小6特別活動「よりよい話の聴き方 ~友達のよい相談相手になろう~」指導アイデア
今回は<「よりよい話の聴き方~友達のよい相談相手になろう〜」学級活動⑵ イ>の実践を紹介します。
友達と関わる過程を通して自己理解を深め、互いに協力し合って温かな人間関係を形成しようとする態度を形成し、よりよい学校生活にしていくことをねらいとしています。本時では、自分自身を見つめ直し、よい聴き手となるためにどうしたらよいかを考えていきます。
執筆/熊本県公立小学校教諭・有内文香
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
尚絅大学教授・平野 修
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑴ 6年生スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 情報通信端末の使い方を見直そう
7・8月 学級活動⑶ ウ 家庭学習をアップデートしよう
9月 学級活動⑵ イ 友達のよい相談相手になろう
10月 学級活動⑴ 係活動発表会をしよう
11月 学級活動⑴ 学級世界記録をつくろう
12月 学級活動⑴ 卒業文集を作ろう
1月 学級活動⑶ ア 中学校に向けて
2月 学級活動⑴ お世話になった方々へ感謝の気持ちを表そう
本時のねらい(学級活動⑵イ よりよい人間関係の育成)
長い夏休みを終え、2学期がスタートしました。久しぶりの友達との再会に緊張気味の子供はいませんか。思春期に差しかかるこの時期、心身ともに大きな変化が訪れる子供もいます。他者との関わり方や生き方についての悩みなど、様々な不安を抱く場合もあります。そこで本題材では、1人で悩みを抱え込んでしまう前に、友達と関わる過程を通して自己理解を深め、互いに協力し合って温かな人間関係を形成しようとする態度を形成し、よりよい学校生活にしていくことをねらいとしています。友達の相談相手となるためには、まずはよい聴き手になる必要があります。本時では、自分自身を見つめ直し、よい聴き手となるためにどうしたらよいか考えていきます。
また、友達から悩みを相談されたときに、いじめや深刻な悩みであると気付いた場合には、大人に相談することが大切であることを知り、自分に合った解決方法を決めて実践できるようにします。
1 事前の指導
心の状態についてのアンケート調査をする
事前に、今の心の状態や友達との関わりについてのアンケート調査を行います。その集計結果から、普段心配なことや悩みがあるときに、どうしているのかを把握します。
※アンケートは、ICT端末を活用することで、簡単に集計結果をまとめてグラフなどで表すことができます。
2 本時の指導
子供たちが課題を実感できるようにする(つかむ)
授業の導入では、事前のアンケート結果を提示し、心配なことや悩みがあるときに友達に聞いてもらったことや相談した体験について話し合う。
アンケート結果から何か気付いたことはありますか。
友達に悩み事を聞いてもらったことがある人が結構多いね。
聞いてもらうとうれしかったり、安心したりするね。
ぼくも前に友達に話を聞いてもらって、気持ちがすっきりしたことがあるよ。
私は、相談したのに、あまり聞いてもらえなかったことがある。
心配なことや悩みごとがあるときに、友達に話を聞いてもらえると心強いですよね。今日は、よい聴き手になるにはどうしたらよいかを考えましょう。
② よい聴き手とはどんな聴き方なのか考える(さぐる)
よい聴き方とはどんな聴き方か投げかけます。子供たちは、日々の生活や授業の中で、「話している人のほうを向く」「相手の目を見て話を聞く」など、どんな聞き方がよいのかについては理解できていると思います。そこで、聴き方についてのモデリングを示すことで、よりよい話の聴き方について考えることができるようにしました。
本実践では、学級担任が相談者役となり、スクールカウンセラーが聴き役を演じるロールプレイを予めビデオに撮影しておきました。内容は、「友達とちょっとしたことで言い争いになってしまい、謝りたいけれど謝るタイミングを逃してしまった」「友達に声をかけたいけれど、なかなか自分からは声をかけられなくて悩んでいる」など、学級の子供たちの実態に応じてシナリオを準備するとよいでしょう。
学級担任とスクールカウンセラーのやり取りの様子を見た後、気付いたことを発表し合います。
相手の目を見て話を聞くだけでなく、うなずきながら聞いていた。
とっても優しい笑顔で話を聞いていて、相談した○○先生は話しやすそうだった。
話を聞いてもらった○○先生が、とっても安心したみたいな笑顔になっていて、相手の話をしっかり聞くことってとっても大事なんだなあと思った。
子供たちの気付きを受けて、さらにスクールカウンセラーに、相手の話を聞く上で、「傾聴する」ことのポイントについて話をしてもらいます。
話を聞くうえで、今のように、相手の話をしっかり聞くことを傾聴と言います。「聞く」と「傾聴」には、次のような違いがあります。どんなことが違うか、皆さんも考えながら聞きましょう。
「傾聴」とは、ただ相手の話を聞くだけでなく、相手のことを理解しようと熱心に耳を傾けること。
1 「あなたのことを深く理解したい」という気持ちをもって聴く
2 相手の目を見て話を聴く
3 相槌を打つ(あなたの話を聞いていますよというサイン)
4 繰り返す(相手の思考を整理する手助け……共感を示す効果)
5 話をまとめる(あなたの言っていることは、こういうことなの)
自分たちが考えていた聞き方との違いを見付けたり、友達のよい相談相手になるには、よい聴き手となることが大切であることに気付いたりするようにします。また、話の内容や授業の展開について、事前にスクールカウンセラーと打合せをしておくことが、ねらいを達成するためには不可欠です。
「傾聴」することが相手を理解することにつながるということに気付いたところで、自分自身はどうだったか振り返ります。
これまで、話を聞いているつもりだったけれど、友達の話について「理解したい」という気持ちを強くもって聞いたり、「こういうことなんだね」と言ったりしたことはなかったなぁ。
相手の話は目を見て聞いていたけれど、話している相手の気持ちを考えて聞いてはいなかったと思う。
自分では、これまでしっかりと聞いていると思っていた子供たちも、もっとよい聴き方があると気付くことができるようにします。
③ よりよい聴き手になるにはどうしたらよいか話し合う①(見付ける)
見つける段階では、どうすればよりよい聴き手になるかを話し合います。まずは、ペアやグループで実際にロールプレイをしたり、傾聴の体験をしたりすることでどんな聴き方がよいのか考えていきます。例えば各グループで相談する人、聴く人と役割を決め、交代して体験します。体験後、互いに聴いてもらってどうだったか、聴いてみてどうだったか、感じたことを伝え合います。中には、その聴き方がいいなということや、もう少しこうしたほうがいいなということなども共有することで、自分の目標を決めるときにもヒントになります。
相談する人、聴く人と役割を体験してみましょう。
【ロールプレイシナリオの例】
ロールプレイの役割を交代するなどして、「相談相手として」話の聴き方のよかった点を互いに伝え合うようにします。
④ スクールカウンセラーの話を聴く
子供たちの中には、深刻な悩みを抱えている子供もいます。その際に、「先生には言わないで」などと相手が行ったときにどうしたらよいのかを考えることができるようにします。友達の話を聴いたときに、相談内容が深刻であったりいじめに関わる問題であったりした場合は、大人につなぐことができるようにすることがとても大切です。友達から「内緒にしてほしい」と言われた場合に、「適切な大人に相談することを勧めたり、友達の代わりに大人に相談したりする」ことが、友達のためにはとても大切であるということをスクールカウンセラーから説明してもらうようにします。
本実践では、スクールカウンセラーとのTTで行いましたが、学校の実態により養護教諭とのTTで行うことも考えられます。
⑤ よりよい相談者になるための解決方法を話し合う
よりよい聴き手や、よりよい相談者になるためにどんなことに気を付けたらよいでしょうか。これまでのロールプレイで気が付いたことやスクールカウンセラーの先生のお話を聴いて、どんなことにこれから気を付けていけばよいか、グループで話し合いましょう。
グループで話し合った後は、全体で話し合います。「傾聴」の体験をして感じたことや、一生懸命聴いてもらったとき、どう感じたかなど、共感してもらったときの心地よさや他の人の気持ちを受け止めることの難しさなども分かち合えるとよいでしょう。また、どうかかわるかについても、様々なアプローチがあることを知り、自分自身はどんな声かけや関わりをしてみたいか考えることができるようにします。
⑥ 自分の聴き方の目標を決める(決める)
「見つける」段階で、学級で話し合ったことや体験したこと、感じたこと、スクールカウンセラーにアドバイスしてもらったことを参考にしながら、自分自身はよい聴き手、よい相談相手として、これからどんな聴き方をするか考え、意思決定をします。どの場面でどんな聴き方をするか、具体的に書き、実践につなげるようにします。決めた目標をペアやグループで発表し合い、具体的な目標になっているか、実践後に振り返ることができるかどうかについて、アドバイスし合いましょう。
3 事後の指導
今回の実践は、「友達の悩みを聴く」という特別な場面だけではなく、日頃の友達との会話においても、よき聴き手であったかの視点で振り返りを行うようにしましょう。また、人権教育などと関連付けて、「よい相談者になることを意識する」週間を設定してみるのもよいでしょう。
実践後はワークシートに記録をするようにします。ICT端末を活用して、帰りの会などでどんな聴き方ができたかを紹介し、これからの生活の中でも生かしていくようにします。また、子供たちが考えた聴き方を教室に掲示して、よりよい関わりをみんなで共有し実践に生かすことも考えられます。
本題材では、単に上手な話の聞き方を習得するのではなく、一人一人が友達のよい相談者になる! という意識を高めることが大切です。これから子供たちが、自分自身の悩みや不安、辛い気持ちになったとき、相談できる相手がいるという土壌づくりのためにも、丁寧な取組をする必要があります。よりよい聴き手になるということは、相手理解にもつながっていきます。
【板書計画】
【ワークシート例】
【参考図書】
・小学校学習指導要領特別活動編(平成29年告示:文部科学省)
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106