小5国語「固有種が教えてくれること」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は「固有種が教えてくれること」です。この単元では、「資料を用いた文章の効果を考え、それを生かして書こう」というのが主たる学習内容です。本時では、図表やグラフなどの資料を用いることで、文章がより分かりやすくなることを学びます。そのため、子供たちの資料についての気付きやその効果を、黒板に書く位置やチョークの色を統一するなど分かりやすく可視化する板書の工夫を紹介します。

監修/元京都女子大学教授
 同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教頭・砂崎美由紀

 

教材名 「固有種が教えてくれること」(光村図書出版)

単元の計画(全10時間)

【第1次】
  「固有種が教えてくれること」の全文を読み、初発の感想を書く。
  筆者の考えが書かれているところに着目し、「初め」「中」「終わり」に分ける。
  「中」を読み、それぞれの段落に簡単な見出しを付ける。
  「中」を読み、文章と図表やグラフ、写真を結びつけて読む。
  「中」を読み、資料の効果を考える。
  筆者の考えや説明の工夫について、資料の効果にふれながら、自分の考えを書く。
【第2次】
  第1次で考えたことをグループで伝え合い、次時のテーマを決める。
  自然環境や環境問題についてテーマを決め、伝えたいことにあった資料を選ぶ。
 9 資料をもとに、説得力のある文章を書く。
10 資料をもとに、自分の考えを伝え合う。

板書の基本

〇本単元では、筆者の説明の工夫を探しながら読み、その工夫がどのような効果をもたらしているか考え、友達と伝え合うことを目標としています。「固有種が教えてくれること」を読み、文章と資料を結びつけて読むことで、資料の効果を考えます。その後、自然環境や環境問題についてテーマを決め、「固有種が教えてくれたこと」で学んだ工夫(資料を用いることの効果)を応用しながら、自分の考えをまとめて友達と伝え合うことを学習活動とします。

〇単元の計画は、教科書の「学習」をたどって進める学習を考えました。11段落から成る文章を、筆者の考え(主張)が書かれたところを見付け、「初め」「中」「終わり」に分けます。全文の構成が一目で分かるように板書し、文のなりたちを可視化して分かりやすくします。

〇本時には、教科書の「ふかめよう」の段階にある「4つの問い」を中心に考える活動を通して、図表やグラフなどの資料を用いることで、文章がより分かりやすくなることを学びます。文章だけでは理解しにくかったり、具体的に思い描けなかったりすることが、資料と合わせることで、より分かりやすく、より具体的になるという筆者の工夫をつかみます。

地図や写真などで可視化されると情報が分かりやすいように、板書では子供たちの資料についての気付きやその効果を黒板に書く位置を統一したり、チョークの色を統一したりするなどして、可視化するようにしました。

板書のコツ(5/10時間目前半)

小5国語「固有種が教えてくれること」京女式板書の技術 5/10時間目前半の板書
5/10時間目前半の板書

板書のコツ①

授業の始まりは音読からです。「中」に資料がたくさん使われていることを前時に見付けています。本時は「資料の効果を考える学習をする」ことを伝え、「中」を音読し、本時の学習範囲を確認します。

板書のコツ②

次に、めあてを板書します。資料の効果を考えるために、「本文に資料がないと分からないこと」を考えることで、「資料の効果」へとつながることを伝えます。そのように説明した後で、「資料があるからよくわかる」と雲形で囲み、めあての補助としました。

板書のコツ③

「日本に固有種が多いわけ」をみんなで考えます。書かれている段落は3段落であることを確かめ、そこで、「段落③」と黄色いチョークで板書します。「段落③」の中で「資料がないとわからないこと」を考えます。どの資料があると分かるのかを問い、資料番号と資料の種類を板書します。ここでは資料1は「地図」と「表」です。そして、「資料があることで、どのような効果があるか」(資料の効果)を「比較できる」と赤チョークで書き、さらに○で囲みます。この赤い字で板書したことが、今日のめあてである「資料の効果」となることに気付かせます。

資料には、日本とイギリスの地図が示され、どちらも島国という共通点が見られます。ところが、固有種の数は全く違っていることが表から分かります。実際の地形、国土の大きさ、実際の数字を知り、より説得力があることを確かめます。このようにみんなで、本時の学習方法を学びます。

板書のコツ(5/10時間目中盤)

小5国語「固有種が教えてくれること」京女式板書の技術 5/10時間目中盤の板書
5/10時間目中盤の板書

板書のコツ①

教科書の「学習」ページの内容をもとにした問いを板書します。「日本に固有種が多いわけ」「固有種が生き続けられたわけ」「固有種が減った原因は」「固有種の保護と環境の保護」の4つです。これらの問いに、1人学習またはペア学習で読み進めていくことを知らせます。

板書のコツ②

「日本に固有種が多いわけ」は、はじめにみんなで取り組んだ問いと同じ問いですが、4段落から読み取ることを指示します。みんなで学習したやり方を、そのままおさらいするステップとしても扱うことができます。

板書のコツ③

問いの順番に取り組んでもよいし、読みたいところから手がけるのもよいと知らせます。また、クラスで問いを分担して、自分が受け持った問いについて時間をかけて考えるのもよいでしょう。

板書のコツ④

時間を決めて各自での学習に取り組んだあと、全体で発表し合います。そして、それぞれの問いについての意見を板書し、「資料の効果」を赤いチョークで書いて、確かめます。

板書のコツ(5/10時間目後半)

小5国語「固有種が教えてくれること」京女式板書の技術 5/10時間目後半の板書
5/10時間目後半の板書

板書のコツ①

問い「固有種が減った原因は」については、説明の文章に対応する資料がないところがあります。「なぜ筆者は資料を示さなかったのか」や「ここに入れる資料としてはどんな資料がいいだろう」などと考える子供がいるでしょう。また、「カワウソ」が写真なのに、「ニホンオオカミ」の写真は生体のものではなく、「はく製の写真」であることに疑問をもつ子供もいるかもしれません。

固有種の対語となる「外来種」の説明や、「人間の活動」には資料も具体的な例も示されていないことに疑問をもつ子供もいるかもしれません。あるいは、疑問をもたせるように仕組まれた筆者の意図かもしれないと、考えることもできそうです。こうした疑問が、第2次の自分で調べ、考えをまとめる学習へ続くことを期待します。

板書のコツ② 

学習の最後には、一人一人が「学習のふりかえり」をノートに書きます。振り返りを書くときに使うキーワードを示します。本時はめあてにある「資料」「効果」をキーワードとするように板書しました。キーワードを自分の振り返りの文章に入れることで、学習のポイントに添った振り返りを書くことにつながります。

板書のコツ③

また、本時に新たに疑問に思ったことが、次の時間以降の学習につながるので、「疑問を大切にするように」と伝えます。本時で学んだ力が、これからの自分の学習に生かされることを、子供たちに伝えます。これからの学習に困ったとき、見返して、学びの指針となるような板書やノート作りをめざしたいものです。

 

構成/浅原孝子

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