小6理科「てこのはたらき」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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執筆/福岡県福岡市立笹丘小学校教諭・引坂風雅
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県福岡市立美和台小学校校長・岩田勝英
   福岡県福岡市立長尾小学校校長・今村光宏
   福岡県福岡市立南片江小学校校長・酒井美佐緒

単元目標

加える力の位置や大きさに着目して、これらの条件とてこのはたらきとの関係を多面的に調べる活動を通し、てこの規則性についての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。

評価規準

知識・技能

①力を加える位置や力の大きさを変えると、てこを傾けるはたらきが変わることを理解している。
②てこがつり合うときにはそれらの間に規則性があることを理解している。
③身の回りには、てこの規則性を利用した道具があることを理解している。
④てこの規則性について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。


思考・判断・表現

①てこの規則性について問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②てこの規則性について追究するなかで、力を加える位置や力の大きさとてこのはたらきとの関係について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして、問題解決している。


主体的に学習に取り組む態度

①てこの規則性についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②てこの規則性について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 10時間

第1次 てこのはたらき

1 てこのはたらきについて気づいたことを話し合う。

思考・判断・表現
てこの規則性について問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

2~3 力点や作用点の位置を変えた時の手ごたえを調べる。

知識・技能①
力を加える位置や力の大きさを変えると、てこを傾けるはたらきが変わることを理解している。〈発言分析・記述分析〉

知識・技能④

てこの規則性について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈発言分析・記録分析〉

主体的に学習に取り組む態度①
てこの規則性についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

第2次 てこの規則性

4~6 実験用てこを使って、うでの傾きを調べる。(授業の詳細)

知識・技能②
てこがつり合うときにはそれらの間に規則性があることを理解している。〈発言分析・記述分析〉

知識・技能
てこの規則性について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉

思考・判断・表現①
てこの規則性について問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

思考・判断・表現②

てこの規則性について追究するなかで、力を加える位置や力の大きさとてこのはたらきとの関係について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして、問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

第3次 てこの利用

7~8 てこのはたらきを利用した道具について調べる。

知識・技能③
身の回りには、てこの規則性を利用した道具があることを理解している。〈発言分析・記述分析〉

主体的に学習に取り組む態度②
てこの規則性について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

第4次 てこのはたらきについて、学んだことを確かめる。

9~10 学んだことを生かし、問題に挑戦する。

主体的に学習に取り組む態度②
てこの規則性について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

授業の詳細

第2次 てこの規則性

4~6 実験用てこを使って、うでの傾きを調べる。

板書例の画像
板書例(クリックして拡大)


てこの規則性について、観察、実験などを行い、力を加える位置や力の大きさとてこのはたらきとの関係について、より妥当な考えをつくりだし、表現できる。そして、力を加える位置や力の大きさを変えると、てこを傾けるはたらきが変わり、てこがつり合うときにはそれらの間に規則性があることを理解している。

①問題を見いだす

前時の学習から、実験用てこのうでの傾きについて想起して、問題を見いだしましょう。

前の時間に実験用てこのうでが水平になるときがあったね。実験用てこのうでが水平になってつり合うときは、きまりがあるのかな?

実験用てこのうでが動いている様子のイラスト

 
事前に実験用てこを指で押して、その重さを体感したり、おもりをつるしたりする活動を通して実験用てこを使えば、定量的に調べることができることに気付くことができるようにしましょう。また、「力の大きさ」→「おもりの重さ」と置き換えることをも伝えましょう。

おもりの数とおもりの位置(目盛りの数)が関係してくるのかな?


実験用てこのうでが水平になってつり合うときは、どのようなきまりがあるのだろうか。

②予想する

おもりの位置(目盛りの数)を変えると、かたむき方が変わったから、おもりの位置(目盛りの数)が関係していると思うな。

実験用てこのうでが水平のイラスト
実験用てこのうでが左に傾いているイラスト

左右のおもりの重さが同じときに水平につりあっていたから、おもりの重さが関係していると思うよ。

おもりの位置(目盛りの数)とおもりの重さに関係があると思うよ。

③解決方法を考える

調べる条件だけを変えて、それ以外の条件を同じにしよう。

左うでのおもりの位置(目盛りの数)やおもりの重さは変えずに、右うでのおもりの位置(目盛りの数)とおもりの重さを変えてみよう。

おもりの位置(目盛りの数)を変えたときと変えないときの実験用てこのうでのイラスト

おもりの位置(目盛りの数)とおもりの重さを表にするときまりが見つけやすくなるね。

おもりの位置(目盛りの数)とおもりの重さをmまとめた表のイラスト


実験の条件を意識できるようにするため、右腕につるすおもりの位置は必ず一箇所にし、複数箇所におもりを吊り下げないようにすることを伝えましょう。

④観察・実験を行う

条件を整えて、実験用てこのうでが水平になってつり合うときのきまりを調べる。


①左うでの決めた目盛りに、決めた重さのおもりをつるす。


②右うでの目盛り1におもりを何個(g)つるすと、水平になってつり合うか調べる。目盛り2,3,4と同様のことを行う。

③左うでの目盛りの数やおもりの重さを変えて、②と同じように調べる。

⑤結果の処理

力点、支点、作用点の関係を理解し、てこの規則性を結果から確認します。

 
ICT端末を活用して、各自の結果を学級全体で共有するのであれば、表計算ソフトを学級全体で共有して、各自が結果を入力するようにします。そうすると、簡単に学級全体の結果を把握することができます。

おもりの位置(目盛りの数)とおもりの重さを表計算ソフトでまとめた結果シートの例(班ごと用)
班ごとの結果シート
おもりの位置(目盛りの数)とおもりの重さを表計算ソフトでまとめた結果シートの例(全体共有用)
全体共有用の結果シート


調べる組み合わせを1つに限定せず、いろいろな組み合わせで調べた結果を基に考察できるようにすると規則性が見いだしやすくなります。

⑥結果を基に考察する

左うでの3×20と、右うでの2×30の値は同じだね。

目盛りの数が支点からのきょり、おもりの重さが力の大きさを表していたね。

 
目盛りの数が増えるとおもりの重さはどうなっているのか、表の上下の積はどうなっているかなどを問うことで、多面的に捉えることができ、妥当な考えをつくりだすことができます。

力の大きさと支点からのきょりの積が等しくなると左右のうでは……

予想通り、目盛りの数は関係していたよ。目盛りの数が2倍、3倍、6倍となったとき、おもりの重さは……


考察は予想と結果を照らし合わせながら考えることができるようにしましょう。
【考察例】
予想通り、おもりの重さや目盛りの数は関係していた。力の大きさと支点からのきょりの積が等しくなると、左右のうでは水平になってつり合う。

⑦結論を出す


実験用てこのうでが水平になってつり合うときは、左右のうでで下の関係が成り立つ。

てこを傾けるはたらきの式

⑧振り返る

てこを傾けるはたらきの大きさは、(力の大きさ)×(支点からのきょり)で決まることがわかった。

支点から力点までの長さが長いほど、また、支点から作用点までの長さが短いほど、小さな力でものを持ち上げることができる。


てこの規則性を捉え、算数科の反比例の学習と関連を図るようにしましょう

安全指導

実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。

●おもりを扱う際には、重さや大きさに気を付けるようにしましょう。大きすぎるおもりを乗せると支点が倒れる可能性があるため、子どもが安全に持てる重さにしましょう。
●てこの原理を試すために力を加える際、反動が怪我につながるため、急激に押すのではなく、ゆっくりとした力で操作するようにしましょう。
●実験器具やおもりが散らかっていると事故につながることがあるため、実験場所を整理整頓するようにしましょう。必要のない器具は片付け、実験中に足を引っ掛けないよう注意しましょう。

その他のポイント

日常生活との関連として、てこの規則性が利用されているさまざまな道具を調べる際には、「支点」、「力点、「作用点」などの言葉を用いて説明したり、どのような便利さが得られるかについて話し合ったりするなど、道具の効果とてこの規則性とを関連付けて考えられるようにしましょう。

イラスト/難波孝

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