小3国語「ちいちゃんのかげおくり」京女式板書の技術
今回の教材は、有名な物語文の「ちいちゃんのかげおくり」です。本単元の学習目標は、「文章を読んで理解したことに基づいて感想や考えをもつ力を身に付けること」。そのため、本時では、「文と言葉」に着目する板書、登場人物のしたことや会話を通してどのような生き方をしようとしているかということが分かる板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・古垣内千鶴子
教材名 「ちいちゃんのかげおくり」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全10時間)
- どのような物語なのかを想像した後、教材文を読み、初発の感想を書く。
- 教材文を読み、「問いをもとう」「もくひょう」を基に学習課題を設定し、学習計画を立てる。
- 第1場面を読み、教材文の叙述から登場人物や場所、出来事、かげおくりについて、これからの学習に続く大事な文や言葉を見付け、さらに詳しく読む。
- 2つの「かげおくり」の間には、どのような出来事があったかを考える。
- 行動や様子を表す言葉から、「ちいちゃん」の気持ちを想像し、第1場面から第4場面までの「ちいちゃん」の気持ちの変化を想像する。
- 第1場面と第4場面の「かげおくり」の様子を比べ、共通点や相違点を確かめる。
- 第5場面があることで、どんなことが分かるかを第4場面までと比べて考える。
- 「ちいちゃんのかげおくり」を読んで感じたことを、理由とともに文章にまとめる。
- 初発の感想と比べて、どのような読みの変容があったか、感じ方の共通点や相違点があったかを伝え合う。
- 単元で身に付けた力を生かして、読書への意欲をもつ。
板書の基本
〇教材「ちいちゃんのかげおくり」は、「かげおくりって遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。」という文から始まります。子供たちは、この1行から「かげおくり」って何だろうと思ったり、お父さんとちいちゃんのお話は何だろうと理解したりして、次の文へ目を移します。物語の1行目は、その物語に出合うまでのすべてのことをどこかに置いて、読み手を物語の中に包み込んでしまう力をもっています。
物語が楽しいと思えるのは、登場人物と出来事について想像を広げながら、物語の中で心が動いていることを実感するところにあります。その実感をもたせるために、授業でいろいろ工夫します。
本板書では、めあての「第一場面を読み、大事だと思う文や言葉を見つけよう。」ということを大事にしています。
特に、「大事だと思う文や言葉」としたのは、第1場面を読むということにおいて、特別な意味をもたせています。
第1場面で見付けた文が第4場面に出てくる、あるいは、第1場面で見逃しそうな言葉、例えば「青い空」が第4場面で特別な意味をもってくるなど、「大事」と思える要素が強いからです。そして、3年生の国語科の授業として「文と言葉」に着目するということはどういうことかを指導したいという意図を板書で表したいと考えたからです。
板書のコツ(3/10時間目前半)
板書のコツ①
〇 日付、題名を板書した後、「めあて」を説明します。第1場面がどこからどこまでかを補説した後、「第一場面を読み、大事だと思う文や言葉を見つけよう。」を板書します。特に、大事な「言葉や文」に着目させます。
〇続けて、「出征する前の日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんをつれて、先祖のおはかまいりに行きました。」と丁寧に板書し、ノートに写させます。これは大事な文や言葉を見付けるという学習の布石です。
〇ノートに写した文の中で大事だと思う語や文に線を引かせます。そして、線を引いた言葉を発表させます。「出征する前の日」「お父さん」「ちいちゃん」「先祖のおはかまいり」の言葉をチョークで囲んだり線を引いたりします。
言葉の意味を確かめるために、「先祖のおはかまいり」というところで次のような問答をしました。「お墓参りには、いつ行きますか」と尋ねると、「お彼岸」「お盆」「お正月」「命日」などと返ってきました。「そうですね。でも、この日は、『出征する前の日』ですね。明日はお父さんが出征してしまう、この日は、ちいちゃんの家族にとって特別な日ということです」というようにして、大事な言葉や文の読み方を指導します。
板書のコツ②
〇教科書では、お父さんの言葉を、次のように叙述しています。
「かげおくりのよくできそうな空だなあ。」
ここでは、「青い空」も板書しました。特に、意味を説明したり、問うたりはしませんでした。心にとどめておいてほしいと考えたからです。
〇言葉に着目して文章を読ませるときに特に大事にしてほしいと考えたのは、次の2つです。
1つ目は、登場人物です。
・かげおくりのよくできそうな空だなあ。→お父さん
・えっ、かげおくり。→お兄ちゃん
・かげおくりってなあに。→ちいちゃん
・ね。今、みんなでやってみましょうよ。→お母さん
というように、「かげおくり」という言葉に包まれながら登場人物が登場してきます。しかし、題名は、「ちいちゃんのかげおくり」です。この題名との関わりもこれからの読みにつながっていくとよいと考えています。
2つ目は、言葉の工夫です。「言いました」という意味を「つぶやきました」「ききかえしました」などいろいろな言葉で表現しています。お話のおもしろさにひかれて見逃してしまいそうな言葉に着目させることも大切だと考えました。
板書のコツ(3/10時間目後半)
板書のコツ①
出征後から始まる文で大事なのは、次の通りです。
・ちいちゃんとお兄ちゃんは、かげおくりをして遊ぶようになりました。
・かげおくりなどできなくなりました。
・広い空は、楽しい所ではなく、とてもこわい所にかわりました。
この文を音読させ、急激に変わっていくちいちゃんの家族の変化を理解させ、「出征後」と板書しました。
また、「広い空は楽しい所ではなく、こわい所となりました。」は、「青い空」と「かげおくり」を響かせて、急激に変わっていくその時代を理解させる文として板書しました。
板書のコツ②
〇第1場面の板書で大切にしたことは、次のことです。
1 文章の読み方を、具体的な指導を通して、「大事なこと」はイメージを広げることとともに、次の場面につながる言葉であることを理解させる板書。
2 登場人物のしたことや会話を通してどのような生き方をしようとしているかということが分かる板書。
3 言葉の工夫が理解できるような板書。
構成/浅原孝子