教師みんなが笑顔になる!校内研アップデート#02|校内研究を「自分事」に変える“グループ研究”
校内研究が重荷になっている先生方必見! かつてない形式の校内研究会「北フェス」が話題となった埼玉県公立小学校の校内研担当・花岡隼佑先生が、従来の固定観念を覆す新しい校内研のあり方を提案します。「校内研=つまらない、重苦しい」というイメージを一新し、教師全員が笑顔になれる楽しい時間へと変える具体的な方法を、わかりやすく解説。トップダウンからフラットな対話へ、義務感から自発的な参加へと、校内研の体質改善のポイントを詳しく紹介します。管理職の先生はもちろん、若手からベテランまで、すべての教師が明日からすぐに実践できるアイデアが満載です。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・花岡隼佑
目次
校内研究を「自分事」に変える“グループ研究”のすすめ
埼玉県の公立小学校で勤務している花岡隼佑(はなおか・しゅんすけ)です。
さて、連載2回目となった今回のテーマは、「校内研究を自分事に変える“グループ研究”」です。
「え……自分の学校で行っている研究なのに、自分事じゃないことなんてあるの?」
そんな疑問を抱いた方もいると思います。その気持ち、よーくわかります。実は、この問いにこそ、昨今の校内研究の課題がびっしり詰まっているのです。
Before:全員同じの『一律一斉型研究』
はじめに、一般的な学校で行われる初年度の校内研究の流れをまとめます。
研究の流れ(初年度)
①研究主題の決定
②目指す児童像の決定
③仮説の決定
④主題にせまる手だての決定
⑤研究授業
⑥事後反省会
⑦年間のまとめ(研究紀要の作成)
多少の前後はあると思いますが、基本的にはこのような流れで進んでいくと思います。
さて、研究の方向性を決定づける上で超重要事項である①〜④(研究主題〜手立て)ですが、皆さんの学校ではどのようなプロセスを経て決定しているでしょうか。
「もちろん職員全員で行う研究だから、全員で話し合って決めています!」
と言いたいところだと思いますが、実情は研究推進委員会(以下、研推)に所属する一部の職員で決定することが多いのではないでしょうか。場合によっては、管理職の一存で決まるところもあるようですが……。
奇跡的に職員全員で話し合いをしました、という学校であっても、初任からベテランまで、専科も養護教諭も含めた全ての職員が平等に考えを述べるプロセスを経て決まった学校は、ごく稀のように感じます。
そうはいっても、①〜④の全てを学級会のような会議で決めるのは、時間確保の観点から現実的ではありません。ですが、研究の全てが“誰かが決めたもの”である限り、たとえ自校で行うと言えど研究を自分事として捉えることは困難を極めます。それは、結果的に「主任とその周りの先生だけ」が頑張るというモチベーションギャップへとつながるのです。
①〜③は研究の根幹となるため、学校の実態を冷静に見極めて決定する必要があります。そのため、研推をはじめとした代表者間でアウトラインを作るというのは致し方がない部分もあります(ただ、そこに至るまでに職員の思いを吸い上げる必要性はあります)。
しかし、④の「主題にせまるための手立て」はどうでしょう。
仮に、研究が「登山」、山頂が「研究主題」だとすると、そこに至るまでの道のりは1つでしょうか? 主題が仮に「主体的に活動する児童の育成」であれば、「体育」といった教科指導ルートからでも到達できるかもしれませんし、「ICT」といったツール活用からでも到達できるかもしれません。もしくは、宿題や学級経営といった授業外のルートでもオッケーかもしれません。
つまり、行き先が明確であれば、そこに至るまでのルート=手立て(手段)は複数あってもよいはずなのです。研究の手立ては、職員の多様な考えを唯一反映しやすいものです。そして、研究を自分事にするための最大のポイントでもあります。
しかし、これまで主流だったのは「みなさん、全校で学級活動を充実させていきましょう! ◯◯小の学級会スタンダードを作りましたよ!」という一律一斉型の研究スタイルでした。同じ歩調で研究を進めることができる一方で、専科や養護教諭はこの時点で研究が自分事ではなくなります。だって、自分が直接担当しない教科・領域が研究の真ん中に置かれるわけですから……。
そこで提案したいのが、④の「主題にせまるための手立て」だけでも自分の興味関心に基づいて選んでもらいましょう!という理念のもとで行っている「グループ研究」です。
After:一人一人の学びたいことが学べる「個別最適なグループ研究」
グループ研究とは、「一人一人が自分の興味関心に従って所属したいグループを選び、研究を進める」というモチベーションベースの手法です。いわば、主題にせまるための手立てを自己選択する方法と言えます。
この手法の最大のメリットは、「研究=押し付けられるもの」という堅苦しい価値観から脱却できる可能性があることです。研究の入り口を自分で選択するので、多くの職員が「全国平均以上のモチベーション」で研究をスタートさせることができます。
また、自然と興味関心の近い職員がグループのメンバーになるので、和気あいあいとした空気感が生まれ、同僚性を高めることにもつながります。「職員室開発」という文脈で考えても、まさにグループ研究はうってつけの研究方法だと言えます。
一例として、本校で行っているグループ研究の流れをご紹介します。
グループ研究の流れ
①主題達成のための個人研究を一人一人が行う
②研究レポートを持ち寄り、実践シェア会を開く
③実践をもとに、「主題達成のために必要となるポイント」を抽象化してピックアップする
④挙げられたポイントをもとにグループを用意し、一人ひとりが自身の興味関心に近いグループを選んで所属する
⑤自分が解決したい問題(リサーチクエスチョン)を決め、その解決に向けて日々実践を進める
⑥グループ研究の時間に、メンバーから実践に対する批評・支援をもらう
このように、グループ研究は主題達成のための手立てを1つに絞るのではなく、いつでも「一人一人の興味・関心」を真ん中に据える方法です。
また、グループ研究と謳っているものの、一人一人が本当に解決したい問題(リサーチクエスチョン)を抱きながら研究を進めるシステムも整えています。こうすることで、研究を一層自分事にする効果があります。
一方で、「個人研究と何が違うの?」という質問を受けることもあります。私が考える個人研究との違いは、以下の2点です。
①グループメンバーからの批評・支援を通して、自分の実践がリフレーミングされ、新たな研究の視点が見つかる
②グループ内の成果を抽象化し、主題へとせまるヒントを得ることができる
一人でやりたいことを好き勝手に研究するわけではなく、地に足をつけ、あくまでも学校課題の解決へ向けて研究を進めていくことになります。
みなさんも、職員の多様性を活かした研究方法へシフトしてみませんか??
次回は、実践から仮説を生み出す「仮説生成型」の研究について取り上げます。
花岡隼佑(はなおか・しゅんすけ)
埼玉県公立小学校教諭。1989年、長野県生まれ。埼玉大学大学院教育学研究科を卒業。現在は蕨市立北小学校に勤務。校内では、研究担当として新たな校内研究の形を推進するとともに、学力向上推進担当としてICTや生成AIの普及に努める。教育コミュニティ「EDUBASE」のクルー。共著に『ごく普通の公立小学校が、校内研究の常識を変えてみた』(明治図書出版)がある。