小1 国語科「すきなもの、なあに」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「すきなもの、なあに」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:すきなもの、なあに(光村図書・こくご 一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・廣瀬修也

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、自分が好きな物やこととそのわけを言葉によって伝え合います。さらに、伝えた内容を文章に表し、読み合うという2段階の言語活動を行います。

まず、自分が好きな物やことの中からどれを伝えるかを決めます。学校で取り組んだこと、家庭でやっていること等、児童が自分の経験を思い返しながら、話す事柄を選べるようにします。その上で、なぜそのことが好きなのかという理由も考えます。

次に、伝えた内容を文章に表します。「好きなこと」と「理由」、この2項目が明確になるように、文のまとまりや読点、句点に気を付けながら書くようにします。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、まず自分の好きな物について、絵を描いてペアで伝え合います。話すことに苦手意識をもっている1年生にとっても、ペアなら自分のことを話しやすいでしょう。

話し手は、「自分が好きな物」と「その好きな物についての説明」を伝えます。
例えば、「私は、動物が好きです。家で飼っている犬といつも遊んでいます。」や「僕は、鬼ごっこが好きです。休み時間に、校庭で、氷鬼をやっています。」というように、詳しく伝えるための事柄を選ぶ経験も、本単元でできます。

聞き手は、相手の話を受けて質問をします。質問の内容は、「好きな理由」「好きになったきっかけ」等が考えられます。質問をするためには、相手の話を聞き、理解する必要があります。「質問をする」ことを活動の中に設定することで、相手の話を集中して聞く習慣もつけられるでしょう。「話を聞き、理解すること」は、他教科や学校生活全般で必要になる資質・能力だと言えます。

ペアで伝え終わった後は、少し人数を増やして生活班等のグループで伝え合います。ここでは、ペアで伝えたときに質問された内容を加えて、好きな物を伝えるように児童たちに話しましょう。

次の活動では、伝えた内容を文章に表し、読み合います。

話したり聞いたりするだけの活動では、言葉はその場だけのものとなります。もちろん、児童の記憶には残りますが、より伝わりやすいように、また自分が伝えたいことを形に残すという意味でも、文章に表すことが重要です。

まずは、ペア・グループで伝えた内容を文章で表します。教科書に載っている文章例を全体で確認し、自分の名前・好きな物・好きな理由を書くようにします。文章を書いたら、友達同士で読み合います。読みあったら、感想を伝えたり質問をしたりするようにしましょう。このように、相互交流を積み重ねることで、言語感覚を養えるようにします。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 自分の好きな物を考え、言葉で伝える

好きな物について伝えようとするとき、児童たちは楽しい気持ちになり、なんとかわかってもらおうとするのではないでしょうか。自分が好きだなと思うことについて、たくさんのことを想像できるはずです。その物について、自分がどうして好きになったのか、普段その好きな物とどのように関わっているか等、どんな言葉で伝えたらわかってもらえるかを、1年生なりに一生懸命考えようとすることが想定されます。児童のそういった思いを大事にしながら、教師はどのような観点で伝えたら良いかを示すことが必要です。

「私は、〇〇が好きです。」と言った後、何を話せばいいのかわからない、もうこれで十分伝わっただろうと思う児童がいるかもしれません。そこで、「好きになった理由を話してみましょう。」等の助言をすることで、より児童たちが主体的に学べるようにしていきましょう。

〈対話的な学び〉 好きな物について、話し言葉・書き言葉で伝え合う

この単元では、「話す・聞く」ことによる伝え合いと、「書く」ことによる伝え合いを設定しています。

話し言葉によって、好きな物とその理由をただ伝えるだけでは「対話的な学び」にはなりません。
「対話的な学び」のためには、聞き手も重要となります。話し手から聞いた内容について、感想を言ったり質問をしたりします。話が一方通行にならず、相互交流になるようにしましょう。
どんな感想を言ったり、何を質問したりすれば良いかイメージがわかない児童がいるかもしれません。そのため、教師が児童の話を聞いて質問をするというようにモデルを示すことも有効です。

単元の後半で、好きな物を伝えるための文章を書きます。書けたら、お互いに読み合います。黙って書いた物を渡し、読み合うだけでは「対話的な学び」にはなりません。読み合う前に「友達の文章を読んだら、質問をしましょう。」といった教師からの働きかけが必要です。

〈深い学び〉 好きな物を伝えるための言葉、友達のことを知るための質問を考える

「深い学び」は、相互交流の中で生まれやすいと言えます。本単元では、児童同士のやりとりが多く設定されているため、「深い学び」につながるきっかけも多いでしょう。

絵を見せながら好きな物について伝える場面で考えてみます。
話し手は、好きな物を絵に描き、自分の経験と伝える内容を関連付けて話します。聞き手は、相手の好きな物やその理由を聞き、感想や質問を考えようとします。話し手・聞き手、それぞれの立場になって、コミュニケーションのための言葉を考える過程で、「深い学び」が生まれることが期待できます。

また、好きな物を伝え合うことで、これまでには無かった「気付き」が生まれることがあります。

「〇〇さんは、折り紙が好きなのか。僕も折り紙が好きだけれど、作っている物が全然違うな。どうやって作っているのだろう。」というように疑問が浮かんだり、「〇〇さんがサッカーを習っていることは知っていたけど、お兄さんがやっているのを見て好きになったのは知らなかったな。」と、新たな気付きが生まれ、そこから感想や疑問が浮かんだりする過程にも「深い学び」が生じるきっかけを見出すことができるでしょう。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

カメラ・ビデオ機能を活用する

自分の好きな物を写真に撮り、実物を提示しながら紹介することができます。様々な角度から撮影した写真を数枚用意しておけば、聞き手がよりイメージしやすくなるでしょう。

また、ビデオ機能を活用することも想定できます。
例えば、「縄跳びが好きなことを紹介したい」と思ったとき、実際に自分が跳んでいる様子を友達に撮影してもらい、その動画を見せながら紹介することができます。「こうさとび・あやとび」等は絵で表現することが難しいので、実際に跳んでいる動画を見せることで、聞き手にもわかりやすくなります。さらに、動画を見た児童が「自分もやってみたい」と思い、休み時間に一緒に遊ぶきっかけにできれば、児童同士の交友範囲も広がっていくでしょう。

1年生同士で動画撮影をすることを想定していますが、難しいようであれば教師が撮影しても良いです。

6. 単元の展開(7時間扱い)

 単元名: すきなもの、なあに

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 教科書を読み、「好きな物を友達に紹介する」という学習課題を確認する。

・第二次(2時3時4時5時
② 自分の好きな物を選び、絵を描く。
  紹介するときに、何を伝えるかを考える。
③ ペア・グループの順に、好きな物を伝え合う。
④ 文章を書くときの決まりを知る。
⑤ 自分が好きなものとその理由を文章で表す。

・第三次(6時7時
⑥ 書いた文章を友達と読み合い、感想を交流する。
⑦ 学習を振り返る。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

児童が主体的に学びに向かうためには、学習課題を身近に感じられるかどうかが重要です。

本単元では「好きな物を紹介すること」が主な活動となっています。好きな物について語るとき、児童はたくさんのことを話したいと思うでしょう。大人でも、自分が熱意をもって関わっていることについて語るときは積極的になります。

では、児童の思いを大切にしつつ、国語の学びにつなげていくにはどうしたら良いでしょうか。
「好きな物について伝え合う」という学習課題を確認したときに、「相手にわかりやすく伝える」ことを意識づけることが大切です。
「私は〇〇が好きです」だけでは、聞き手は物足りないと感じるかもしれません。そこで、「なぜ好きなのか」「好きになったきっかけ」等の観点を加えて話すことで、より相手に伝わりやすく話せるようにしたいと思います。

< 教師の発問、児童の発言例 >

皆さんは、どんな物が好きですか。

工作が好きです。

あやとりが好きです。

サッカーが好きです。

玉ねぎが好きです。

いちごが好きです。

たくさん意見が出てきましたね。この中で、「工作・あやとり・サッカー」はそれをする事が好きということですね。「玉ねぎ・いちご」は、その物が好きなのですね。

僕は、サッカーも好きだし、焼肉も好きだな。

私は、バドミントンとアイスが好き。

皆さん、好きな物がたくさんあると思います。
その好きな物を伝えることを、国語でやっていきますよ。

どうやって伝えればいいんですか。

スピーチみたいに伝えられると思う。

班で話すのがいい。

好きなことを伝えるためには、話して伝えることができそうですね。けれど、好きな物を話すだけでは、聞いている人はもっと知りたいなと思わないかもしれませんね。

好きな物をたくさん話せばいいんじゃない。

好きな物のことを、詳しく説明すればいいんだよ。

サッカーは、ゴールがあって、ボールをけってシュートして…。

やっていることを見せるとか…。

タブレットで見せるのがいい。

話すことだけでなく、その物を見せると伝えやすそうですね。生活科でタブレットを使って写真を撮っていたので、国語でもタブレットで写真を撮ってみましょうか。

動画も撮影していいですか。

何を撮影したいですか。

縄跳びをやっているところを友達に撮ってもらいたいです。

友達同士で撮影し合うこともできそうですね。
では、次の国語の時間には何を話せばいいのかを考えていきましょう。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

イラスト/横井智美

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