【相談募集中】特別支援学級の担任になり、毎日の勤務がイヤでたまりません
4月から中学校の特別支援学級を担任している先生から「みん教相談室」に相談が寄せられました。生徒による不適切行動や保護者との関係性などに悩んでいて、特別支援の知識を深めたいが辞めたい気持ちが勝ってしまっているそうです。これに回答したのは兵庫県公立小学校校長で公認心理師 特別支援教育士スーパーバイザーの関田聖和先生。特別支援教育で大切にしたいポイントを挙げてアドバイスをしたその内容をシェアします。
目次
Q.特別支援について学びたい気持ちと、辞めたい気持ちで揺れています
昨年まで他県で中学校教諭として勤務しており、今年から地元のある県で採用され、4月から特別支援学級、知的学級担任になりました。通常学級の担任経験はこれまでもありましたが、特別支援学級は初めてです。慣れないながらも主任の先生にも支えられ奮闘してきました。
中2の生徒も2名在籍しており、関係を築けるよう日々過ごしていました。もともと休みがちだった1名が二学期になり過呼吸と全身けいれんの症状で学校で倒れてしまいました。救急搬送し、命に別状はなかったのですが、後日保護者に担任からのストレスのせいだと言われました。家庭(かなり複雑な家庭環境です)でも、部活動(私は顧問でなく、他の教員が関わっています)でも、その後同じ症状が2週に一度起こりました。その生徒との接し方に悩みつつも、業務を続けていました。
もう1人の中2生徒、そして他クラス(他の知的学級)中3生徒とネットとSNSで繋がっており、関わりはあるようです。もともと教室内で他者の悪口を言い合う関係です(教師に対しての悪口と悪意のあるモノマネ、あだ名を言っており、私の耳に入る度に注意はしていました)。
さらに、もう1人の中2生徒が私から愚痴を聞いたという情報(そんなこと一切言っていません)をSNS上でやりとりし、休みがちな中2生徒の保護者が再度、担任からのストレスだと怒り来校されました(管理職と主任が対応)。
明日からの勤務が嫌でたまりません。他に私の学級に在籍している中1の3名については良い関係が築けていると思います。この3名に救われながら、なんとか過ごしている状況です。ですが本音では辞めたいです。特別支援について学びたい気持ちもある(特別支援の免許取得を考えています)のですが、やればやるほど辛くなる気持ちも大きくなってしまいました。
(みか先生・30代女性)
A.すべてがうまくはいかないものです。まずは手立てを増やし、心にゆとりをもちませんか
みか先生は、県外の異動を含め、初の特別支援学級担任ということで、様々なご苦労があったことだろうと推察されます。生徒の特性などが分からないため、推測しながらの回答になりますことをお許しください。
初めにお伝えできることは、教育は一時にして出来上がるものではなく、長い期間、そしてたくさんの人、もの、出来事などが大きく影響するということです。従って、一人の教員ができることは限られているということです。アニメに出てくるような何でもできる超人のようなキャラクターに憧れることはできても、なることができないのと同じではないでしょうか。
しかし一方で、子どもの心に火をつけることができたときには、「先生、あの一言で、私の人生が決まりました」と言えるような出会いもあるんです。ある意味、保護者よりも長い時間、子どもと関わることのできる教職という仕事は、尊くてやりがいのあるものなんですよね。
何とかしたいという気持ちは大事。だけど、全部はうまくいかないのです。だから教職って面白い、ということになるのだと考えています。
専門機関から情報を得ましょう
過呼吸と全身けいれんを起こすことのある生徒さんがおられるとのことですね。こちらについては、小学校からの引き継ぎ、前年度の様子などは共有されているでしょう。もしかすると、2学期に倒れたということですので、新規の事柄かもしれません。
私なら、主治医との面談を保護者にお願いします。保護者と同席でも構わないですし、診療費などの関係(公立学校には予算化されていないことが多い)もあるので、保護者の方に了解を取って話を伺いに行くこともいいかもしれません。その際は、みか先生、管理職、特別支援教育コーディネーター、学年主任、部活動の顧問などの複数で行くことをお勧めします。そして、症状のこと、学校で避けたい事柄を教えてもらいます。
情報を得たら、校内委員会(ケース会議)を行います。その際、共有すべき教職員に参加してもらいましょう。そして情報共有後、学校、教室、行事などでできることとそうでないことをまとめ、保護者に伝えるのです。これは、この中2のときだけではないだろうし、場合によっては、高校へ引き継ぐ必要があるからです。この生徒を学校全体で指導し、見守っていることも伝えることができます。場合によっては、命にかかわります。一人で抱えきれる生徒さんではありませんから、チームを組んで支援体制を整えるのです。
特性に合った指導
障害種別が分からないので、個別の案件としては答えにくいですが、特別支援学級での指導について、見直しが必要かもしれません。年度当初、個別の指導計画を作成したことでしょう。学校によっては年度末、旧担任が新年度分を作成し、新年度に新担任が生徒の実態を見ながら長期目標(1年間)、短期目標(各学期など)を確認します。その目標に向かって、教科指導や自立活動の時間を有効に使いましょう。
その際、高い目標を定めるのではなく、ある程度できる目標を立てていくといいでしょう。とくに短期目標については、いくつあってもいいです。長期目標に向かうためには、いくつものスモールステップが必要でしょう。それぞれの課題に向かって取り組む時間に、プラスの言葉がけで取り組んでみてはいかがでしょうか。
時には、楽しい学習活動を
特別支援学級での学習指導は、「すでに個別最適な学びをしているのではないか」と考えています。だからこそ、「何を学ぶか」「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」の3つの観点は、大切です。しかし通常の学級の生徒とは「どのように学ぶか」は、同じでないことが多いように考えられます。その生徒の特性に応じた学び方になるからです。学習はちょっとしたことで、楽しさが湧きます。また知的好奇心をくすぐるような学習もあります。生徒さんの能力によっては、次のような小学校用のワークや取組などが有効な場合もあります。
- 漢字探し
- 漢字が苦手な子どもへの個別支援プリント
- 計算ランチ(全教科で応用可能)
- カードづくり
- SSTフレンドシップアドベンチャー
- アドベンチャー学習
- インプロゲーム
- 5分間でOK!国語・漢字辞典を使った「楽習」ゲーム
- 言葉遊びで、「楽習」授業
ときに教科学習だけではなく、以下の記事を参考に自立活動に組み込んではいかがでしょうか。
自立活動6区分27項目の中の、「人間関係の形成」の中で、取り組むことができそうです。
岩下修先生が言われる「AさせたいならBといえ」という言葉があります。私は特別支援教育においては、「Aさせたいなら、BCDEの手立てをもて」と考えています。少しずつ手立てを増やすことで、ゆとりももつことができます。急な改善はなかなか厳しいと思いますが、まずは、引き出しの中身を増やすことから始めてみましょう。
特別支援教育を専門的に学びたいと考えられているのでしたら、下記も参考にしてください。
【相談募集中】特別支援学級の担任は専門の先生がやるべきでは?
みか先生、ともに最新学習歴を更新しましょう!
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。