小3国語科「わたしの町のよいところ」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小3国語科 「わたしの町のよいところ」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立平安小学校・田部井佳恋
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、町のよいところを紹介する文章を書き、感想や意見を伝え合い、自分の文章のよいところを見つける活動をします。
最終的に目指したいのは、自分の文章のよいところを見つける姿です。そのために、どのような観点で感想を伝え合うのかをはっきりさせることが必要です。感想を伝える観点としては、紹介する文章の「内容」と「書き方」の両面があるとよいでしょう。
3年生の学習「書くことを考えるときは」では、文章全体の組み立てや説明的文章を書く際に図を使って書くことを決めるスキルを学び、「食べ物のひみつを教えます」では、より分かりやすくなる文章構成や事例の順序について学習しました。
それらの学習を振り返りながら、「内容」と「書き方」の観点をもって互いの文章のよいところを見つけ合い、肯定的な感想、書き手の次につながるような感想を交流できるとよいでしょう。
友達からよい点や分かりやすいところを伝えてもらうことで、自分の文章に自信をもつとともに、そのよさを今後の書くことにいかしていこうとする姿勢を育みます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元の言語活動として「自分の住む町にある、おすすめの場所やものを紹介する文章を書く活動」を設定します。
何を書いたらよいのか分からず、活動が進まない児童には、まず、自分たちが住む町の好きな場所やおすすめのものを多く挙げることから始めるとよいでしょう。そのために、社会科や総合的な学習の時間などの他教科と関連させて学習を進めるとよいでしょう。また、これまでの学習経験を振り返りながら単元を進めることは、身に付いた力を実感する機会にもなります。
本単元は「書くこと」の指導事項の中でも、特に「共有」をメインに扱っていきます。
自分の文章のよいところを見つけるためには、紹介する文章の「内容」と「書き方」の観点を一人一人がしっかり理解することが必要です。様々な交流形態で活動を行うとよいでしょう。ここでは学習の段階に応じて、三つの活動例を紹介します。
① 紹介するものを決定し、文章の題材を決める段階では、「グループ活動」を推奨します。
町のよいところを個人で考えたのち、友達と交流することで、他者の出したアイデアの中に自分にとっての答えを見つける経験ができます。そのために、友達との意見交流の後で自分が紹介するものを変えてもよいと伝えるとよいでしょう。
グループ活動は、同じ場所やものを選んだ児童同士でよいところを出し合ったり、全く違う場所を選んだ児童同士でそれぞれのよさを語ったり、一人一人の課題に合わせて複数のグループで行うとよいでしょう。
② 紹介する文章を書くために組み立てメモを書く段階では、「学級全体での活動」を推奨します。
メモを作ることそれ自体が目的なのではなく、あくまで文章を書くための準備であることを児童と一緒に確認しましょう。
また、この段階で目的意識・相手意識を共有することも必要です。紹介する相手を友達や保護者だけに限定せず、学校や地域の掲示板に掲示して地域の人に見てもらうのもよいでしょう。
同じ町に住んでいてもよいと思うところが違うことから、「よいと思うところの共有の必要性」に気付くことができます。
③ 組み立てメモを基に文章を書く段階では、「個人の活動」を推奨します。
②の「学級全体での活動」で目的意識・相手意識がしっかり共有できていれば、その後の「個人の活動」において、自分でワークシートや学習進度を選択したり、ICT端末を活用して効率的に学習を進めたりすることができます。
以上、三つの活動例を紹介しましたが、どの段階でも必要に応じて教師が選択することが大切です。児童の進度に合わせて使い分けたり、組み合わせたりするとよいでしょう。
文章を書いた後の「共有」の場面では、「ペア・グループ活動」がメインになります。
その際に、できるだけ多くの児童同士で様々な交流ができるよう、グループを何度か組み変えるなど、交流の形態を工夫するとよいでしょう。友達と相互に評価し合うことの意義を再確認できる場にしましょう。
4. 指導のアイデア
児童が主体的に学習活動を行えるように、「図を使って書く内容を決定していく」手立てが大切です。本単元では、「ウェビングマップ」を使って学習をしていきます。
ウェビングマップは、「書くこと」の「題材設定―情報の収集―内容の検討」において、「自分の考えを広げること」と「自分の考えや言葉を可視化すること」に活用できます。
また、一つのテーマから想起される言葉・出来事・心情・写真などを思いつくままに書き込むことができます。それらの情報を可視化した状態でつなげ、まとめることができ、自分の考えを広げてから整理してまとめることに役立ちます。書き方も分かりやすく、活用できる範囲も大きいです。
また、「書くことを考えるときは」の学習でも、自分の考えを広げたり似ている情報をまとめたりするためにウェビングマップ活用しています。既習事項をいかして効率よく学習することは、時間短縮につながるだけでなく、身に付いた力を児童が実感できる機会にもなります。
【 ウェビングマップの例 】
5. 単元の展開(10時間扱い)
単元名: 3-1から〇〇町のみなさんへ。しょうかいしよう、〇〇町のよいところ
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
①② 自分の住む町には、どんな場所やものがあるかを思い出し、紹介したいものを決めよう。
・第二次(3時、4時、5時、6時、7時、8時)
③④ 紹介したいものやその理由を、図を使って詳しく書き出し、書きたいことを決めよう。〈 端末活用(1)〉
⑤⑥ 町のよいところを紹介する文章の組み立てを考えよう。〈 端末活用(2)〉
⑦⑧ 読む人に分かりやすくなるような書き方に気をつけて、紹介する文章を書こう。〈 端末活用(3)〉
・第三次(9時、10時)
⑨ 紹介する文章を友達と読み合い、感想を伝え合おう。〈 端末活用(4)〉
⑩ 友達にもらった感想を振り返り、学習のまとめをすることで、身に付いた力を確かめよう。
全時間の板書例と指導アイデア
1・2時間目では、紹介する文章に書く「町のよいところ見つけ」をし、書くために必要な学習計画を立てます。
「町のよいところ見つけ」では、町の地図やウェビングマップを使いながら、よいところを整理していきます。
● 主体的な学びのために
導入では、学校周辺の地図を用意して、これまでの町探検や社会科の学習から「町のよいところ」を見つける活動をします。自分が住んでいる町のどんなところが好きか、それは自分にとってどんなものかを考えます。
自分の住んでいる町にはよいところがたくさんあるということを実感させるため、できるだけ多く挙げさせるとよいでしょう。地図上に挙げた場所や物を「公園」「店」「児童館」などを、仲間分けしてウェビングマップに整理し、まとめましょう。
なかなか思いつかない児童には、友達の意見を参考にして考えてもよいことを伝えましょう。
【 ウェビングマップの例 】
この活動を通して、町のよいところを知らない人に知ってほしいという思いをもたせます。
自分の経験などから題材を決め、実感をもって書くことの活動に入っていくことで、児童の主体性を育むことができるでしょう。
〈 学級で「町のよいところ」を出し合う様子 〉
この町にはどんなところがありますか。
公園がたくさんあります。
そうですね。学校の近くには公園が三つありますね。それぞれみなさんにとって、どんなところですか。
イラスト/横井智美