学校現場で熱中症から子供を守る

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猛暑の夏が続く昨今、熱中症への意識が高まっています。熱中症は正しい予防法を知り、気を付けることで防ぐことができます。特に子供は大人より体が小さいために熱中症にかかりやすくなります。学校現場で子供の熱中症を防ぐために熱中症のメカニズムやどのようなことが大切かを帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長・三宅康史先生にうかがいました。

監修/帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長・三宅康史

スクールゾーン写真

1熱中症のメカニズム

熱中症は気温が高いとき、湿度が高いときに起こりやすくなります。屋外では直射日光と太陽からのふく射熱(日射で温まった路面や地面、壁から出る熱)で体が熱くなり熱中症を引き起こしやすくなります。いわば、頭から熱せられ、熱せられたフライパンの上を歩いているようなものなのです。

なぜ体が熱くなるとよくないのか
① 脳、肝臓、腎臓などの臓器は熱に弱いため、体の機能が正常に働かない状態になる。
② 汗で水分が失われ血液が濃くなると、流れにくくなり、各臓器に酸素やエネルギーが送られない状態になる。そのため、体の機能が低下する。

体が熱くなった状態が熱中症を引き起こすきっかけになるのです。

2熱中症の症状

熱中症には前提条件があります。
前提条件:気温が高いところに長く居続ける。

その後、次のような症状がある場合、熱中症の危険性があります。

□ 体がだるい
□ 頭痛
□ 吐き気
□ 手足のしびれ
□ その他、体調が悪い

先ほどまで元気だった子供にこういう症状が現れたら熱中症を疑います。

また、現在の環境や子供の状態も熱中症を引き起こす要因になります。環境や子供の状態をよく観察することが大切です。

〈今いるところの環境チェックと体の状態チェック〉
□ 教室や部屋は暑くないか。
□ 冷房のスイッチは入っているか。
□ 暑さ指数は危険ではないか。
□ 睡眠は十分か。
□ 朝食は食べたか。
など。

子供本人が自分の体や環境の状態に気付くのは難しいため、先生や大人が子供の体や環境の状態を把握して、症状が出る前、出始めたときなどに気付くことが重要です。

3熱中症の予防法

晴れの写真

運動会などの屋外での活動時 
・体調が悪いときに子供がすぐに言える環境をつくっておく。
・休憩時間を多くとる。
・休むときには、冷房の効いた室内で休憩をとる。
・いつでも水分が補給できるようにしておく。
・冷えた飲み物を飲む時間をつくる。
・子供に塩飴や塩分を含むタブレットを配付するなど、塩分補給をするようにする。
・氷枕、保冷剤などの応急処置ができるものを活動する場所の近くに置いておく。
・活動後はクールダウンを行う。

教室などでの活動時
・直射日光が当たらないようにする。
・特に直射日光が当たる窓側の子供に気を付ける。
・カーテンを引き、直射日光をさえぎる。
・窓の外側に緑のカーテンやタープ(日よけ)を用意し、直射日光をさえぎる。
・冷房をかけておく。
・水分を自由に補給できるようにする。
・先生が、体調の悪い子を把握しておく。

保護者との協力
熱中症を予防するために、保護者へは次のことをお願いしておきましょう。
・連絡帳のやり取りなどで、子供の体調が万全かどうかを知らせてもらう。
・行事やプール授業がある前の日には、子供を早めに寝かせるようにしてもらう。
・水分が足りなくならないように大きめの水筒にしてもらう。
・子供に朝食をとるようにしてもらう。

子供は大人より体が小さいため、体が熱くなるのが早く、また、道路や地面からのふく射熱も大人より影響を受けやすいのです。そのため、大人より熱中症を引き起こしやすいと言えるでしょう。特に、学校行事やクラブ活動など、「友達ががんばっているから、自分もがんばらないといけない」といった弱音を吐けない状況のときには、周りの先生や大人が子供の体調に気を付けることが重要です。屋外では帽子をかぶるようにさせましょう。

4熱中症の応急処置

熱中症の応急処置の合言葉は「ファイヤー(FIRE)」

F(Fluid):水分、液体(「古井戸」と覚えると覚えやすいでしょう)→水分を補給する。本人が水を飲める状態のときに飲ませる。このとき、塩分も補給しよう。ただし、おう吐や意識がない状態のときには、誤嚥(ごえん)の危険性があるので、無理に水を飲ませるのは避ける。

※心疾患や腎臓病のある子供では、水分を摂ることで悪化する場合があるため注意が必要です。

I(Ice):氷→体を冷やす。氷枕や保冷剤で頭、首筋の両側、わき、脚の付け根など太い血管が通っている部分を冷やす。水に濡らしたタオルで冷やすこともできる。氷枕の代わりに、コンビニエンスストアなどで販売しているビニール袋に入った氷も便利。

R(Rest):休む→冷房が効いた室内、風通しのよい日陰など、涼しい場所へ移動して、体を休ませます。

E(Emergency):緊急事態→救急車を呼ぶ。


帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長
三宅康史先生

2学期のリスタートの準備を
夏休みには不規則な生活に陥りやすいため、2学期に入る前までに規則正しい生活を送るように生活習慣を整えることが大切です。熱中症だけに限らないのですが、基礎体力をつけること、丈夫な体、規則正しい生活が大切です。そのため、日頃から適度な運動、適切な食事、十分な睡眠を心がけましょう。保護者には、子供に朝食を食べさせるように協力してもらってください。特にみそ汁とご飯などの和食が熱中症予防に役立ちます。

取材・文・構成/浅原孝子

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