【相談募集中】問題行動の多い児童と一家の対応で精神を病みそう

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元大阪市公立小学校校長 みんなの学校マイスター

宮岡愛子

問題行動の多い児童とその保護者への対応がしんどく、精神を病みそうとまで悩んでいる先生からの相談が、「みん教相談室」に届きました。ここでは、元大阪市公立小学校校長・宮岡愛子先生からのアドバイスをシェアします。

つらそうな男性
イラストAC

Q.問題行動の多い児童と一家の対応に精神を病みそうです。担任をやめたいが、我慢するしかないのでしょうか

超問題児一家の対応に精神を病みそうです。

小6の兄Aと、小1弟Bが学内のみならず学外でも大暴れです。A、Bの母親は、しつけは学校にお任せというポリシーです。通級、スクールカウンセラーとの連携は、母親が激高して話になりませんでした。父親は学校、警察、児童相談所からの連絡に一切応じません。

私はAの担任をしていますが、あと半年、自分の精神が持つか分かりません。なおAの昨年度の担任は、精神を病んで退職しています。校長は「A、Bはギャングエイジだからいろいろ失敗をして学んでいきますよ」というのんきな対応です。

Aー現在小6。入学当初から、ハンデありの子のものまねを面白おかしくしている。現在も継続中。具体的には口蓋裂や片耳軽度難聴児のしゃべり方を大声でものまね。低学年のうちはその気性の強さで学年の男子を支配していたが、最近反発する者が現れて不機嫌になっている。最近は、遅刻が目立つ。宿題も親のチェック(丸付け)は無し。学力は、平均より下だが支援を必要とするほどではない。女性教諭が担当する教科は、小馬鹿にして寝ているか、教諭のものまねばかり。校外では、素行をとがめた高齢者を攻撃して、高齢者の家に投石してガラス戸を破壊して逃走。また、近隣住民の自転車と原付をパンクさせたりゴミをポストに投函したりするなど反社会的行動が目立つ。 警察と児童相談所の介入が入ったが、本人はヘラヘラしている。

Bー現在小1。兄(A)が警察と児童相談所にマークされているため、Aの代わりに通報者を探し出して攻撃する意向を頻繁に口にしている。すでに近隣住宅に投石して問題になっている。防犯カメラには中指を立てて挑発。投石の件を母親に連絡しても、母親は「児童相談所や警察に連絡した方が悪い、こっちは児童相談所や警察への対応に追われている、投石ぐらい我慢しろ」と反抗的な態度。

毎日毎日Aの対応に追われて精神を病みそうです。私も前任者のように、Aの担任をやめたいのですが……我慢するしかないんでしょうか?

(じま先生・20代男性)

A.大切なのは、「人の力を活用すること」「一人で抱え込まないこと」。問題を整理し、手立てを考えましょう

じま先生、よくここにメールを送ってくれましたね。この状況で毎日Aと向き合っていること、しんどかったですね。これからどうするか、自分だったらと考えました。

大切なのは、「人の力を活用すること」「一人で抱え込まないこと」です。これを実践します。まずは、いただいた文章から整理をしました。それがこの表です。

図解
ちょんせいこさんの提唱する「ホワイトボード・ミーティング」を参考に整理しました

命にかかわることから優先順位をつけ、赤で方向性を、青で具体的な行動を考えました。どうでしょうか。これを学校でやれば、じま先生のしんどさが、他の先生方にとっても自分事になります。

『ちょんせいこの ホワイトボード・ミーティング: クラスが落ち着く!! 低学年にも効果抜群 (教育技術MOOK)』
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見えてきた対応法は、次のようなものです。

①今の状況をやめさせる具体的な手立てを考える。

まずは、当たり前ですが、今の状況をやめさせる具体的な手立てを考えることです。Aに寄り添えるのは? 話を聞けるのは? 教師の間で役割分担をしておきます。そして、Aのことが心配だから、イライラすることがあったらクールダウンできるようにこうするということを、Aにあらかじめ話しておきます。小さな成功体験をAが積み重ねられるようにしていきます。

次に、教育委員会への報告です。ハンデありの子への暴言はいじめです。教育委員会へいじめとして報告をあげます。教育委員会には弁護士がいるのなら、保護者との対応には、必ず指導主事と弁護士に入ってもらいます。私の市には生活指導支援員というポストの人がいて、元警察官や元校長が担っており、しんどい学校には、元警察官が来ていました。

②チームで取り組む。

じま先生の持ち時間を減らすことが必要です。教科担当制(チーム担当制)を取り入れます。この学年だけでよいです。学級担任も週替わりにし、監視ではなく、複数で対応をするのです。実際にやっている自治体があります。

もう一つは、子どもが楽しめ、学びにつながるゲストティーチャー、外部の力を使うことです。例えば、ゲストティーチャーが「刑事事件にはならないけど、民事事件で大きな損害賠償が起こるよ」と話すなど、『教育漫才』で子ども同士のつながりを促進できるような活動ができます。

教育漫才で、いじめや不登校知らずの学校づくり~子どもたちを温かく迎え入れる学校をhttps://kyoiku.sho.jp/273543/

現役校長が語る!教育漫才で、みんなで笑っていじめを防ぐ【シリーズいじめのない学校づくり4】
https://kyoiku.sho.jp/117228/

③じま先生の心の安定を図る。

ここへの相談もそうですし、誰か信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。職員室に戻ってきたら、大きな独り言を言ってみてもよいでしょう。誰かが聞いているはずですから、共感につながります。

また、「今年度は自分なりにAを中心に取り組むけれど、来年度は担任はしない、できない」という約束を校長に取り付けることで安心できるなら、そうしてもいいと思います。

④学校外は、警察・児童相談所にいったんまかせる。

周りの子どもが反発するというのは、その子たちが育っているということです。だから、兄弟は学校での居心地が悪くなり、遅刻がちにもなるのです。

保護者に伝えるのは、いったんやめましょう。子どもが暴れたときは、母親を責めるのではなく、まずは子どもに、「なんでかな」と聞くことです。弟は、兄に従わないと家に居場所がなくなるので、言われたままやっているのかもしれません。

Aが悪いことをする→教師が保護者に伝える→保護者が反発する→またAが悪いことをする、という繰り返しを断つためにできる手立てを、具体的に一つひとつやっていきましょう。


すぐには成果を求めず、焦らずに取り組むことが大切です。

学校がチームになって対応し、子ども同士がつながれば、どんどん変わっていきます。まずは、じま先生の気持ちを立て直すための具体的な手立てからスタートしましょう。

みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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