日本にどれくらいいるの?外国人児童生徒の教育~シリーズ「実践教育法規」~

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鹿児島純心大学人間教育学部准教授

栗原真孝

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第27回は「外国人児童生徒の教育」について。日本語指導が必要な外国籍の児童生徒はどれくらいいるのでしょうか。また、そのような児童生徒に対する教育の在り方について解説します。

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執筆/栗原 真孝(鹿児島純心大学人間教育学部准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#27

外国籍の子どもの保護者には義務教育段階の子どもを就学させる義務が課されていない

外国人児童生徒とは、日本の学校に在籍する外国籍の児童生徒を指しています。学校基本調査によれば、2021年度の小学校教育段階から高校教育段階までの外国人児童生徒の在籍者数(国立、公立、私立の合計)は、12万7177人です(文部科学省『令和4年度学校基本調査報告書』2023年)。

外国人児童生徒の教育について教育法規の視点から考えると、日本人児童生徒との違いは、まずは義務教育諸学校への入学の際に生じます。外国籍の子どもの保護者には義務教育段階の子どもを就学させる義務(学校教育法第17条など)が課されていません。その上で、外国籍の子どもの保護者が就学を希望すれば、公立義務教育諸学校は外国籍の子どもを受け入れることになっています。

その一方で、外国籍の子どもの保護者には就学義務が課されていないため、外国籍の子どもの中には不就学の可能性がある子どもが存在しています。文部科学省は2023年度に不就学の状況などを把握するための全国規模の調査を実施しました(2019年度、2021年度、2022年度に続き4回目)。調査結果からは、義務教育段階の8601人の外国人の子どもが不就学の可能性があると考えられることがわかりました(文部科学省「外国人の子供の就学状況等調査(令和5年度)」)。

日本語指導の要否によって異なる受け入れ校の対応

入学後の外国人児童生徒については、日本語指導が必要か否かによって、受け入れ校の対応が異なります。日本語指導が必要ではない場合は、日本人児童生徒と基本的に制度上同じ扱いになるのに対して、日本語指導が必要な場合は、日本語指導が必要な児童生徒のための制度が用意されている場合があります。文部科学省は義務教育諸学校での日本語指導を「特別の教育課程」として2014年度から位置づけています。2023年度の調査によれば、全国の義務教育諸学校のうち、5880校で「特別の教育課程」による日本語指導が実施されています(文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和5年度)」)。

文部科学省では現在、「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」を2年に1度実施しています。2023年度の同調査結果によれば、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は5万7718人でした。学校種ごとに見ると、小学校は3万8141人、中学校は1万3369人、高等学校は4991人、義務教育学校は527人(前期課程329人、後期課程198人)、中等教育学校は75人(前期課程38人、後期課程37人)、特別支援学校は615人となっています。

「特別の教育課程」による日本語指導を含めた、特別の配慮に基づく指導を受けている外国籍の児童生徒の割合は、全体の90.4%であり、2023年度の調査では学校で何らかの日本語指導等を多くの児童生徒が受けています。

外国人児童生徒等への教育の在り方

最後に、外国人児童生徒を対象とする教育政策の動向を見てみると、2019年4月、文部科学大臣は中央教育審議会に対して、今後の初等中等教育について諮問しました。その際の主な検討事項の一つは、「増加する外国人児童生徒等への教育の在り方」でした。諮問を受けた中教審は2021年1月に「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」を発表しており、答申では、増加する外国人児童生徒等への教育の在り方に対する基本的な考え方として、外国人の子どもたちが共生社会の一員として今後の日本を形成する存在であること、母語、母文化の学びに対する支援に取り組むこと、日本人の子どもを含め、異文化理解・多文化共生の考え方に基づく教育に取り組むことなどが示されました。これらの基本的な考え方は、外国人児童生徒の教育に対する、文部科学省の今後の政策に反映されていくと考えられます。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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