小2特別活動「係をきめよう」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小2特別活動「係をきめよう」指導アイデアのバナー

前文部科学省視学官監修による、小2特別活動の指導アイデアです。9月は、学級活動(1)「係をきめよう」を紹介します。

1学期に様々な議題や題材で学級活動に取り組んできた子供たちが、学級生活のさらなる充実を図ることができるよう、2学期も引き続き取り組んでいきます。その2学期のスタートとなる9月の学級会は、「かかりをきめよう」を議題とし、よりよい学級生活をつくることができるように話し合ったり実践したりしていきます。

係活動を始める上で、当番活動との違いや、自分の好きなことをすればよいわけではないことなどを事前に確認する必要があります。また「○○会社」のような企業をイメージした係活動を助長すると、おのおのに役職をつけるような組織になることがあり、その結果、メンバー間で序列が生まれてしまうことも考えられます。

そこで、事前に全体に、係活動を進める上での上記のような留意点を説明し、共通理解を図ったうえで、話合いを始めることができるようにします。

執筆/埼玉県公立小学校校長・野村佐智夫
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
 埼玉県公立小学校校長・野村佐智夫

年間執筆計画

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04月 学級活動(1) どうぞよろしくの会をしよう
05月 学級活動(2)ア 身の回りの整理整頓
06月 学級活動(1) クラスの歌をつくろう
07月 学級活動(1) 1学期がんばったね会をしよう
09月 学級活動(1) 係をきめよう
10月 学級活動(3)ウ 楽しい読書
11月 学級活動(1) クラスの記録大会をしよう
12月 学級活動(2)ウ 病気の予防
01月 学級活動(1) クラスのカルタを作ろう
02月 学級活動(3)ア もうすぐ3年生
03月 学級活動(1) 思い出集会をしよう

本実践までの本学級の状況

4月から学級会の経験を積み重ねてきたので、子供たちは「学級会とはどのようなものか」が、分かってきました。友達が司会グループとして活動している様子を見ているので、初めて担当する役割でも張り切って取り組もうとしている様子も多く見られるようになりました。

子供たちはこれまでの当番活動や係活動に協力し合って取り組んできました。今回は、「係とはどういうものなのか」「その係がどんな活動をするものなのか」について、イメージの共有化を図るようにすることが、話合いのポイントになります。そこで、教師は、事前の段階でも本時でも、状況に応じてイメージの共有化を図ることができるような助言を行います。

また、今回の司会グループのメンバーは、2年生になって初めてその役割を担当する子供たちなので、これまで同様、子供たちだけでできそうなところは見守り、心配な様子があるときは子供たち一人一人の状況に合わせた指導と支援を行うなど、「教師も一緒に」のスタンスで進めていきます。

事前の活動

【学級全体】係活動と当番活動の内容の違いの確認

今度の学級会では、みなさんからの提案を受けて、2学期の係について話し合っていきます。どんな係をつくるか、1学期と比べてよりよいクラスになるように、これまでと少し変えていきましょう。

これまでとどんなふうに変わるんですか?

今までは日直などの当番だけでなく、窓開けや電気を消すなどの係の仕事もがんばってきましたね。でも、当番と係はちょっと違うんです。
当番活動と係活動の違いを簡単に言うと、【その役割がないと困るのが当番】【その役割があると困らないけど、活動するとみんなが過ごしやすくなって、なかよく笑顔になるのが係】です。
例えば、ないと困るクラスの役割って、何がありますか?

給食当番はないと困ります。

そうですね。給食当番がないと、配膳をする人がいなくて困ってしまうね。掃除当番がないと、ごみが残った場所がそのままになってしまうね。日直がいないと号令をかける人がいないし、あいさつができないね。明かりをつけたり消したり、窓を開けたり閉めたり、そういったこともその役割の人がいないと暗いまま、閉まったままにになってしまうね。
こういう役割は当番です。毎日の生活に必要なお仕事をみんなで交代しながら進めていきます。そうでなくて、みんなで工夫していくものが、係になりますよ。

そうか。でも、係って、どんなことをしているんだろうな。

私のお姉ちゃんが、係のことをおうちで話していたことがあるから、どんな係があるか教えてもらおうかな。

今、いい話が聞こえてきましたよ。家族や知り合いの上級生に、どんな係があるか、どんな係があったらクラスが楽しくなったり過ごしやすくなったりするかを聞いてみるのもいいと思います。自分たちで考えるのも、もちろんいいですよ。考えがうまく浮かばないときは、相談に乗りますからね。

【司会グループ】学級会ノートに書かれた意見の確認

司会グループと提案者、教師で事前に計画委員会を開いて、出された意見を確認したり、話合いの流れについてシミュレーションしたりします。

いろいろな係が提案されているよ。

この「遊び係」と「レク係」って、同じなのかなあ? 違うのかなあ?

書いてくれた人に、教えてもらおうよ。聞きに行ってみよう。

【全体】学級会ノートに書かれた意見の確認

【司会】みんなが書いてくれた意見を短冊にまとめたので見てください。何か質問はありますか?

「誕生日係」って、どんなことをするんですか?

【司会】「誕生日係」を書いてくれた○○さん、どんなことをする係なのか教えてください。

はい。その日にお誕生日になった人に、帰りの会のときに「おめでとう」って言ってあげる係です。

あ、それはいいね!

学級会ノートに書かれた言葉だけでは確認できない内容もたくさんあります。そのようなときは上記のように確認する段階を入れることで、事前の説明も当日の進行も滑らかなものになります。これも「イメージの共有化」を図る1つの方法になります。

学級会ここがポイント! その6【イメージの共有化】

出された意見がどのような内容を示しているのか、それが分からないと話合いを進めても齟齬(そご)が生じてしまいます。そこでポイントになるのが、「イメージの共有化」です。その意見はどのようなものを表しているのか、全員が分かるように確認をしていきます。

「これはどんなものなの?」と投げかけたり、「こういうことかな?」と代弁したり、「実際にしてみようか?」「紙に書いてみて」と促したりすることで、その文言の指すイメージがより明確に共有化できるようになるのです。これは、教師が橋渡し役になって進めていきます。

学級会ノートに書かれた意見については事前に、学級会の中で出された意見についてはその場で、それぞれ確認をしていきます。多少、時間はかかりますが、これをすることで、話合いの深まりや話合い活動・実践活動への参加のしやすさにつながっていきます。

※「学級会ここがポイント! その1」は、小2特別活動「どうぞよろしくの会をしよう」指導アイデアをチェック。
※「学級会ここがポイント! その2&その3」は、小2特別活動「クラスの歌を作ろう」指導アイデアをチェック。
※「学級会ここがポイント! その4&その5」は、小2特別活動「1学期がんばったね会をしよう」指導アイデアをチェック。

◆学級会ノート例

学級会ノート例

本時のねらい

学級生活をよりよくしようとするために、活動の見通しが立つ係を話し合って決めることができるようにする。

本時の活動

学級活動(1)議題「係をきめよう」

〈提案理由〉
2年1組では、これまで学級会でいろいろなことを話し合って、いろいろなことをしてきて、とても仲よくなってきました。でも、まだ2学期にどんな係で活動するか決まっていないので、係を決めたいと思って提案しました。仲よく協力できる係を決めて、2年1組がもっと楽しいクラスになったらいいなと思います。

〈めあて〉
2年1組がもっと仲よくできるような係を決めよう。

〈話し合うこと〉
①どんな係をつくるか  
②係の分担

話し合うこと①「どんな係をつくるか」

ぼくは、「遊び係」がいいと思います。理由は、この係があるとみんなが一緒に遊べるのでクラスがもっと仲よくなると思うからです。

私は、「誕生日係」がいいと思います。理由は、誕生日係さんがお祝いしてくれると、その人もみんなもうれしい気持ちになると思うからです。

私は、「飾り係」がいいと思います。理由は、その月に合う飾りを折り紙で作って貼ると、教室が明るい感じになるし、みんなも見たくなると思うからです。

ぼくは、「遊び係」がいいと思います。理由は、この係があるとみんなが一緒に遊べるのでクラスがもっと仲よくなると思うからです。

私も「遊び係」がいいと思います。みんなで遊ぶと楽しいから、休み時間に何の遊びをするか決める人がいたらいいと思ったからです。

私は、「本係」がいいと思います。理由は、本係がおすすめの本を紹介したら、みんなが本を読むのが好きになると思うからです。

私は、「ぬり絵係」がいいと思います。理由は、雨の日にぬり絵があると教室でも仲よく過ごせるからです。

ぼくは、○○さんと同じで、「誕生日係」がいいと思います。理由は、誕生日にお祝いされると、みんなもうれしい気持ちになると思うからです。

みなさん、ちょっといいですか。○○さんや△△さんが言ってくれた言い方、すごくよかったです。どこがよかったのかというと、「ぼく“も”」「□□さんと同じで」って言っていたんですよ。これは、友達の発表を、自分と同じかな? 自分と違うかな? って考えながら聞いているからできるんだよね。みなさんも友達の意見と似ているときや同じときには「ぼくも」「私も」という言い方で言えるように、だんだんしていこうね。

クイズ係となぞなぞ係は似ていると思います。一緒にしたらいいと思います。

だったら「クイズなぞなぞ係」にしたらどうかな。

いい考えだね。

学級会で自分の考えを、理由を添えて発表できるようになるのは素晴らしいことです。ただ、そこにばかり教師の意識が向いてしまうと、話合いではなく意見発表会になってしまいます。「話合いは、聞き合い」という言葉もあるように、発表することと同じくらい、聞くことも大切にできるような指導を行いましょう。ただし、その都度、話合いの途中でほめるのではなく、機をとらえて行うことが大切です。

話し合うこと②「係の分担」

これから話し合うこと①で決まった係の中で、自分はどれにするのかを決めていきます。決まっていることにもあるように、1つの係に3人から6人くらいずつ入って、活動を進めていきます。

自分の好きな係に入れるわけじゃないんですか?

自分の入りたい係に入って活動することももちろん大切ですよ。でも、この学級会の前にも話したように、一人一人が自分のしたいことをするのが係活動ではないです。だって、みんなで話し合って決めた係なのにその係が0人だったら、せっかく話し合った意味がなくなっちゃうよね。1つの係に15人いても大変で、しっかり活動できませんよね。もちろん、みんなの希望を教えてもらったうえで、大体3~6人になるように調整をします。だから、中には自分の希望していた係から移ってもらう人も出てくるかもしれません。

そうなんだ。でも、どの係でも楽しそうだからいいや。

係(役割)ごとに計画的に、継続的に活動を進めていくうえで、一人一人の意欲や希望は大切ですが、みんなで決めたことをみんなで協力して取り組んでいくことが、学級活動ではとても大切です。そこで、分担を始める前の確認として、上記のような見通しを伝えておきます。

このことは、今回の係の分担に限らず、学級会で役割分担を行うたびに、同じように進めていくことで、当初の希望から別の役割に移動することも自然にできるようになってきます。その際、いつも同じ子供が移動しているとならないような目配りと声かけを行っていきましょう。

学級会ここがポイント! その7【役割分担】

役割分担を行うときは、以下のように進めていきます。 

①役割を整理し、決定する 
②役割ごとに何人くらいなら進めやすいか、必要に応じて大まかな人数を確認する 
③移動式ホワイトボードに役割を記し、その下に名前マグネットを貼る
(移動式ホワイトボードに貼るのは、学級会が終わっても 確認しやすくするため)
④人数に過不足があれば、「誰か移動してくれる人はいますか」と投げかけて調整する

このような進め方を毎回、行っていくことで、「自分が当初したいと思っていた役割にはならなかったけど、別の役割でもよかったな!」という思いをもつことができる子供が増えていきます。そこから、「このクラスのみんなですることだから、何になっても、誰と一緒でも大丈夫」という思いの醸成につながっていきます。ただし、厳密に「〇人でなければならない」「男女2人ずつ」などのように決めつけず、子供たちの思いをできるだけ生かすようにします。

学級活動では、このように様々な人間関係形成を図ることができるよう、意図的、計画的、継続的に取り組むことが大切です。

移動式ホワイトボードへの掲示例
ホワイトボードへの掲示例。決定した各係の下にメンバーのネームプレートを貼る。

◆板書例

小2特別活動「係をきめよう」指導アイデア 板書例

事後の活動

決まったことをもとに相談からスタート

係ごとに、メンバーは誰がいるのか、どんな活動を行うのかを相談し、活動に取りかかることができる時間を、学級会の後に時間を空けずに設けます。その上で、定期的に相談したり実践したりする時間も、できるだけ定期的に設けます。そうすることで、活動に継続性が生まれ、人間関係も滑らかに構築されていきます。

活動時間は休み時間がほとんどになりますが、「水曜の朝の時間は係活動の時間」などと確保できるようにします。子供たち任せだと取り組み方に違いが出てしまい、それが不安や不満につながることも少なくありません。また、教師が状況を把握し、必要に応じて助言も行っていきます。

係ごとのポスターを作って役割意識を高める

各係でどのように活動するか相談している様子。
各係でどのように活動するか相談している様子。

係ごとにポスターを作ることも、活動紹介や役割意識の高まりに効果的です。その際、以下のような点に留意します。

【係の名称】
その係の活動内容が分かるようなものにします。

【メンバー】
メンバー間で序列が生じないような書き方にします。写真を入れて、誰がメンバーかをより分かりやすくすることもできます。
リーダーを決める場合は固定せず、「今週のリーダー」のような輪番で全員が経験できるようにするとよいでしょう。

【活動内容】
スタートの段階で主に取り組んでいくものを書きます。活動していく中で変わることも出てきます。
クラスみんなへの「お願い」ではなく、「これからがんばりたいこと」「こんなことをやるので、みんなで楽しみにしていてください」などのメッセージを書くのもよいでしょう。

お知らせボードなどを設置して、クラス全体との関わりを高める

係活動の報告をするお知らせボード。各係の紹介とともに、ありがとうカード、リクエストカードを入れるポストが設置されている。
係活動の報告をするお知らせボード。各係の紹介とともに、ありがとうカード、リクエストカードを入れるポストが設置されている。

係ごとのポスターの近くに、お知らせボードや係ポストを設けることも、活動の充実だけでなくクラス全体との関わりが生まれやすくなることにつながります。

係ポストには、用意しておいた「この間の○○、楽しかったよ。」のようなありがとうカードや、「今度こういうこともしてください。」などのリクエストカードを書いて、その係のポストに入れるようにします。それが相互に進んでいくと、活動の充実やみんなから認められる喜びにつながっていきます。

思い出かざり係のポスター。めあて:アルバム思い出を残す。活動内容:思い出ができたとき、かざりに思い出を一言書いて残す。
思い出かざり係のポスター。めあて:アルバムに思い出を残す。活動内容:思い出ができたとき、かざりに思い出を一言書いて残す。

活動を始めてみると、自分たちが好きなことをしているだけでクラス全体との関わりをもつことができていない係も出てくるでしょう。そこで、状況を見ながら助言し、その係がクラスのみんなのことを考えて活動できるようにしていきましょう。

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