小6特別活動「係活動発表会をしよう」指導アイデア
小学校生活最後の1年も折り返しを過ぎ、少しずつ中学校への進学が近づいてきた10月。日々の暮らしや様々な行事を通して学級の仲も深まり、集団として次のステップに進みたいと感じる先生も多いのではないかと思います。ここでは、「係活動発表会」を通して学級のみんなで楽しみながら自分たちの活動を深く知ったり振り返ったりすることで、それまで以上に互いを信頼し合い、卒業に向けてますます団結力が高まっていく取組を紹介します。
執筆/熊本県公立小学校教諭・坂本大輔
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
尚絅大学教授・平野 修
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑴ 6年生スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 情報通信端末の使い方を見直そう
7・8月 学級活動⑶ ウ 家庭学習をアップデートしよう
9月 学級活動⑵ イ 友達のよい相談相手になろう
10月 学級活動⑴ 係活動発表会をしよう
11月 学級活動⑴ 学級世界記録をつくろう
12月 学級活動⑴ 卒業文集を作ろう
1月 学級活動⑶ ア 中学校に向けて
2月 学級活動⑴ お世話になった方々へ感謝の気持ちを表そう
本議題のねらい
係活動は、学級をより豊かに、楽しくしていくことを目的に、子供の自発的・自治的な取組として行っていく活動です。係活動発表会では、係ごとに取組を紹介し合って活動を認めたり、発表内容を工夫したりすることで、互いの頑張りに気付いたり、他の係の活動の工夫やよさを取り入れたりする機会とします。また、この発表会に向けてそれぞれの係で計画的に準備を進めていくことは、これまでの活動を振り返り、さらに目的意識をもって活動する意欲を高め、学級をより豊かに楽しくしようとする活動意欲の向上にもつながります。
事前の活動
議題の選定について
2学期(2学期制の学校は後期)になり、どの学級でも新しい係が組織されて活動を進めていると思います。1学期、あるいは前期の振り返りを生かしながら、さらにレベルアップした活動を展開している係もあれば、やや停滞している係もあるかもしれません。今回は、「自分たちの係活動をもっと知ってほしい」「活動のアイデアを他の人からもリクエストしてもらって、さらに楽しい活動にしたい」という子供の思いから「係活動発表会」の議題が選定されました。
新しい係になって、学級がどんどん盛り上がってきたね。
クイズ係のクイズ、面白いよね!私いつも楽しみなんだ!
係活動、みんな頑張っているから、どんな取組をしているのかもっと知りたいね。
それに、学級のみんながどんなことをしてほしいのかも知って、もっと係活動を盛り上げたいな。
自分たちの係の取組を紹介したり、係以外の友達から活動のアイデアをもらったりすることで係活動がもっと盛り上がるかもしれませんね。
※係によっては、十分な活動を行えていないグループがあるかもしれません。そのような係は、他の係の取組内容を聞いたり、友達からの活動へのリクエストやアドバイスなどをもらったりすることで、今後の活動への意欲を高めていくことが大切です。
議題案を学級に諮り、学級全員で決定したら、「話し合うこと」や「話合いのめあて」「決まっていること」などについて計画委員会で話し合い、活動計画を作成します。
※議題は学級全員で決定します。提案理由は提案者の思いを生かして計画委員会で深めることはあっても、計画委員会で作成しません。
もし、今回の議題を計画委員会で提案するとしても、提案者として計画委員の誰かがしっかりと思いをみんなに伝えたほうがよいと思います。
<学級会ノートの例>
<計画委員会・活動計画の例>
本時の活動
話し合うこと①【発表会をどのような形式で行うか】
【出し合う】
発表する内容については、各係の活動内容や工夫を生かした創意あふれるものになるようにしましょう。そこで話し合うこと①では提案理由に沿って発表会の形態に関する意見を出し合います。
私は、朝の会や帰りの会でクイズ係さんたちがやっているような発表にするといいと思います。
僕は、映像で撮ってみんなで見るようにするとやりやすいんじゃないかと思う。
僕は、お店屋さんみたいに発表する場所をつくって、みんながそれを回っていくのがいいと思います。楽しいし、協力してできると思うからです。
私は、自分たちの活動をポスターにまとめて、それを発表すると、分かりやすくていいと思います。
言葉による発表だけではイメージしづらい意見もあると思います。くらべ合う前に質問し合い、共通理解を図るようにします。必要に応じて、簡単な図示をしたり絵に描いたりすると分かりやすいです。
質問が多くなりすぎると、くらべ合う時間が十分取れないので、事前に学級会ノートで出ている意見を確認し、分かりにくいようなら前もって図や絵を描いてきてもらうようにします。
【くらべ合う】
出された意見をもとにどれがよりよい意見かをくらべ合い、合意形成を図ります。司会は、改めて提案理由や話し合う条件、決まっていることを確認してみんなが出された意見をくらべやすいようにします。
(司会)この中から、係活動発表会をどのように行うか決めていきます。どんな形で行うのがいいと思いますか。意見を出してください。
僕は、映像で撮るに賛成です。それぞれの係で計画的に進めていけるし、みんなの前で緊張せずにしっかり伝えられると思うからです。
私は、出店形式がいいと思います。自分の興味がある係を回れるし、そこでクイズを出したり何か体験したりできるから係の活動をちゃんと見せられるからです。
私もお店屋さん形式に賛成です。前半後半に分かれて活動すれば、みんながお店で発表する役とお客さん役ができて、楽しみながら互いの活動や工夫を知ることができるからです。
私は、出店形式だとすべての係の発表が聞けないからもったいないと思います。発表の形式なら、全員で一緒に体験することもできるし、みんなで楽しめるからいいと思います。
本議題の話合いは発表会の形態を1つに決定するものですので、フロアからたくさんの意見を出し合い、それらをくらべ合います。提案理由や話合いのめあてから考えるとどれがよりよいかについて話し合い、折り合いをつけて合意形成が図れるようにします。
【まとめる】
最後に、決まったことを確認して次の【話し合うこと②】につなげます。
(司会)それでは、係活動発表会はそれぞれの係が順番に前に出て、自分たちの活動を発表する形式で行うことに決まりました。
話し合うこと②【発表会を次の活動につなげるための工夫】
【出し合う】
係発表会を係の取組の紹介だけで終わるのではなく、これからの係での活動につなげていくためには、どんな工夫をすればよいのかを話し合います。
私は「アドバイスタイム」を設定して、取組のいいところとさらに楽しい取組にするためのアドバイスを発表する時間をつくればいいと思います。
私も、賛成です。係の中には、活動のアイデアが浮かばずに困っているところもあると思うので、みんなでアイデアを出すのがいいと思います。
だったら、リクエストコーナーみたいなものもあって、みんなからその係でやってほしいことを出し合うこともできるといいと思います。
私は、アドバイスもいいけれど、発表の後に、その係の発表のよかったところや参考にしたい活動を伝えたらいいと思います。係活動をもっと頑張ろうという気持ちが高まるからです。
僕は、係発表会の様子を写真に撮って学級活動コーナーに貼って、その時の様子などをみんなで思い出せるようにするのもいいと思います。
事後の活動
発表会の準備
⑴ 本番までのスケジュールと当日のプログラムの決定
発表会の準備は、会の運営と各係の活動発表の2本柱で進めていく必要があります。はじめに、発表会の運営の係になった子供たちで集まり、会の大まかな流れや本番までのタイムスケジュールを決定しましょう。
⑵ 決定事項や進捗状況の共有
発表会の運営について決定したことは、全体に口頭で伝えるだけでなく、プログラムと一緒に壁面に掲示していくと、発表会に向けて学級がどんどん盛り上がっていきます。それぞれの係では、決まったことをもとに自分たちの活動を最も分かりやすく、そして楽しく伝えられる方法を考えて準備を進めていきます。その進捗状況を係活動コーナーで共有したり、全体で伝え合ったりすると、学級みんなで会をつくり上げていっている様子が感じられ、集団としての団結力も高まっていきます。
⑶ 教師の関わりについて
運営や係の活動は基本的に子供が主体で動いていきますが、教師はその準備の様子を見ながら適宜アドバイスをしていきます。自分たちでつくり出した発表会で大きな達成感を得られるようにしっかり見守り、成功体験につながる声かけをしていきましょう。また、準備の段階から友達の頑張りに気付き自分たちの頑張りを実感していけるように、折に触れてその主体的な姿を認め価値付けるようにします。
また、帰りの会などで各係の進捗状況を確認するようにしましょう。
係活動発表会の本番
互いを認め合う活動
みんなでしっかり準備をしてきた係活動発表会の本番です。それぞれが自分の役割を果たし、盛り上げていきたいですね。この発表会は、互いの係の活動や工夫を知りそれを認め合い、自分たちの活動に生かすことをねらいとして行う会ですので、それぞれの発表について感想を伝える時間を設定したり、メッセージを書いて渡したりする活動を行います。これにより、発表会に向けた自分たちの取組について達成感を味わうとともに、それ以降の係活動への意欲付けにもなります。また、すでに取り組まれている学級もあると思いますが、普段の活動についても「係活動コーナー」に「ありがとう」などのメッセージを書く場所を設けることで係活動がよいサイクルで回っていき活性化します。
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106