学校保健安全法で、何が変わった? 学校保健と感染対策・感染症予防~シリーズ「実践教育法規」~

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敬和学園大学人文学部准教授

江口和美

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第19回は「学校保健と感染対策・感染症予防」について。学校保健安全法が制定された経緯とその内容や、感染症による臨時休業の権限などについて解説します。

執筆/江口 和美(敬和学園大学人文学部准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#19

保健管理と保健教育

学校保健とは、児童生徒等の健康の保持増進、学校教育活動に必要な健康や安全への配慮、健康の保持増進を図ることができる能力の育成など、学校における保健管理と保健教育であるとされています。学校保健の中核を担う法は学校保健安全法で、2008年6月に旧学校保健法の改正で学校保健安全法となったものです。2001年の池田小学校事件以降、2006年に国会で議員立法の学校安全対策基本法案が提出されるなど児童生徒の安全確保に対する関心が高まり、安全対策の規定を追加し、学校保健安全法となりました。

旧法は1958年に制定され、施行令・施行規則は改正されてきましたが、法改正は1978年のみで、健康診断や伝染病による出席停止、学校、学級の臨時休業等は定められていましたが、学校の現状を反映していない部分がありました。そのため、学校での取り組みを踏まえ、現状に対応するものへと改正されました。

大きな改正点は以下の5つがあげられます。

①規定がなかった保健指導を法律上明記(学校保健安全法第9条)
②地域の医療機関等との関係は連絡するを連携を図るに変更(第10条)
③学校保健計画の策定実施を新たに規定(第5条)
④旧法では雑則であった保健室の設置を条文化(第7条)
⑤出席停止の項で旧法の伝染病を感染症に変更(第19条)。

なお、学校保健安全法の学校保健に関する主たる内容は以下の5つです。

①学校保健計画の策定と実施(第5条)
②文部科学大臣が定める学校環境衛生基準に照らした管理、適正を欠いた場合には遅滞なく必要な措置を講じること(第6条)
③健康診断の実施(第11~17条)
④保健指導等(第7~9条)
⑤感染症の予防(第19~21条)

学校保健安全法で整備された主たる規定

出席停止と臨時休業

校長は、感染症にかかっている、もしくは疑いがある、または、かかるおそれがある児童生徒等に関して政令で定めるところにより出席停止させることができます(第19条)。出席停止の指示は児童生徒等の保護者(高校は生徒自身)に対して行い、その旨を設置者に報告します(施行令第6・7条、施行規則第19・20条)。また、設置者は対象の児童生徒等の校長が認めた場合、保健所に連絡をします(第18条・施行令第5条)。

なお、臨時休業に関する権限は設置者が有します(第20条)が、その事務を校長に委任する(第31条)ことができます。休業の決定に際して留意すべきは、事前に保健所に連絡すること、学校医その他の医師の意見を聞くこと(第23条)があげられています。ここでいう感染症の主たるものは、いわゆる学校病(第24条・施行令第8条)ではなく、学校教育活動を通じ、学校での感染が広まる可能性があるもの、すなわち学校感染症(施行規則第18条)です。感染症については『学校において予防すべき感染症の解説』(日本学校保健会)を参照してください。

新型コロナウイルス対応

新型コロナウイルス(COVID-19)は、当初新種ゆえに、感染症予防法で対応が必要な感染症とされていませんでした。そのため感染症対応に必要な関連法の適用を可能にするため、2020年2月に「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」(令和2年政令第11号)で感染症に指定されました。その後、2021年2月施行の改正感染症予防法に、新型コロナウイルス等感染症として明示されました。

政令で感染症に指定されて以降、学校の一斉休校に始まり、対策に追われた3年間でした。2023年5月8日からは、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザと同じ感染症5類に変更されました。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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