よりよい所見の記入文例作成の極意〔2-3学期・後期〕 

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よりよい所見を作成するにはどのようなことが大切でしょうか。2学期の所見作成のポイント、個人内評価を重視した所見、子供との評価のズレを修正するポイント、年度末最後の所見の手順など、しっかりとした所見を作成するための極意を紹介します。子供のよさを認め、子供の意欲を高める所見を作成するヒントにしてください。

執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
 城西国際大学兼任講師
 日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章

所見扉イラスト

2学期の所見作成上のポイント

2学期の所見は1学期とどのように異なるのでしょうか。

1学期、2学期ともに所見を作成する際のポイントは、子供のよさを見取り、個人内評価を重視するということです。しかし、2学期の所見は1学期とは異なる点があります。

それは、2学期は1学期の所見を踏まえて取り上げる項目や内容を見直すということです。特に、1学期と異なる所見を書くためには、次のような視点をもつことが求められます。

1学期と異なる内容項目(例)

○1学期は、算数の様子を中心に取り上げたので、2学期は、体育の努力を取り上げよう。   
○1学期は、掃除の努力を取り上げたので、2学期は係活動での活躍の様子を取り上げよう。 

1学期からの伸びや課題解決の状況(例)

○1学期から課題としていた漢字の学習に根気強く取り組んできたことを取り上げよう。    
○2学期後半から自信をもって取り組んできたリコーダーの演奏について取り上げよう。  

1学期からの伸びをとらえた所見

1学期からの伸びは、どのように取り上げればよいのでしょうか。

2学期は、1学期からの個人としての伸びを取り上げて所見を作成します。例えば、次のような視点で作成することが考えられます。

➀数値として取り上げる視点

1学期からの伸びを数値として明らかにできる項目は、積極的に所見の中に盛り込んで取り上げていくことが効果的です。

(例) 縄跳びで二重跳びの回数が今までより10回も増えました。また、読書でも月に読む本の冊数が2冊も増えていることに成長を感じます。

②数値として取り上げられない視点

学習や生活への関心や意欲は、なかなか数値として表しにくいものです。しかし、数値に表れなくても、子供一人一人の努力をとらえていくことが学級担任には求められます。

(例) 真剣に授業に取り組んできたことは、日々のノートを見ても分かります。
1人でも黙々と掃除に取り組む姿が見られ、その責任感の強さに感心しました。

伸びを取り上げることは、個人内評価を重視する大切な視点です。

個人内評価を重視した所見

個人内評価を重視するには、どのような手だてがあるのでしょうか。

個人内評価には、次のように2つの側面があります。所見を作成する意図により、個に応じて所見に活用していくことが大切です。

横断面的個人内評価

個人のいろいろな特性を相互に比較して、本人の長所、短所を評価する評価方法です。特に、個性の理解と伸長に役立ちます。

(例) 理科の実験では仮説を立て、自分の考えを発表する姿に友達から拍手が送られました。

縦断面的個人内評価

本人の前の成績、状況と比較して、進歩の様子を評価する評価方法です。特に、努力の成果を取り上げるのに効果的です。

(例)リコーダーの練習によく努力し、タンギングのしっかりした演奏を堂々と披露する姿が印象的でした。

個人内評価を重視することは、所見を作成する際の基盤となります。

子供との評価のズレを調整する所見

子供と教師の評価のズレを調整するにはどうしたらよいのでしょうか。 

教師にとってよいと思う所見を作成しても、その内容が子供や保護者にとって納得のいかないものであってはよい所見とは言えません。

まずは、子供の自己評価を把握し、教師の評価とのズレがあれば、それを調整するための手だてを講じることが大切です。

① 子供の自己評価の把握
(例)私は、今学期は何よりも漢字練習によく挑戦したと思います。また、縦割り活動で1年生と仲良くして楽しく活動できました。⇒漢字の努力、下学年との交流も所見に取り上げたいな……。

② 教師の評価と照合
(例)私は、2学期は漢字を頑張りました。⇒確かに漢字はよく努力していたな。体育の努力とともに、漢字のことも少し所見に入れておくといいかな……。

③ 子供と教師の評価のズレの調整
(例)私は朝自習でたくさんの読書に挑戦しました。⇒朝自習での努力は把握できなかったな。他にも気付いていないことはないかな……。

教師が評価する際は、子供自身が努力してきたと感じていることを把握しておくことが大切です。

文章表記の基礎基本を踏まえた所見

所見を作成する際の対象が混乱してしまう場合には、どうしたらよいのでしょうか。

通知表の所見は、よりよい子供の成長を期すために、学校と保護者が同一歩調で指導していくことを確認し合うことを目的とした「通信」として作成される準公簿とも言えるものです。

あくまでも、所見を作成する対象は保護者です。作成に当たっては、子供が努力したと感じたことと教師の評価に大きなズレがないようにすることが大切です。特に、所見表記上、次のような表現には十分注意することが求められます。

(例)「持久走大会で日々の練習の成果が出て、目標であった学年3位の成績を得ましたね。この成果を生かし、これからも日々の努力を積み重ねていきましょう。

この文章は、保護者向けではなく、子供を対象としたものになっています。所見を伝える相手は、保護者であることを再確認して所見を作成することが大切です。

よい所見を作成するためには、教師が所見として表現する文章について、どのような視点をもっているかが問われます。所見をよりよくするためには、次のような視点をもつことが求められます。

年度末最後の所見作成の意義

年度末最後の所見は、1、2学期の所見と、どのような点が異なるのでしょうか。

3学期の所見は、基本的には1、2学期と同様に、3学期という期間の学習や生活の様子を評価して記載します。しかし、年度末最後の所見であることを考えると、3学期だけでなく1年間の成長の様子を見取りながら評価することも大切な視点です。

現在の所見は、パソコンで作成し、プリントアウトして印字された活字で作成する学校が多くなりました。また、1枚の用紙で年間を通じて作成する所見だけではなく、学期ごとの評価を別々の用紙に作成する学校もあります。

しかし、6年生の学年末の所見であれば、小学校生活最後の総まとめとなることは全ての学校に共通することです。小学校生活最後の所見を見て、保護者も子供も1年間(6年間)の成長を実感できるような内容にすることが求められます。

年度末最後の所見作成の手順

年度末最後の所見を作成する際に、どのような手順で行えばよいのでしょうか。

前述のように、特に6年生の3学期の所見には、様々な意義があります。小学校生活最後の所見として、充実した内容を作成する際の手順を取り上げます。

➀3学期の成長の様子を他の教師等からも情報を得て、多面的に取り上げます。
②1、2学期に記載した所見の内容を読み直し、多様な視点から子供のよさを取り上げるようにします。
③ 3学期に取り上げたい内容と、1年間の成長として取り上げたい内容を吟味します。
④子供の自己評価を参考にし、教師の取り上げたい内容を選択するときの参考にします。
⑤今後の中学校生活への期待を込めた言葉を取り上げます。

構成/浅原孝子 イラスト/池 和子(イラストメーカーズ)

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