あなたの学校の備えは万全?防災教育~シリーズ「実践教育法規」~

連載
シリーズ「実践教育法規」

福島大学人間発達文化学類准教授

植田 啓嗣(うえだ さとし)

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第31回は「防災教育」について。学校保健安全法において、防災教育は安全教育の一環と示されています。また、学習指導要領では、教科横断的に防災教育を行うことが求められています。

執筆/植田 啓嗣(福島大学人間発達文化学類准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#31

学校安全の中の災害安全の安全教育として実施される

2011年の東日本大震災以降、学校安全がますます重視されるようになっています。学校安全は子どもたちの命を守るために欠かせない活動です。安全教育に関して最も関わりのある教育法規は学校保健安全法です。学校保健安全法は、学校安全を災害安全(防災)、生活安全、交通安全の3つの領域で分けられています。災害安全には地震・津波災害だけではなく、火山災害、風水雪害など他の自然災害、そして火災、原子力災害といった人為的災害も含まれています。災害安全、生活安全、交通安全の3領域は、それぞれ安全管理と安全教育で大別されています。つまり、防災教育は学校安全の中の災害安全の安全教育として実施されるものとなります。

防災教育は、学校保健安全法第27条が法的根拠となっています。同条には「学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員の研修その他学校における安全に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない」と定められており、防災教育は安全教育の一環として実施されています。

また、学校安全の推進に関する計画(2012年)において、「事件・事故災害に対し、自ら危険を予測し、回避するためには、知識とともに、習得した知識に基づいて的確に判断し、迅速な行動をとることができる力を身に付けることが必要」であり、そのため「日常生活においても状況を判断し、最善を尽くそうとする『主体的に行動する態度』を育成する教育が必要」と安全教育の必要性と方向性が示されています。「主体的に行動する態度」というのは、危険に際して自らの命を守り抜くための「自助」だけではなく、自らが進んで安全で安心な社会づくりに参加し、貢献できる力を身につける「共助、公助」の視点を持つことが含まれています。安全教育の一環として行われる防災教育においても「主体的に行動する態度」の育成を目指すことが求められています。

学校の教育活動全体の中で教科横断的、総合的に実施

防災教育は特定の教科に偏って実施されるのではなく、学校の教育活動全体の中で教科横断的、総合的に実施されるものです。小学校学習指導要領(2017年3月公示)の「総則」第2の2の⑵には「各学校においては、児童や学校、地域の実態及び児童の発達の段階を考慮し、豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していくことができるよう、各学校の特色を生かした教育課程の編成を図るものとする」と示されています。学習指導要領では、社会科、理科、生活科、体育科、家庭科、図画工作科、特別の教科 道徳、総合的な学習の時間、特別活動においてそれぞれ防災教育を含む安全教育に関する教育内容が示されており、防災に関する資質能力について教科等横断的な視点で育成することが求められています。

文部科学省の「学校安全資料『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」(2019年3月)には、災害安全に関する教育(防災教育)に関して「様々な災害発生時における危険について理解し、正しい備えと適切な判断ができ、行動がとれるようにする」ことが目標とされています。火災発生時における危険の理解と安全な行動の仕方、地震・津波発生時における危険の理解と安全な行動の仕方など、12項目が教育内容として示されており、これらの内容について、幼稚園児から高校生までそれぞれの発達段階に応じた系統的な指導が必要となります。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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