそらくそんな雰囲気の中でもざわつくことなく過ごしていたでしょうが、教師の学級全体への指導を我が事として聞いていてくれることでしょう。
では、教師として学級経営をするときに、よく関わる子どもは誰でしょうか。ある日の一日で、あなたが一番話しかけた子どもでも構いません。おそらく同じ2割でも「気になる子」の方ではないでしょうか。
気になる子たちは、授業中に集中していなかったり、休み時間にケンカをしたり、放課後にトラブルを起こすこともあるでしょう。指導をしてもなかなか改善されることがなく、丁寧に話しても同じことを繰り返す。先生の頭の中は「気になる子」のことでいっぱい、なんてこと思い当たる先生も多いのではないでしょうか。
学級経営をしていると、この「気になる子」への指導が増えるものです。そして「真面目な子」たちへの関心は相対的に下がっていってしまう。それでも真面目な子たちは、真面目にお手伝いをし、先生の話をしっかりと聞いてくれています。特に指導をしなかったとしてもです。
学級崩壊が起こるときというのは、気になる子たちの先生への反発ではありません。2割の真面目な子たちが「先生の方を向かなくなったとき」、その学級は崩壊するのです。だから、真面目な子たちも気になる子と同じように気にしなければならないし、もちろんそれは6割の普通の子たちも同様なのです。
アイメッセージで称賛する
では、担任の先生として、どのように真面目な子たちのことを気にかけていけばよいのでしょうか。
最も大切なのは、先生が真面目な子たちの「当たり前の行動に気付く」ことです。「前を向いていてくれて、ありがとう」、「ノートに丁寧な字で書いてくれて、嬉しい」、「掃除を一生懸命にしている姿を見られるのは、気持ちがいい」。真面目な子たちが当たり前にしていることに気付き、それを言語化してあげてください。そのときのポイントがセリフの青い部分です。
このような言い方をアイメッセージと呼びます。これは主語が「私」なのが特徴です。対義語はユーメッセージといいます。こちらは「あなた」が主語になります。「前を向いていて、(あなたは)えらいね」、「ノートに丁寧な字を書いていて、(あなたは)すごいね」などとなります。
感じ方は人それぞれでしょうが、アイメッセージの方が柔らかく伝わることが多いと言われていますので、子どもへの称賛の際は是非使ってみてください。
真面目な子の「真面目さ」に甘えない
次に、真面目な子たちに関する注意点です。真面目な子の真面目さに甘えてついついお手伝いを頼みたくなりますが、これには注意が必要です。つまり「お手伝いを過度に頼まない」ということです。
担任の先生であるあなたは先ほど、算数の授業を終えましたが、練習問題がまったく終わっていない子がいたとします。本当ならば担任であるあなたが教えてあげたいところですが、職員室に急ぎの用事があります。教室の端っこで本を読んでいた真面目な子を見つけたあなたは、こう言います。
「この問題を教えてあげてくれないかな」。
もちろん真面目な子は快諾するでしょう。よくある光景です。しかし、今は休み時間です。授業中ならまだしも休み時間は子どもたちの自由な時間。それでも真面目な子は引き受けてくれるでしょうが、果たしてそのお手伝いはお願いしてもいいものでしょうか。さらに言うと、真面目な子は先生からのお願いを断りにくいものです。
そうなってくると、これはお願いではなく、最早「命令」に近いニュアンスになる危険性もはらんでいます。すべてがそうというわけではありませんが、その可能性は頭の片隅に入れてお願いをしなければなりません。
また、「時間を守る」ことも大切です。
クラスの雰囲気が良くないと感じた終わりの会。全体指導を続けますが、どうにも子どもたちの心に響いていない気がする。放課後を告げるチャイムが鳴ったけれど、大切なことなので指導を延長する。
これがまったくダメなこととは言えないものの、先ほどの休み時間と同様、放課後の時間は子どもたちの時間です。1回や2回ならまだしも、毎日のように放課後まで終わりの会が延長してしまえば、真面目な子たちだけでなく、クラスの多くの子どもたちは不満に思うでしょう。
どうでしたか。クラスにいる真面目な子たちは、あなたの学級経営に協力的な子どもたちです。その子たちの真面目さに気付けるように関わってあげてください。もちろん気になる子も普通の子も。みんな先生に気にかけてもらえることが大好きです。偏りがでないように意識することこそ最も大切なことです。