小4国語「ごんぎつね」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、有名な物語文の「ごんぎつね」です。この単元では、登場人物の気持ちの変化について着目して読み、感想を書く」という学習活動を行います。そのため、本時では子供たちが自分の考えを確かめたり、広げたりするだけでなく、まとめ方や考え方を理解できるような板書の工夫を紹介します。

監修/元京都女子大学教授
 同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子  

 

単元名 気持ちの変化に着目して読み、感想を書こう
教材名 
「ごんぎつね」(光村図書出版)

単元の計画(全10時間)

  1. 題名やリード文から物語を想像し、学習の見通しをもつ。
  2. 登場人物に焦点を当てて読み、登場人物の行動や気持ちを読み取る。
  3. (※と同様)
  4. (※と同様)
  5. (※と同様)
  6. (※と同様)
  7. 物語の結末について、登場人物の気持ちの変化を捉えながら考え、感想の視点をもつ。
  8. 登場人物の気持ちの変化について考えたことをもとに、物語の結末についての感想をまとめる。
  9. 書いた感想をグループで読み合う。
  10. 学習を振り返り、他の作品を読む。

板書の基本

〇国語学習において、板書が果たす役割は3つあります。

・1つ目は、学習過程において、考えのよりどころとなる語や文を確かめ、学習内容を適切に習得させるという役割です。これは、あらかじめ教材研究を通して、大事な語や文を整理しておき、どの子にも理解させるという心遣いが必要です。

・2つ目は、子供たちの発言記録のように、子供の考えを板書としてまとめていくものです。あらかじめ大切な語や文をもとに、子供たちの発言の大事なところを板書するという方法です。授業の後半では、発言を分散したり、まとめたり、つなげたりしながら考えを整理していくことが大切になります。

・3つ目は、本時の課題をもとにして、解決の方法や考え方、語と語のつながりや思考過程について、板書を通して分かりやすく示していく方法です。課題解決の過程を「見える化」する板書です。子供たちは、自分の考えを板書を通して確かめたり、広げたりするだけでなく、まとめ方や考え方を変えたりします。つまり、学習の仕方という視点で板書を活用するのです。板書を通して考え方のモデルを理解させるのです。

〇本板書は、3つ目の考え方で実践しています。物語の「結末」に視点を定め、感想を書くという「めあて」につながる〈「ごん、おまいだったのか、いつも、くりをくれたのは。」ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。〉の課題をもとに、文章全体と部分をつなぎながら、後半では登場人物に対する見方や考え方を働かせ、感想としてまとめることができるようにしました。

板書のコツ(7/10時間目前半)

小4国語 「ごんぎつね」京女式板書の技術 7/10時間目前半の板書
7/10時間目前半の板書

板書のコツ①

日付、題名を書き、めあて「物語の結末について、感想を書こう」を板書します。特に「感想を書こう」について補足し、感想の根拠となる語や文の意味を広げ、深めることが大切であるということを理解させます。次にカード〈「ごん、おまいだったのか、いつも、くりをくれたのは。」ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。〉を貼り、結末の文章を確認します。

板書のコツ②

「悲しい結末に…なぜ?」と板書し、子供たちの結末についての思いを自由に発表させます。板書においては、次のことに留意して話題が拡散しないようにしました。

①登場人物(ごん、兵十)の確認
教材研究において、「ごん」と「兵十」の心の距離について考えを深めることを通して、物語の結末を考えさせたいという意図があり、「ごん」を板書の上方に、「兵十」を板書の下方に示しています。

②2人の関係を表す言葉の選び方
2人の関係が動いた出来事「おっかあの死」をきっかけに、「ごん」と「兵十」の関係に関わる言葉を板書しています。「おれと同じひとりぼっちの兵十か。」を板書し、「同じ」「ひとりぼっち」に波線や傍線を引き、「ごん」の気持ちの変化に着目しました。ごんが「いたずら」から「はんせい・つぐない」へと変わっていることを板書で示しています。

③「ごん」の償いを確認
「ごん」が償いとして起こした行動(いわしを兵十のうちの中へ投げこんだこと、くりや松たけを山でひろって持って行ったこと)を「いわし」「くりや松たけ」と板書しました。

板書のコツ(7/10時間目中盤)

小4国語 「ごんぎつね」京女式板書の技術 7/10時間目中盤の板書
7/10時間目中盤の板書

板書のコツ①

〇加助と兵十の会話を聞いた「ごん」の気持ちの変化を示す板書です。子供たちは、「ごん」の償いに対して、加助、兵十、ごんそれぞれの考えや思いを読み取っていました。子供たちが読み取ったことを、加助と兵十は板書の下方に、ごんは板書の上方に示し、それぞれの思いを雲形で囲んでいます。

板書のコツ②

〇本時の学習を振り返り、ごんと兵十の関係を太線で示しました。ごんは、「おっかあの死」をきっかけに「おれと同じひとりぼっち」と兵十に心を寄せるとともに、償いとして兵十に寄り添ってきていることを赤チョークの太線で示しました。

一方、兵十は一貫してごんに対して「いたずらぎつね」のままという子供の考えを兵十からごんに向けて、太い矢印を白チョークで示しました。兵十の気持ちは変わらないので黄色チョークの太線で真っすぐ黒板の右から左へと結んでいます。

子供たちから「2人にはずれがある」という意見が複数あったので、線が交わらなかった2人の心の位置関係を波線で表し、「ずれ」と板書しました。この「ずれ」が悲しい結末につながったという結論に至りました。

板書のコツ(7/10時間目後半)

小4国語 「ごんぎつね」京女式板書の技術 7/10時間目後半の板書
7/10時間目後半の板書

板書のコツ①

〇板書の全体を読み返し、自分が「ごん」や「兵十」だったらと考える学習のまとめをするために、黒板の左上に「ごん」と「兵十」の吹き出しを板書しました。そして、最後の場面における「ごん」と「兵十」の心の中を考えさせました。

板書のコツ②

〇感想を書くという視点を本時のめあて「物語の結末について、感想を書こう。」をもとに、黒板右端の〈「ごん、おまいだったのか、いつも、くりをくれたのは。」ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。〉のカードを音読させました。そして、感想として、何を話題(テーマ)にして書くかということを考えさせました。その視点として次の3つを取り上げました。

1 「ごん」と「兵十」の心の変化を表す線(心情曲線)を文章としてどのように書くか。つまり、気持ちの変化を大事にした感想。
2 「ごん」の気持ちを知った「兵十」を考えるという物語の主題につながる感想。
3 兵十の立場で物語を読み返し、客観的に感想をまとめる。

以上の視点に役立つように、本時の板書を活用するように指導しました。

 

構成/浅原孝子

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