小6算数「資料の調べ方」指導アイデア《代表を選ぶ問題の解決について、データを分析して考える》

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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小6算数「資料の調べ方」指導アイデア
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執筆/富山県高岡市立五位小学校教諭・吉田陽
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、前・富山県南砺市立福光東部小学校校長・中川愼一

年間計画 資料の調べ方

単元の展開

第1時 2つの資料を比べ、それぞれの資料から平均値や最大・最小値を調べる。

第2時 資料をドットプロットに表し、最頻値と中央値という代表値を理解する。
▼ 
第3時 2つの資料のドットプロットの散らばりの様子や、代表値を調べて比べる。
▼   《ドットプロットの散らばりや代表値によるデータ評価》
第4時 資料を度数分布表に表し、散らばりの特徴を調べる。

第5時 度数分布表を基に柱状グラフをかき、散らばりの特徴を調べる。
▼   《柱状グラフの散らばりの特徴》
第6時(本時)代表を選ぶという問題の解決について、データを分析して考える。

第7時 様々なグラフの表し方を知り、その特徴や読み方を理解する。

本時のねらい

データの特徴や傾向に着目し、自分なりの根拠をもち、代表値を決め、問題の結論を判断する。

評価規準

データの特徴や傾向に着目して代表値を決め、問題に対する結論を判断しようとしている。(思考・判断・表現)

本時の展開

問題
学校で「クラス対抗スポーツ大会」が行われることになりました。「ソフトボール投げの部」は3日後です。そこで、クラスの代表者1名をA、B、Cさんのなかから決めます。3人のなかの誰を代表者にするとよいか、次の表を基にして考えましょう。

図表1

<資料>

図表2
図表3
図表4
図表5

A、B、Cさんのなかから、代表者1名を決めましょう。誰に決めればよいでしょう。

私は、平均値が一番高いAさんがいいと思います。平均的に遠く投げているのだから間違いないです。

僕は、最小値が一番大きいBさんがいいと思います。思うように投げられなくても、遠くまで飛んでいるほうが代表を任せられます。

2人の気持ちは分かるのだけど、そんなに簡単に決めてしまってもいいのかな。

優れた数値にだけ注目することに、疑問を感じているのですね。資料をもっとくわしく分析して、代表者を決める必要がありそうですね。誰を代表にすればよいと考えるのか、それは資料のどこから言えるのかについて、自分の考えをまとめてましょう。

学習のねらい
誰をクラスの代表にすればよいか、資料を基に考えよう。

見通し

ドットプロットやヒストグラムを見ると、Aさんたちの飛距離の安定感が分かりそうだ。(方法の見通し)

調子の悪い日もあったと思うから、一番悪い結果を除いて平均値を求めると、Aさんたちのより正確な力が分かりそうだ。(方法の見通し)

毎回の結果を折れ線グラフに表すと、Aさんたちの技能がどれだけ高くなってきたのか分かりそうだ。(方法の見通し)

注目した数値によって、代表にするとよい人が変わるなぁ。代表値を選ぶためのしっかりとした理由が必要だな。(結果の見通し)

自力解決の様子

A つまずいている子
数が多すぎるので、どの数値に注目すればよいか分からなくて困っている。


B 素朴に解いている子
数値に注目して代表値を選んでいるが、大きい数値に影響され、くわしい分析ができていない。


C ねらい通り解いている子
資料の数値だけでなく、他の数値から大きく離れた数値を外れ値として扱い、外れ値を抜いた平均値で比べたり、練習の後半部分の数値に目を付け、投げる技術の習熟度や練習の効果に注目したりして代表値を決めている。


学び合いの計画

本時までにドットプロット、ヒストグラムなどのデータの整理の仕方や、平均値、最頻値などのデータの特徴を調べるときの値(代表値)について理解を深めておくことが大切です。本時のように、代表者を決めるような問題場面の場合、与えられたデータの優れた数値だけに注目したり、<資料>の表の数値の優劣を多数決的に判断したりする子供の反応が予想されます。その判断の仕方は間違ってはいないのですが、データを短絡的に捉えて安易に結論を出してしまうことは、本時で望む子供の姿とは言えません。

本時の望む子供の姿は、例えば、Aさんのムラのある結果について、「⑬18mは失敗したのかもしれないから、その数値を除いて平均値を出したほうがAさんの本当の実力が分かるかもしれない」と考えたり、<資料>の数値ではやや劣るCさんの結果について、「ドットプロットや折れ線グラフに表すと、練習後半になるにつれて結果が伸びてきたことが分かるから、大会本番ではよい記録が望めそうだ」と考えたりする姿です。データが示す数値を自分なりにどのように捉え、どの方法で表し、どの結論に導くかにこだわって話し合う学習展開によって、主体的・対話的な学びが生まれるでしょう。

ノート例

A つまずいている子

ノート例1

B 素朴に解いている子

ノート例2

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

それぞれの資料を詳しく分析して、みなさんは誰を代表者にすればよいと思いますか。

私は、Bさんを代表にすればいいと思います。私は、ヒストグラムを基に考えました。みなさん、ヒストグラムの形に注目してください。AさんやCさんのヒストグラムは横に広がっていて、よい結果のときもあれば悪い結果のときもあることを表しています。でも、Bさんのヒストグラムは集まっていて、安定してよい結果が出せることを表しています。悪い結果が出ず、常によい結果が出せるBさんが代表にふさわしいと思います。

その考えも分かるのだけど、僕はBさんの最大値が50mに達していないところが引っかかります。いくら安定していても、50mも飛んでいなかったら、他のクラスに負けてしまうと思います。クラスの代表者には絶対に勝ってほしいです。

僕もAさんを代表にすれば勝てると思います。<資料>のなかの一番の数値に色を塗ってみました。すると、3つも一番を取っているAさんは3人のなかで一番優れていることが分かります。

図表6

でも、これだけではないんです。僕は、前に習ったドットプロットにして見たら、すごいことが分かりました。3人のドットプロットを並べて、40m以上飛んだ回数を数えてみると、Bさんは6回、Cさんは7回なのに比べて、Aさんはなんと9回も飛んでいます。こんなにたくさん飛ばせるAさんを代表にすれば、絶対に勝てると思います。

図表7

なるほど。Aさんを代表にする理由が2つもあるなら、Aさんを代表にしたいなぁ。

私はムラのあるAさんには安心して任せられないなぁ。でも、安定感のあるBさんだと勝つことは難しいかもしれないし……。

みなさんは、AさんとBさんのどちらかで悩んでいるようですが、Cさんは代表者になる可能性はありませんか。

絶対にありません。表のなかでも一番は1つだけだし、ヒストグラムもAさんの次にムラがあるから、Cさんが代表になっても勝てる可能性は低すぎます。

〈C1さん〉待ってください。私は、代表者にCさんを選びたいと思っています。

どうして。よい結果が少ないCさんを選んでも勝てっこないよ。

〈C1さん〉私の理由を聞いてくれますか。私もドットプロットで考え始めたのだけど、注目したのは「○回目」なんです。

図表8

〈C1さん〉Cさんは9回目以降、ずっと40m以上飛ばし続けていることに気が付きました。これをもっと分かりやすくするために、3人の練習結果を折れ線グラフで表してみました。すると、Cさんは練習を重ねるごとに成長していることが分かりました。表の数値では低いものが多かったかもしれませんが、大会本番に向けて調子が上がっているCさんは一番期待できると思いませんか。

図表9
図表10
図表11

本当だ。折れ線グラフだと、Cさんがぐんぐん力を付けている様子がよく分かるね。

それにBさんも意外と結果にムラがあることが分かるよ。ヒストグラムでは安定して見えていたのに、グラフの表し方でこんなに違って見えるなんて不思議だなぁ。

AさんとBさん以外に、Cさんも代表者の候補に挙がってきましたね。みなさん、代表者は誰にしましょうか。

う~ん……。誰にしよう。迷うなぁ。

先生、まだ大会まで3日あるんですよね。この3日間、もう少し様子を見ることはできませんか。

どうしてそう思うのですか。

3人とも実力があることが分かっているのだから、残り3日でさらに記録を伸ばす可能性が3人ともあると思うんです。

残り3日間のデータも加えて、もう一度分析し直したらそれぞれの数値やグラフが変化するかもしれないからね。

この段階では代表者を決められないということですね。そういう結論もありだと思います。他のみなさんは、どうですか。与えられたデータをさらにくわしく見直すことで、より深い考えで結論を見いだせるかもしれませんね。

僕も、このあとの3日間のデータを付け足して考えてみたいです。

私もです。そうすれば、より多くのみんなが納得できる結論になると思います。

では、代表者を決めるのはもう少し待つとして、3人のここまでの記録の特徴を整理しておきましょう。それぞれどのような特徴があり、それはどのデータから分かったのでしょう。

Aさんは3人のなかで一番遠くまで飛ばしていました。表やドットプロットから分かります。その反面、一番飛ばなかった記録も出ていて、記録にムラがあるのが特徴でした。ヒストグラムの広がりや折れ線グラフでも、それが表れていました。

Bさんは、同じくらいの記録が安定して出せるのが特徴でした。ヒストグラムの広がりが狭く、最頻値が一番大きいことからも安定感があることが分かりました。

Cさんは、練習の後半に記録を伸ばしてきたのが特徴でした。折れ線グラフにすると、ぐんぐん記録が伸びている様子がよく分かりました。45m以上飛ばしている記録の割合の多さからも、本番でよい記録が出せそうな予感が一番します。

データをくわしく分析して、3人の記録の特徴を押さえることができましたね。

学習のまとめ

<3人の特徴>

図表12
  • 3人のデータには、それぞれによいところがある。
  • 平均だけで、簡単には決められない。
  • 誰を代表にするかという考えを説明したり聞いたりするときは、データのどこを理由にしているのかをはっきりさせることが大切だと思う。
  • データをいろんな点からくわしく見たり、さらにデータを付け足したりして調べていくと、代表を決めるという問題を解決することができる。

下矢印

  • 多角的にデータを見ていくことで、よりよい結論を出していくことができる。
  • データを使うと、考えの理由を説明しやすくなる。

評価問題

15日分のデータをみんなでよく調べました。でも、みんなを納得させることのできる結論にまではまだなっていません。この先、どのようなことをすれば、みんなに納得してもらえる結論になると思いますか。あなたの考えを書きましょう。  

子供に期待する解答の具体例

  • もう一度、平均値や最頻値などを計算し直して、計算ミスがないか確かめたい。
  • データを1つ1つ見直して、最低値や最高値の測定にミスがなかったか、確かめたい。
    (データを再吟味して、より信頼性と妥当性のある結論にすることを考えている)
  • 後半の5日間だけを取り出して、結論を考えてみたい。
    (練習効果や記録の伸びに着目して、大会で期待できる数値を考えようとしている)

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿

データの特徴や傾向に着目して、代表値を決め問題に対する結論を判断するためのよりよい方法を考えようとしている。

感想

  • 簡単に数値だけで判断してはいけないことが分かりました。数値を通してAさんたちのことを知ろうとすることで、データをくわしく分析することができると思いました。
  • データの分析で大切なことは、たくさんのデータを総合的に見たり、データの一部だけに注目して考えたりするなどの工夫をしたりすることだと考えました。
  • 大きな数値に目が行きがちだったけれど、データを、くわしく見ることでAさんたちの成長の様子を見ることができました。今日習った見方をすることで努力する姿が伝わるので、データを分析することはとても大切だと思いました。
  • データをくわしく見ることで、資料のもつ本当の情報に触れることができた。この見方は、学校生活の様々な場面でも役に立つと思うので生かしていきたい。
  • データの一部に注目したり、本番に向けて調子を上げている人を見付けたりするなど、僕にはない見方をしている人がいて参考になった。データを広く多角的に見ることの重要性を感じました。

板書例とワークシート

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イラスト/横井智美

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