小4特別活動 「よりよい給食のマナー」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小4特別活動の指導アイデアです。11月は、<学級活動(2)エ「よりよい給食のマナー」>の実践例を紹介します。
上学年となり、自分たちで声をかけ合い、当番のみんなで協力しながら給食準備や後片付けを行うことができるようになってきた子供たち。コロナ禍での食事中の会話の制限も緩和され、友達との会話も楽しみながら給食時間を過ごしています。しかし、慣れによって準備や後片付けの作業が適当になってしまったり、会話に夢中になり食事中の態度が悪くなってしまったりという様子が見受けられるようになりました。そこで今回は、これまでの自分たちの給食時間の行動を振り返り、課題をつかみ、自分に合った解決方法を見付け、これからよりよい給食時間を過ごすことができることを目指した実践を紹介します。
執筆/青森県公立小学校教諭・中平珠莉
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
青森県公立小学校校長・河村雅庸
目次
年間執筆計画
4月 学級活動(3) ア 4年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ 歯ぴかぴか大作戦
7月 学級活動(3) ウ 見直そう自分たちの読書
9月 学級活動(1) オリジナルチャレンジ集会をしよう
10月 学級活動(1) 4年生仲良し集会をしよう
11月 学級活動(2) エ よりよい給食のマナー
12月 学級活動(1) 大そうじ大作戦
1月 学級活動(1) 2年生と笑顔いっぱい集会をしよう
2月 学級活動(3) ア 10歳の節目
3月 学級活動(1) 4年生がんばったね集会をしよう
学級活動(2)及び本題材について
学級活動(2)は、子供たち一人一人が現在の自分の課題を見つめ、自己の成長のために、話合いを通して、自分に合った具体的な解決方法や目標を意思決定し、その実現に向けて実践していく時間です。確かな意思決定と実践との積み重ねにより、自発的・主体的に実行する力、自己指導能力を育てることができます。
本時の題材である「よりよい給食のマナー」は、学級活動(2)エ「食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成」に関わる題材で、自分の食生活を見直し、自ら改善して、生涯にわたって望ましい食習慣を形成し、食事を通してよりよい人間関係や社交性が育まれるようにするものです。よりよい給食のマナーを身に付けるための課題に自ら気付き、解決方法を学級で話し合います。そして、自分に合った具体的な解決方法を、学級での話合いを生かして意思決定していくことが活動の中心となります。
また、子供一人一人が課題を自分事として捉え、自己の問題の解決方法などについて意思決定し、強い意志をもって粘り強く実践できるよう、本時では「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つの段階の学習過程で進めます。
事前の指導
① 事前アンケート
事前アンケートでは、毎日の給食時間の自分の行動を、「準備」「食事中」「後片付け」の3つの視点で振り返ります。このアンケートの集計結果は本時の導入時に活用し、子供たちが課題意識をもって授業に臨むことができるようにします。
【事前アンケートの例】
② 動画や写真の撮影
本時で、子供の思考が深まったり、多様な考えに触れたりできるような資料を準備することも考えられます。
本実践では、「さぐる」の場面で提示する、普段の給食時間の動画や写真を撮影しました。自分では気付くことができなかった行動を客観的に見ることで、自分の課題に気付くことができるようにします。また、事前アンケートで、自分の毎日の行動を振り返ることが難しかった子供たちにとっても、課題意識をもつことの支援になります。
動画や写真を提示する際には、個人が特定されないように留意し、「誰の行動か」ではなく、「どのような行動か」に焦点を当てることが重要であることを伝えます。くれぐれも、「○○ちゃんはちゃんとできていなかった」など、いじめや差別の原因とならないようにします。
本時のねらい
給食時間の楽しい会食のあり方に気付くとともに、準備から後片付けを通しての自分の課題に気付き、よりよい給食時間を過ごすための取組について話し合い、これからの給食時間について自分に合った具体的な目標を決める。
本時の指導
① 導入【つかむ】段階(課題の把握)
事前アンケートの集計結果を提示します。「よりよい給食時間を過ごすために、どのようなマナーを身に付けたらよいのか」という課題を自分事として捉えることができるよう、課題意識を高めます。
給食時間についてのアンケート結果を見てみましょう。
準備中、話をしている人が10人もいるね。
私もおしゃべりしていて給食着を着るのが遅くなって、時間に間に合わないことがあったな。
食べているときも話に夢中で、ごちそうさまの時間になってしまい、残してしまったことがあるわ。
アンケート結果から、給食時間中にどのような行動をしている人が多いのか分かりましたね。正しくマナーを守って行動できている人もいますが、おしゃべりが多くなってしまったり、時間に間に合っていなかったり、好き嫌いをたくさんしていたりする人もいますね。みなさんでマナーを守って給食を楽しめるように、自分にできることを考えてみましょう。
アンケート結果や子供たちの意見を板書する際に、「準備」「食事中」「後片付け」の3つの観点で短冊を色分けし、提示していきます。「さぐる」や「見つける」段階でも、3つの視点について順番に子供たちの意見や考えをまとめていくようにします。
② 展開【さぐる】段階(原因の追求)
なぜこのような行動になってしまうのか考えてみましょう。まずは、「準備」のことから考えます。
準備の時間に間に合わないのは、4時間目が終わった後にすぐ準備しないで、のんびり手洗いや水飲みに行っているからだと思います。
給食着を脱ぐときにぐちゃぐちゃに脱いで袋に入れているから、次の日の準備に時間がかかってしまうと思います。
では実際に、給食の準備中の様子を見てみましょう。自分はどうだったか、考えながら見ましょう。
確かに、話をしながらのんびり手洗いや水飲みをしたり、給食着を着たりしているね。よく考えると私もついつい遅くなっていたな。
給食着の写真を見てみると、私もそうなんだけれど、しっかりとたたまないでぐちゃぐちゃに入れてしまっていた。だから準備が遅くなってしまったんだな。
では次に、「食事中」のことについて考えてみましょう。
ついつい好きなものだけを先に食べたり、苦手なものを1口も食べずに残したりしてしまっていたので、栄養バランスを考えようと思いました。
動画を見てみると、私と同じように話に夢中になっていて食事が進んでいない人が多いように思ったから、私も気を付けようと思いました。
最後に、「後片付け」についても考えてみましょう
アンケートでは出ていなかったけれど、写真を見ると食器に少し残っているのにそのまま返してしまっていたことに気が付きました。
この後の片付けをしてくれる調理員さんのことや、給食センターの人のことを考えていなかったなあと思いました。
まだ口に食べ物が入っているのに席を立ってしまう人がいたけれど、委員会の仕事などに遅れそうで急いでいる人もいると思います。
様々な理由が出てきましたね。これらの課題を解決し、給食時間をよりよいものにするためにどんなことに気を付けたらよいか考えていきましょう。
③ 展開【見つける】段階(解決方法等の話合い)
給食時間をよりよいものにするために、どのようにしたらよいかについて話し合います。アンケートの集計結果から気付いたことや、実際の動画や写真を見て分かったことなどから、解決方法について話し合っていきます。
よりよい給食時間を過ごすためには、どのようなことに気を付けたり、マナーを身に付けたりしたらよいかな。「準備」「食事中」「後片付け」のそれぞれについて解決方法を考えてみましょう。
まずは、個人で解決方法を考えます。次に、3人グループで意見を交流し、短冊に記入し、その後学級全体で共有して話し合います。3人グループで短冊を記入する際には、同じような意見を合体させたり、よりよいと思った意見を選んだりして記入するように声をかけます。
※このとき、「できていない人がいるから」ではなく、自分のこれまでの取組を振り返りながら、「よりよくするためにはどうしたらよいか」を考えるようにします。
<準備について>
準備のときについつい話してしまうので、本当に話す必要がある内容なのか考えてから話せばいいと思いました。
3人とも同じように、黙って動くことが大切だと考えたから、準備についてはそのことを書こう。
他にも、当番のときは手洗いや水飲みは素早く行くというのもいいと思うから、それを書いてもいいかな。
<食事中について>
僕は、食事中におぼんの位置が悪くて机や床にこぼしてしまったことがあったから、おぼんの位置を少し手前にするといいと考えました。
私は、いすの位置が後ろ過ぎて、気付かないうちに床にこぼしてしまったことがあったので、いすを正しい位置にするといいと思いました。
少し似ているから、「いすの位置を正しくしておぼんを手前に置く」と書こうね。
好き嫌いや食べる順番についてはどうかな?
苦手なものでも1口は食べるや、三角食べを意識するといいと思う。
私も三角食べがいいと思う。
では、「三角食べをして、苦手なものも1口は食べてみる」と書こうか。
ごちそうさまの時間の5分間になっても食べ終わっていなかったら、もう話さないで、食べることに集中するというのはどうかな。
それもいいかも。
<片付けについて>
「片付け」についても考えていこう。食器をきれいにしてから戻すのが大事だと思うな。
そうだね。そうすると、当番の人などに迷惑をかけないからいいね。
3人グループで記入した短冊の内容を学級全体で共有する際には、教師が意見を分類・整理しながら短冊を貼り、子供たちと話し合いながら小見出しを付けてまとめていきます。
※本実践では、学級担任が1人で授業を行っていますが、栄養教諭や学校栄養職員の方と連携して行うことで、児童の発達の段階に合った専門的な内容を指導してもらったり、子供たちが考えた解決方法を価値付けたり、補足説明したりしてもらうようにするとよいでしょう。
また、食育の観点から、食材の生産者の方にインタビューしたり、苦労や食材への思いをお話しいただいたりしたことを動画に撮り、視聴することも考えられます。
④ 終末【決める】段階(個人目標の意思決定)
ワークシートには具体的な内容を記入できるように、「いつ」「何回」「どのように」などという項目を付け、振り返りも分かりやすく行えるようにします。意思決定の際には、教師は机間指導を行い、実践的な内容やその子供に合った方法を意思決定できているか確認し、必要に応じて助言を行います。
【ワークシートの例】
※学級の状況により、家庭からのひと言を入れてもよいでしょう。
【板書の例】
事後の指導
① 実践
本時から1週間、自分が決めた目標を実践します。ワークシートで毎日達成度を確認します。
② 振り返り
帰りの会を活用して毎日振り返りを行い、取組状況を確認したり、互いの頑張りを認め合ったりします。1週間を通して実践を行ったら、よかったところや反省点も記入し、次週に向けた取組を考えます。自分の取組を振り返ってみて、9割以上取り組めたと思った子供は目標を変更しレベルアップすること、5割から8割だと思った子供は継続していくこと、5割以下しかできていないと思った子供は自分に合った内容に改善することを伝え、新たに意思決定をします。自己理解をし、引き続き自分に合った実践を行っていくことで、達成感を味わうことができるようにしていきます。
③ 家庭との連携
食事のマナーや好き嫌いに関することは、給食の時間だけでなく家庭との連携が大切です。そこで、「がんばりカード」に、「家の人から」という欄を設けてコメントをもらったり、学年だよりや学級だより、授業参観後の懇談会などで授業について知らせたりして、家庭と連携を図って行うことが大切です。家庭の状況により、連携が難しい場合もあるので、状況をしっかり把握して対応したり、協力したりすることができるようにしましょう。
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
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