小学校卒業までのカウントダウン~スケジュール管理とプロジェクト作成
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卒業まで2か月あまりとなった1月。まさに今、卒業までの見通しをもち、タイムスケジュール管理を意識していくことが求められます。今から何を準備して、カウントダウンしていったら感動的な卒業式を迎えることができるのか。そのビジョンと実践例を取り上げます。
執筆/埼玉県東松山市立総合教育センター所長・稲垣孝章
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目次
卒業式の成功は事前準備にあり
心に残る感動的な卒業式にするために
感動の卒業式の基盤は、事前準備にあります。
学校として、学年として、また担任としてどのような理念で卒業式に臨むかによって具体的な実践が異なり、事前準備も変わってきます。
学校行事における儀式的行事としての特質を踏まえ可能な限り子供の思いや願いを生かすために、具体的な事前準備の計画を立案することが求められます。
まずは、適切な子供の実態把握を基盤として卒業式に向けたビジョンを構想する必要があります。次の資料は、ある小学校の6年生を対象に、年明けの1月に行った意識調査の結果です。
【中学校生活についての期待と不安】
・期待だけをもっている…………………… 0%
・不安だけをもっている……………………13%
・両方あるが期待の方が大きい……………25%
・両方あるが不安の方が大きい……………62%
この結果からもわかるように、卒業前の子供たちは期待に心を弾ませるだけではなく、不安を抱く傾向にあります。
ゆえに、その不安を少しでも解消し、中学校進学に向けての期待が大きく膨らむような指導を構想しながら、感動の卒業式に向けた約50日を充実した日々としていくように努める必要があります。
卒業までの明確なビジョンの設定を
1月に入ると、1年間のまとめとしての行事や卒業に向けて様々な活動が展開されます。居住区の中学校入学説明会(私立中学校等の受験)、最後の授業参観、クラブ発表会などの行事が考えられます。
また、一般的に児童会活動として全校を対象として実施されることの多い「卒業を祝う会(6年生を送る会)」や地域の方を迎えての「感謝の会」等の行事を実施する学校もあります。これらの学校としての行事を含めて、学年として、また学級担任として、卒業に向けた明確なビジョンをもってタイムスケジュールを管理していくことが求められます。
卒業に向けたタイムスケジュールの例
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充実した教育指導を行うために創造的な活動を
三学期…3か月といっても、実質的な登校日は50日程度となります。まさに、ビジョンに基づいた計画的な教育指導が求められます。しかし、学級担任としての学級事務は、児童指導要録等の必ず仕上げなければならない公文書の作成だけではありません。多岐にわたる事務内容ではありますが、先を見通し計画的に仕事を進めて、子供たちのために創造的な活動を展開したいものです。
具体的には、学級担任の思いを表現する活動として、次のような実践が行われています。
・卒業に向けて、一人ひとりに学級担任から「メッセージカード」を作成して手渡す実践。
・一人ひとりの努力を記した「学級担任としての卒業証書」を作成する実践。
・子供同士で互いのよさを認め合う「友達からの卒業証書」を作成する実践。
これらの実践は、行わなければならないものではありません。しかし、公文書等の事務仕事に追われてしまうようでは、このような創造的な実践に取り組むことは困難です。計画的な事務処理ができてこそ、教育指導も充実してくるものです。やらなければならないこと、子供のために実践したいことを明確にして、計画的な事務処理を行っていきたいものです。
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*呼びかけの言葉は、教師だけで決めることなく、子供たちの思いや願いを生かすようにします*
学年としての「卒業プロジェクト」の取組
卒業テーマ「届け 感謝の思いを…」
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6年間の思い出を出し合い、残りの50日をどのように過ごしていくかを話し合います。 (子供たちの思いや願いを生かすことを大切にします)
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卒業テーマの実現に向けて、5つのチームに分かれて「卒業プロジェクト」を開始します。(全員が役割を担い、協力して実践できるようにします)
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各チームの実践する内容を廊下に掲示して、学年全員で活動を共有します。(子供に責任を負わせるのではなく、どの子も意欲をもって協働して活動できるようにします)
【関連記事】
・卒業式プロジェクトPART1|ガイドブック作製が成功のカギ
・卒業式プロジェクトPART2|目的とタイムテーブルを明確に
思い出をつくる「下学年との交流」
似顔絵で下級生と思い出づくり
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「下級生との思い出づくり」として、1年生と6年生が互いに似顔絵を描き合い、認め合います。(作品の出来映えではなく、関わり合って活動することを大切にします)
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「下級生との思い出づくり」として、下級生と一緒に楽しく遊ぶために、事前にルール等の確認をしておきます。 (全員が楽しめるように、下級生のことを考えたルールを考えるようにします)
卒業を祝う会の取り組み
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「卒業を祝う会」の最初に、6年生の各クラスのよさやクラスの特徴などを紹介します(クラスについてどのような紹介をするか、子供たちが考えるように支援します)
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6年生の出し物は、教師が一方的に決めるのではなく、子供たちの思いや願いを生かします。(出し物の内容は、子供たちが中心となって考えるようにします)
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職員の出し物は、子供たちとの思い出を取り上げながら、心に響く感動的な演出にします。 (ここでは、職員の合唱の合間に、これまで担任してきた教師が思い出を語る場面を入れています)
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下級生から贈られたメッセージ入りのメダルを首からさげ、花のアーチをくぐって拍手の中、退場します。(6年生との別れに涙する1年生や下級生の姿を支える温かな雰囲気をつくります)
本棚のプレゼント
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本棚は子供たちが組み立てればできあがる市販の物とし、デザインに子供たちの思いを込めます。 (描くデザインについては、子供たちが話し合って決めるようにしています)
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子供たちが自分たちで決めたデザインに思いを込めて、協力して活動しています。(子供たちが効率よく活動できるように時間や場所、用具は教師が事前に整えておきます)
校舎の清掃
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一人ひとりが感謝の思いを具現化するために、役割分担を明確にして活動しています。(子供の安全を第一に考え、事故がないよう事前指導を丁寧に行います)
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寒い時期なので、体調管理に気を付けながら心を込めて真剣に活動しています。(子供の体調管理に十分配慮し、後片付けまでやり遂げるように事前指導を行います)
校長と交流する場をつくる
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卒業式の約2週間前からクラスの1グループが毎日交代で校長室に行き、校長から格言等のメッセージを預かりクラス全員に伝えます。(各グループのメンバーがクラスに伝える役割を担うように取り組みました)
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卒業プロジェクトに取り上げられた活動で、校長への感謝の会として6年生が企画しました。(体育館でトラブルがあったとの伝言から、校長へのサプライズの会で校長は号泣でした)
家族に感謝する会を催す
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家族に感謝する会では、音楽で学習した思い出の曲を合奏して披露します。(出し物の選定についても、子供たちの思いや願いを大切にします)
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家庭科で作ったプレゼントと感謝の思いを綴った手紙を、保護者に直接手渡しています。(感謝の思いを形にし、文章にしたり、言葉に表すことを大切にします)
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家庭科での学習を生かす場として、感謝の気持ちを込めておもてなしをします。(子供なりのおもてなしの仕方、創意工夫を大切にしていきます)
感謝の思いを伝える感謝状・卒業証書
先生方への感謝状
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子供たちが担任との思い出と感謝の言葉を取り上げ、パソコンで作成した文字の上から筆ペンで仕上げます。(子供と校長が、担任に内緒で作成しました)
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児童会の代表委員を中心に、校長に対して感謝の言葉を綴って作成しています。
(代表委員と児童会担当者を中心に、校長に内緒で作成しています*)
友達同士の卒業証書
子供同士で作成する卒業証書の取組は、教師の適切な指導の下に行うことが大原則となります。子供にゆだねる場面と指導すべき視点を明確にすることが大切です。
一人ひとりのよさの取り上げ方、文章表記の仕方など、細部にわたって配慮することがあります。ただ、子供たちにとって、生涯の宝物になることはまちがいないと思います。
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友達のよいところを出し合い、実行委員を中心に文章化し、パソコンで作成した上から筆ペンで仕上げていきます。(子供のよさを取り上げた文章を、教師が最終確認します)
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子供同士で作成した「世界にひとつの卒業証書」を、互いに手渡します。(子供同士が温かな雰囲気で授与し合う場を、教師が設定します)
資料提供/埼玉県公立小学校教諭・吉田 茜
『教育技術 小五小六』2020年1月号より