もっと理科が好きになる理科室の環境づくりとは? 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】
もっと理科が好きになる理科室の環境づくりとは?
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この記事をご覧になっている皆さんは、子どもにも理科を好きになってもらいたい、理科のすばらしさを知ってもらいたいと願っていらっしゃるのではないでしょうか? そのためには、日々の授業を充実させることは言うまでもありません。しかし、それ以外にも理科を好きになってもらう、理科のすばらしさを知ってもらうための手立てがあるのです。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/北海道公立小学校主幹教諭・加藤久貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1.理科室の掲示を充実させよう

突然ですが、みなさんが勤務されている学校の理科室の掲示物はどのようになっているでしょうか。
教室であれば、学級通信や経営にかかわるもの、児童の作品など様々なものが掲示されていることでしょう。また、掲示するものが事前に決められている学校もあるでしょう。しかし、理科室については基本的に掲示の仕方は自由であり、どのような掲示をしてもいいわけです。理科担任に任されているのですから、この機会を逃す方法はありません。子どもが興味をもちそうなものを積極的に掲示していくのです。掲示によって、子どもの「理科って楽しい!」を引き出してみませんか。

2.「化石コーナー」の設置

子どもが興味を引くものの中に「化石」があります。化石をテーマにした商品は、お菓子やゲームなど大人気です。そこで、もし、先生や学校が化石にかかわる資料をお持ちであれば、理科室に掲示してみてはいかがでしょうか。化石にはさまざまな種類があると思いますが、基本的にはどんな種類でも子どもは興味をもってくれると思います。さらに、実際に手に取ることができればなおさら子どもたちは喜ぶことでしょう。

化石標本

もちろん、化石でなくても構いません。例えば、「いろんな種類の石」「昆虫の標本」「月の写真」など、自分が用意できる範囲のもの、掲示しても大丈夫なものは積極的に掲示してみてはいかがでしょうか。もし、先生が持っていなくても、理科準備室にはそのような「おたから」が眠っているかもしれません。

月の写真の掲示

3.生き物カードの作成

海の生物、昆虫、魚、鳥、動物に分けてたくさんのカードを用意しました。カードの裏には、その生き物の情報が詳しく書いてあります。実際置いていると子どもは様々な姿を見せてくれます。興味がある分野のカードをじっくり見る子、すべての分野のカードをまんべんなく見る子、裏に書いてある情報を丁寧に読み込む子など様々です。また、休み時間に理科室にやってきて、友達同士で鳥の名前当てをしたり、海の生き物を並べてどれが一番大きいかをクイズにしたりと、それぞれが工夫しながら楽しんでいる様子が見られました。このように楽しめる要素がある掲示もおすすめです。

生き物カードの掲示
生き物カードを楽しむ子供たち

3.理科ニュースづくり

理科の授業を通して感じたことや日常生活で「これは楽しい! おもしろい!」と思ったことを記事にしてみてはいかがでしょうか。
例えば、筆者は北海道で勤務しておりますが、鹿児島県を訪れた際、火山灰予報があることを初めて知りました。また、火山灰を集めて処分するための克灰袋があることも初めて知りました。そのことを「理科ニュース」と称して、理科室の前に掲示しました。
直接子どもに話すのもいいですが、このように掲示しておくことで、たくさんの子どもから桜島について話しかけられました。理科ニュースが火山に興味をもつきっかけになったことでしょう。
火山灰を持ち帰り、チャック付きの袋に少しずつ分けて理科室の前に置いたところ、これが大人気となり、100袋以上があっという間になくなりました。
ちなみに、克灰袋の存在については、「先生、私たちをだまそうとしたって無駄ですよ」と信じてもらえなかったため、他にも資料をたくさん提示してようやく信じてもらえました。 このような理科ニュースは、授業の中でも活用することができます。今回の火山灰については、第6学年の「土地のつくりと変化」の導入でも活用することができます。

※克灰袋(こくはいぶくろ)=鹿児島市が桜島の火山灰をゴミとして収集するために配布している袋。降灰袋や集灰袋と呼ぶ自治体もある。

理科ニュース

掲示を続けていくと、そのうち子ども自身が家庭学習で通信を作ってくることもあります。また、理科の学習がない1・2年生の目にも触れるので、理科の学習に対する興味をもたせることにもつながります。
このように、子どもが興味をもってくれそうなものや自分が興味をもったものを積極的に掲示することができるのも理科室の魅力の1つではないでしょうか。自然や科学の楽しさ、美しさ、雄大さなど世の中は「理科」に関する内容であふれています。子どもが日常の様々な事象に目を向けて思考できるようするためにも、まずは教師自身が自然や科学の素晴らしさを感じ取り、それらを積極的に発信していくことが大切です。

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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加藤久貴先生

<執筆者プロフィール>
加藤久貴●かとう・ひさき 北海道公立学校主幹教諭
北海道教育委員会の学力向上推進事業による授業改善推進チームとして、市内の全小学校を訪問し、ICT端末を活用した授業づくりを推進している。
共著に「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)、「これからはじめる “GIGA” 全学年×1人1台端末×活用事例小学校理科3・4年」(日本標準)等


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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