小1生活「ふゆを たのしもう」指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修による、小1生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「ふゆを たのしもう」の単元を扱います。
執筆/高知県公立小学校教諭・矢野大輔
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
高知県公立小学校校長・尾中映里
目次
年間指導計画
4月 | どきどき わくわく 1ねんせい(スタートカリキュラム) |
5月 | がっこう だいすき |
6月 | きれいに さいてね |
7月 | なつが やって きた |
8月 | いきものと なかよし |
9月 | あきを さがぞう |
10月 | あきの おもちゃを つくろう |
11月 | あきまつりを しよう |
12月 | じぶんで できるよ |
1月 | ふゆを たのしもう |
2月 | しん1年生に 学校のことを つたえよう |
3月 | もうすぐ 2年生 |
単元目標
冬の自然と関わったり利用して遊んだりすることを通して、身近な自然の違いや特徴を見付けたり遊びや遊びに使う物を工夫してつくったりして、冬の自然の様子や季節によって生活の様子が変わることや自然を利用した遊びの面白さに気付くとともに、身近な自然を取り入れ自分の生活を楽しくしたり、みんなと楽しみながら遊びをつくり出そうとしたりすることができるようにする。
本単元と関わりの深い幼児期の経験
- 運動場の水たまりに氷が張り、スケート遊びをした経験。
- 水の中に、植物などを入れ、凍らせて、氷のブロックを作った経験。
- 運動場の土を盛ったところに雪が降り積もり、雪山になっていたところをそりで滑った経験。
- 雪の降った日にかまくらづくりを友達と一緒に楽しんだ経験。
- 風の強い日に、小学校の広い運動場で思いっきり走りながら凧揚げをした経験。
学習の流れ(全11時間)
この前、氷を見付けていた人がいたけど、どこで見付けたの?
朝来た時に、学校の入り口のところにあったよ。
だって朝が寒くなってきたもん。
家の前のバケツの水も凍っていたよ。
息も白くなってきたもんね。
【小単元1】こうていで ふゆを さがそう(2時間)
①冬といえばどんなものがあるかな
「冬といえば、雪! 雪遊びもしたことあるよ」「クリスマスもあるね」「年長さんの時に、運動場でそりを使って滑ったこともあったね」「氷でスケートもした!」「空気が冷たい」など、子供の冬のイメージや、冬にしてきたことを伝え合います。こども園・幼稚園・保育所や家での経験を思い出しながら話し合います。
【教師の支援・援助】
どんな意見も受け止めることや、子供の楽しみにつながるように話合いをすることを伝えて、子供の意欲や興味を高めるように工夫します。
②校庭にはどんな冬があるかを見付けに行こう
「秋には黄色になっていた木の葉っぱが、今はもうなくなっていた気がする」「生き物はどこにいったのかな?」など、今までの季節とはどのような違いがあるのかを見付けに行く前に話合いをします。
実際に校庭に出て冬を探しに行きます。「やっぱり虫たちの声が聞こえない」「木の葉っぱがなくなった」「葉っぱがタコの足みたいにクルクルしている」など、今までの季節と比べながら見付けた冬の自然を、友達と伝え合いながらさらに見付けます。
「息が白いし、ハァって吐いたら暖かいよ」「鉄棒とかジャングルジムが冷たくなっている」などの発言を聞いて、「もう一度確かめにいきたい」と言ったことがきっかけとなり、全員でもう一度確かめに行きます。
子供は冬を全体的・直覚的に感じたり、「視覚」「聴覚」「触覚」「臭覚」「味覚」の諸感覚を働かせて感じ取ったりしていく過程で、今までの季節との違いに気付きます。「次は公園に行って様子を見たい!」という、次にやってみたい活動を想起します。
【物的支援】
今までの季節の発見をまとめた「季節の絵本」を掲示しておくことや、教室掲示の「季節暦」を参考にすることで、季節の違いを見付けやすくします。また、ICT端末でこれまでの公園との様子の比較ができるように、写真を提示します。
【教師の支援・援助】
季節みつけをする際は、全単元を通して諸感覚を使うように促します。子供が発言しやすくするために、子供の意見を否定しないようにします。「どうしてそれが冬だと思ったの?」などと教師が問い返すことで、子供の好奇心や探究心を引き出します。
●自然との関わり・生命尊重
自然に触れて、冬の特徴を感じる活動を通して、見付けたいという好奇心や探究心をもって取り組み、言葉や身体表現に表しながら、季節による変化に気付き、自然に親しみをもって接し、友達に伝えようとします。
●言葉による伝え合い
友達に自分の考えや、見付けたことを伝えたり、友達の考えを聞いたりする活動を通して、自分と友達の考えの違いに気付き、さらに自分の活動をよくしようとしたり、さらに分かりやすく伝えようと、自分なりの言葉で表現したりします。
●豊かな感性と表現
冬の特徴について、諸感覚を使って感じる活動を通して、みずみずしい感性を働かせながら、感じたことをいろいろな表現で表すことができることに気付き、より伝わりやすい表現は何かを考えて、意欲的に伝えようとします。
1人1台端末活用のポイント
季節みつけを行う際には、同じ場所の写真を撮っておきます。「葉っぱの色が変わっている」「前より草が高くなっている」など、視覚的に分かりやすい季節ごとの変化に気付きやすくすることができます。
評価規準
知識・技能:校庭で自然の様子が、秋から冬に変化していることに気付いている。
思考・判断・表現:春から秋の校庭の様子と比較しながら、冬の自然を探している。
主体的に学習に取り組む態度:楽しみたいという思いや願いをもって、冬の自然と触れ合おうとしている。
【小単元2】ふゆの こうえんに いこう(2時間)
①公園にはどんな冬があるかを見付けに行こう
「公園も学校と同じように変わっているかもしれないね!」「今までも公園の様子を見ていたから行きたい」など、これまでの経験から次にしたいことを確かめます。
実際に公園に行って「風で葉っぱがとんでいく!」「みんなでキャッチしよう」など、遊びながら、冬の自然を感じていきます。また、「公園でも虫たちの声は聞こえない」「やっぱり木の葉がなくなっている」など、校庭の様子や、今までの公園の様子との比較をしながら、公園の自然を探します。
【教師の支援・援助】
事前に風が強く吹く日に活動ができるように、天候の様子を気にかけておきます。木から葉っぱが散っていく様子や、気温が低くなるタイミングなど、冬の自然を感じられるというねらいが達成できるような天候の様子や日を選んで授業をします。
【物的支援】
ICT端末を使って、校庭の様子と公園の様子を比較することができるように、写真を提示します。
②冬にやりたいことを考えよう
冬みつけで発見したことを基に、冬にやってみたいことを伝え合います。夏の暑さを利用して川遊びや水鉄砲で遊んだり、秋の自然で作品やおもちゃをつくる活動を地域の方に協力してもらったりしたことを思い出しながら伝え合います。
「風が強かったから、風を使った遊びをしてみたい」「年長さんの頃よりも、もっと大きいスケートリンクを作ってみたい」など、子供が季節の特徴に気付きながら、やりたいことを伝え合います。
【教師の支援・援助】
自分たちが見付けた冬の特徴をなるべく生かしたり、園の経験から連続的・発展的な活動になったりするように声をかけます。その上で、子供の「やりたい」を引き出し、実現できるようにします。
評価規準
知識・技能:公園で自然の様子が、秋から冬に変化していることに気付いている。
主体的に学習に取り組む態度:楽しみたいという思いや願いをもって、冬の自然の特徴を生かしながら遊ぼうとしている。
【小単元3】ふゆの あそびを しよう(5時間)
①風を使った遊びを考えよう
教科書や、図書室の本、ICT端末を活用して、風を使った遊びを考えます。「このコップの風車を作ってみたい!」「凧揚げしたら楽しそう」「袋を広げて風を集めてみたい」など、様々な発想が生まれます。
【教師の支援・援助】
本単元に関係している本を図書室から選び、教室に置きます。また、冬の遊びコーナーを教室につくり、子供の好奇心や探究心を高めます。
1人1台端末活用のポイント
インターネットを活用して、風を使った遊びを検索します。作り方の写真や映像を見ることができるので、想像することが簡単にでき、子供の好奇心や探究心を高めることができます。
②風を使った遊びをしよう
子供の思いや願いを実現する冬の遊びをします。遊びながら、「こうしたらもっと風車が回りやすいよ」「凧の糸をもっと長くしたほうがいいと思うよ」「袋には絵を描いた方が膨らんだ時に面白いよ」など、子供同士でお互いに意見を出したり、アドバイスしたりしながら遊びます。
凧を上げる時にジャングルジムなどに上ってみたり、滑り台から降りながらポリ袋を広げたりなど、より風を強く感じられる方法を探す姿が見られます。
【教師の支援・援助】
やってみて上手くいかないこともありますが、そこで子供が試行錯誤することに寄り添います。教師が声をかけ過ぎないように、後ろから支援するようなイメージで取り組みます。
③大きなスケートリンクを作ろう
子供は雪が降るという天気予報から、スケートリンクを作りたいと考えます。年長さんの時、水たまりに氷が張っていた時に、その上を滑った経験もあります。その経験から、「もっと大きいスケート場を作りたい」という思いや願いが高まります。どこにどうやって作るのかという計画を立てます。
野菜を育てていた畑が、収穫後で空いていることから、そこに作ろうと計画を立てます。「土を掘って、水を溜めてみよう」「このままだと水が土にしみ込んでしまう」など、課題を解決しながらスケート場を作っていきます。例えば、ブルーシートを敷いて、そこに水を溜めていこうとします。
翌日に、スケート場がどうなったか確かめに行きます。子供は凍っているスケート場を見て大喜びです。早速、氷の上で遊びます。雪も積もっていたので、同時に雪遊びもします。雪合戦をしたり雪だるまを作ったりなどします。
また、教科書を見ていた子供が「雪を使った、カラフルブロックを作りたい」と発言したことがきっかけとなり、活動が広がります。子供が必要なものを準備し、作り始めます。
【教師の支援・援助】【物的支援】
子供がやりたいと言った活動を行う際に必要な道具は、なるべく自分で道具を準備したり、用意できない物は自分で借りに行ったりするなど、必要なことを考えるように促します。教師は、いつでも活動に取り組めるように環境を整えておきます。
【教師の支援・援助】
雪が降るタイミングを天気予報などで確認して、授業を行います。しかし、いつ降り出して、どれくらい積もるかなど、予想ができないこともあるので、時間割を柔軟に変更できるようにしておきましょう。
●協同性
スケートリンクを作ろうと計画をする活動を通して、友達と一緒によい方法を試したり、話したりしながら、一人の考えよりも友達と考えることのよさに気付き、話し合うことの有用性を感じながら、意欲的に友達と関わろうとします。
●道徳性・規範意識の芽生え
スケート遊びや、雪遊びの活動を通して、自分達でルールを決めて遊びながら、友達とより楽しく遊ぶためには決まりが必要なことに気付き、友達と折り合いをつけながら、決まりを守ろうとします。
●思考力の芽生え
友達の様々な考えに触れる中で、新たな考え方を発見しながら、自分の思いを考え直したり、新しい考えを生み出したりすることのよさに気付き、一つのことを探究しようとします。
評価規準
知識・技能:冬の自然や物は、いろいろな遊びに利用できることに気付いている。
思考・判断・表現:冬の自然を生かして繰り返し遊んだり、遊びや遊びに使う物を工夫したりしている。
主体的に学習に取り組む態度:冬の自然と関わりたいという思いをもち、遊びを創り出そうといている。
【小単元4】ふゆの ことを つたえよう(2時間)
①冬の発見や遊びをまとめよう
「季節の違いと、冬のおすすめの遊びを、『季節の絵本』にまとめよう」と、今までの季節と同じまとめ方をしようとします。ICT端末で撮った冬みつけの写真や、冬の遊びをしている時の写真を見返すなどして、思い出しながらまとめます。「この写真は使いたい」など、絵本に貼る写真も子供が選びます。
【物的支援】
教師や子供が撮った写真を、ICT端末の共有ノートに送り、まとめる活動で使いたい写真を選べるようにします。
【空間的支援】
今までの「季節の絵本」を掲示し、比べながら活動できるようにします。
1人1台端末活用のポイント
冬みつけや、冬の遊びの活動の写真をICT端末の共有ノートに貼っておき、子供が活動を振り返れるようにします。活動のまとめを行う際に、子供が写真を選ぶことができるので、よりよくまとめようとする意欲や、自分達で作り上げる達成感を得ることができます。
②季節のことを伝えよう
学習発表会のことを知り「生活科で見付けたことを、劇にまとめて発表をしたい」という思いが出てきます。「季節ごとにグループで分かれたらどう?」」「クイズを入れたりしたら、覚えてもらえるかもしれない」「季節の絵本は使いたい」など、どうすれば季節の違いや、遊びを伝えられるのかを話し合いながらまとめていきます。楽しみながら、今までの季節を振り返り、改めて比較しながら整理することができます。
【教師の支援・援助】
完成した四つの季節の絵本を見てもらいたい、自分たちの見付けたことを面白く伝えたい、という意欲が湧くように、子供のアイデアを取り入れていきます。
評価規準
知識・技能:季節に合わせて、自然の様子や生活の様子が変化する変化することに気付いている。
思考・判断・表現:遊びを工夫したり、友達と楽しく遊んだりしたことを振り返り、表現している。
主体的に学習に取り組む態度:みんなで遊ぶと生活が楽しくなることを実感し、毎日の生活を豊かにしようとしている。
参考資料/『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校生活』文部科学省 国立教育政策研究所
イラスト/高橋正輝