子供の家庭環境に配慮した「二分の一成人式」指導と演出

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四年生の1、2月に行われることが多い「二分の一成人式」。さまざまな家庭環境に配慮しながら、すべての子供が10年間の自分の歩みを確認し、明日の成長につなげるための「二分の一成人式」の指導のコツと演出法を紹介します。

監修/宮城県石巻市立小学校教諭・藤坂雄一、東京都調布市立小学校指導教諭・小島大樹、奈良県奈良市立小学校教諭・小野領一

二分の一成人式
写真AC

準備の指導とアイディアと留意点

準備の指導とアイディアと留意点

群読や合唱曲の内容を子供たちに選択させる

教師が主導して、無理に保護者の感動をあおるような「二分の一成人式」を実施しても意味がないと考えています。子供にとってもなんらかの学びがあり、かつ、子供も保護者も含め、誰も悲しい思いをしない「二分の一成人式」にするということをまず教師がきちんと意識することが大切です。さらに、可能な限り準備段階から子供たちの思いが反映する形で進めていきたいと考えています。

群読や合唱曲の内容を決めるときも、教師がトップダウンで下ろすのではなく、子供たちからアンケートをとって決めるようにします。また、学級の状況によって子供たち同士で決めることが難しい場合もあるかもしれませんが、その際はいくつか候補をリストアップして子供たちに選択させてもよいでしょう。群読を行う際には、群読の役割分担は必ず全員に当たるようにします。

(奈良県 小野領一)

聞き手を意識した合唱や合奏の指導を

準備段階で、「この成人式というイベントの主体が誰か」ということを子供たちと共有しておきましょう。そうでないと、先生にやらされている感が強くなってしまいます。

そのうえで、子供たちに「ホスピタリティ」を学ばせることも大切にしたいですね。合唱や合奏を指導する際にも、聞き手を意識して表現させるようにしたいものです。相手意識をもたせることは、表現の工夫にもつながっていきます。

(宮城県 藤坂雄一)

作文や図工の作品を製本してお土産に

ちょっと手間がかかってしまいますが、国語科の学習で書いた作文を文集にしたり、図工科の版画で版画集を作ったりすると、子供も保護者も喜びます。最近はあまり文集を作らないのかもしれませんが、中学年以降の子供たちは、作文や作品をきちんと製本すると友達の作品を真剣に読んだり見たりして、感想を交流するようになります。きっと素敵なお土産になると思います。

(宮城県 藤坂雄一)

保護者への招待状を子供たちに書かせる

各家庭によって準備物の有無のばらつきが出てしまうことを防ぐため、保護者に準備していただくものはあえて用意しません。

保護者へのお知らせは、子供に招待状を書かせます。招待状には、子供に「お家の人へのひと言」を書かせます。ただし、「保護者への感謝」が強要されないように、各家庭の事情を慎重に配慮して書かせましょう。

(小野領一)

当日の演出のアイディア

当日の演出のアイディア

未来を親子で語り合うワークショップ型の式

これからどんなふうに生きていきたいのか、自分は今後どのような社会をつくっていきたいのかということを、親子で話し合うワークショップ形式の会もおすすめです。将来の夢を発表すると言っても、今は存在しない職業があるかもしれません。「将来はどんな町になるといいかな。そのために自分たちにできることは何だろう」など、普段自宅では話さないような未来のことを親子で話し合うワークショップは大変盛り上がります。ワークショップはホワイトボードを用意し、子供たちがファシリテートしながら、子供主体で進めていきます。「我が子がいろいろと考えているのに驚きました」「しっかりと自分の意見を言ったり、話合いを進めたりする姿に感心しました」など、保護者からは子供の成長を喜ぶコメントをもらいました。

(藤坂雄一)

手作りの掲示物で盛り上げ「成長リボン」をプレゼント

子供たちの人数によって、体育館を使用するのか、視聴覚室などを使用するのかが変わってくると思いますが、どの場所であっても子供たちが手作りした飾りをたくさん貼ります。

子供たちには、入学式や卒業式と同じように整然と入退場させるとぐっと雰囲気が引き締まります。入退場の音楽も、子供たちにアンケートをとって考えさせてもよいでしょう。

さらに、保護者へのプレゼントとして、一年生から今までに伸びた身長分の長さのリボンを渡します。出生からの身長差にすると、家庭によっては母子手帳の紛失など、家庭の諸事情などでばらつきが生まれてしまう可能性があるので避けましょう。

(奈良県 小野領一)

過去・今・未来への流れを骨子にしたプログラム

今までの「二分の一成人式」は保護者への感謝がメインテーマになることが多かったのではないでしょうか。しかし、保護者への感謝がメインテーマだと、一部の保護者と子供たちを辛い気持ちにさせてしまうことがあります。そこで、「成長」をテーマにして、「過去↓今↓未来」を骨子として二分の一成人式を企画し、以下のようなプログラム内容を考えました。(※司会は子供たちが担当)

プログラム例
過去
小学校入学時の写真をスライドショーにしてムービーで流す。(写真は基本、小学時代のもののみ)
過去
小学校低学年で勉強したことを披露。(スイミーの群読や低学年で学習した合唱曲など)

子供たちがそれぞれ得意技を披露。

一年生から今までに伸びた身長分の長さのリボンを保護者に渡す。
未来
「新成人の自分へ」の手紙と今の自分が大切にしているものを一つ、それぞれタイムカプセルに入れて校庭に埋める。

(小野領一)

過去・今・未来への流れを骨子にしたプログラム

子供主体の活動を促す声かけの工夫

二分の一成人式は、総合的な学習の時間や音楽の時間として設定している学校が多いかと思います。しかし、その内実は総合的な学習の時間のねらいには沿わず、先生がすべて計画から練習まで仕切ってしまっているのではないでしょうか。「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること」をねらいとするならば、次のような声かけをし、子供主体で企画させるとよいでしょう。

先生の声かけの例
①一年生のときと比べて、どんなことができるようになったかな?(速く走れるようになった。楽器ができるようになったなど)
②今みんなちょうど成人式の半分の年齢になったんだよ。20歳になったら成人のお祝いをするんだよ。
③せっかくだから、何か会を企画しよう! 学校の先生方にも、君たちがこんなに成長したってことを発表しようよ!
④どんなことをしたら、先生方にこんなに成長したってわかるかな?(子供たちの意見を募る)
⑤それを発表するためには、どんな計画を立てるといいかな?

④で子供たちの意見をまとめることが難しいときは、いくつか例を示すとよいでしょう。例示をすれば、総合的な学習の時間と他教科をリンクして進めることもできます。

例えば、四年生の保健の単元「体の発育と健康」の時間とリンクさせた発表をすることもできるでしょう。その場合は、「年齢とともに発育していったね。成長したね」「これからも発育していくんだね」などと声かけをし、自分自身の成長を自覚させるようにしましょう。

発表の内容は一人ひとり違ってもOK。当日発表できないようなものは、事前にビデオを撮っておくとよいでしょう。

(東京都 小島大樹)

当日の留意点

指導&準備時間を確認し学校や保護者と共有

行事のために必要となる指導時間をどのように確保するのかを考えることも重要です。三学期になると、インフルエンザの流行による学級閉鎖や、六年生を祝う会や卒業式の練習などで体育館の確保も難しくなると思います。いかに効率的に指導していくのかという視点をもたないと、指導者も子供たちも疲弊してしまい、ついついイライラした空気が流れてしまいます。

カリキュラム・マネジメントの視点で、教科・領域、または総合的な学習の時間でどれぐらいの時間を指導にあてることができるのか確認してみましょう。また、無理なく準備ができるよう、冬休みのうちに学年の先生方と相談しておき、さらに学校全体で情報共有をしておく必要があります。

行事を学習参観日にあてる場合には、同じ日に他の学年でも保護者を巻き込んだイベントを計画しているかもしれないということを考慮します。兄弟姉妹がいる保護者は限られた時間の中で、我が子の教室にそれぞれ足を運ぶことになります。事前に計画が立てられるよう、プログラムや個々の子供たちがいつ発表するのか、おおよその時間を学年通信などでお知らせしておくなど気配りも必要です。

(藤坂雄一)

撮影を希望する保護者には企画趣旨を伝え慎重に対応

当日、写真やビデオを撮りたいという保護者は必ず出てきます。保護者へは、あくまでも今回の行事は学校教育の授業であることと、子供の成長を祝う時間であることをはっきりと伝える必要があります。子供の成長を祝うはずなのに、「自分の子供が活躍しているかどうか」に目が向いてしまい、ビデオをうまく撮れなかったなどの苦情が出てしまうことがあるからです。

保護者は子供のがんばりを見たらうれしいものです。ですから、子供たちが自分たちで企画し、運営していることの尊さをたくさん保護者に伝えるようにしましょう。

(小島大樹)

撮影を希望する保護者には企画趣旨を伝え慎重に対応

将来なりたい職業を発表させるときの留意点

全体の前で、将来の夢を発表するという企画でのこと。突然泣き出してしまった子供がいました。本当は「ジャニーズに入りたい」という夢を発表しようと思っていたそうですが、前日に「何を発表するの?」と保護者に尋ねられ、ジャニーズのことを話すと「笑われるから別なものにしなさい」と言われたそうです。本人は本番になり、本当の気持ちを発表すべきか、それともみんなと同じような職業でごまかそうか悩んでしまったとのこと。なりたい職業を考えさせるうえでは、そのプロセスも、ていねいに教えていく必要があるのだと思いました。将来の夢を公にすることに抵抗があるケースがあることも考えておく必要があるかもしれません。

取材・文/出浦文絵 イラスト/宇和島太郎

『教育技術 小三小四』2020年1月号より

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