かげでいっぱい遊ぼう 〜第3学年「太陽とかげの動き」より〜【理科の壺】
3年生の「太陽とかげの動き」の単元は、影の動きと太陽の位置を関係付けて考えることが大切です。影で遊んで問題を見いだす際に、子供が楽しみながら、影の記録とそのときどきの太陽の位置との関係をしっかりおさえることができると、それらの関係についての考えをもちやすくなります。影に関する体験活動や、記録の見方についてのツボをおさえた指導法や指導アイデアを紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/宇都宮大学共同教育学部附属小学校教諭・渡邊雅浩
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.かげでいっぱい遊ぼう
単元の始めに差異点・共通点から問題を見いだすときに、遊びを取り入れるのも一つの手です。3年「太陽とかげの動き」では、かげを使った遊びをたくさんしてみましょう。
①かげ絵
5人の友達の指と指をつなげて☆を作ってみましょう。地面に☆を作るのって、結構、難しいです。きれいな☆にするには、どうすればいいでしょう? この遊びのコツとしては、まず、友達5人で集まって、指で星形を作ってから、今どんな影ができているかを問いかけます。その後、指の向きや体の位置を調整させるといいですね。この遊びによって、子どもたちは自然に「太陽の位置」を意識して影遊びをするようになります。
②かげつなぎ
1分以内に友達とかげをつないで、できるだけかげを長くしてみましょう。あれ?みんな同じ方向に向かって並びますね。なぜだろう?
この遊びでは、みんなの影がどの方向に伸びているかに着目させて、その方向はどっちかを問いかけます。その後、写真を撮ると、どのグループの子どもも同じ方向を向いているのが面白いです。このときにも、太陽はどこにあるのかを問いかけるといいですね。太陽の反対側に影が伸びてくることに気づくようになります。
③かげふみ鬼
かげふみ鬼は、鬼が逃げる人の影をふんで捕まえる遊びです。晴れた日の校庭で、誰か1人を鬼にして、他の子どもたちは建物などの日陰に入り、待機します。
その後、開始の合図と共に、子どもたちが一斉に日なたに飛び出し、ゲーム開始です。
鬼が誰か別の子の影を踏んだら、踏まれた子が新たに鬼役となり、立場を交換します。
鬼から逃げるとき、一時的に日陰に入って影を消すのもありですが、3秒間など一定時間が過ぎた後に日なたに出させて、ゲームが成立しやすいようにしましょう。
この鬼ごっこを通して、鬼から逃げやすい逃げ方があるか、捕まえやすい追いかけ方はあるかを問いかけてみましょう。
これらの遊びを通して、「かげのできる方位」と「太陽の位置」に気づくことができるようにします。自分の影と、そのときの太陽の位置を遮光板を通して、実際に遊びの中で確認できるといいですね。
2.影の記録とそのときの太陽の位置を関係付けて考える
本学習では、影が伸びる方向の逆に、いつも太陽がある。すなわち、「影が伸びる方向の反対側の方位に太陽がある」ということに着目できるようにします。
遊びを通して、この「影が伸びる方向の逆に、いつも太陽がある」ということをおさえてから、広げた模造紙の中央にストローや棒などを立ててかげの記録をしましょう。それによって、「影が西から北を通って東へ移動していた。また、影は太陽の位置と反対側にできる。このことから、影が西→北→東へと移動するのは、太陽が、その反対に東から昇って南を通って西へ沈むからだ」ということを考察することができる子が増えるようになります。
遊びの中で、影の位置とそのときの太陽の位置を常に意識させておく声掛け(下ごしらえ)が重要です。
影の伸び方を記録
3.追究活動EXTRA「太陽の高さとかげの長さの関係は?」
太陽の方位と位置をつかむことができた子供から、「どうして昼はかげが短いのに、朝や夕方はかげが長いの?」という疑問が出てくることがあります。そのときは、ライトを使って実験してみましょう。
理科室を暗幕などで暗くして、ストローの影が外で記録した影と重なるようにライトの位置を調節してみます。
すると、
ライトが低いときには、ストローの影が長くなって、ライトが高いときには、ストローの影は短くなります。
朝や夕方の太陽は低いところにあって、昼の太陽は高いところにあります。太陽の高さとかげの長さには関係があるんですね。
イラスト/難波孝
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<執筆者プロフィール>
渡邊雅浩●わたなべ・まさひろ 宇都宮大学共同教育学部附属小学校教諭。理科を中心に実践研究を行う。本学教育実習をはじめとした教員養成に携わる。2022年2月、第63次南極地域観測隊に同行し、南極の昭和基地から授業を行う「南極授業」を行った。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。