「教師の指導と自治的活動でいじめを防ごう」対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり #4

連載
対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり

千葉県公立小学校校長

瀧澤 真
対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり

コロナ禍以降、コミュニケーションに苦労する子供や人間関係の希薄な学級が増えていると言います。子供たちが深い絆で結ばれた学級をつくるには、子供同士の関わりをふんだんに取り入れた対話型授業と、子供たちが主体的に取り組む自治的な活動が不可欠です。第4回は、いじめを防ぐ取組についての提案です。

執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真

4月から行っているいじめを防ぐ取組を見直そう

いじめのイメージイラスト

いくら子供たちの絆を深めようと思っても、いじめがあるようでは、その土台が崩れていますよね。もちろん、いじめはいけない、許されないという指導は4月から行っていると思います。しかし、それでいじめが起こらないならば、全国的にこんなにいじめが話題になることはありません。

そこで、再度、いじめを防ぐ取組を見直しましょう。

自治的活動や親和的な雰囲気となる対話型授業を充実させていくことが、結局はいじめ防止になるのですが、その効果がすぐに出るわけではありません。

そのため、まずは教師主導で以下のようなことを再確認してみましょう。

教師の思いを再度伝える

4月に伝えているとは思いますが、再度いじめに対する教師の思いを熱く語りましょう。何度でも繰り返すことで、それほど大切なことなのだということを子供に理解させます。

熱く語る教師

例えば、こんなメッセージを伝えます。

残念なことに、日本全国で「いじめ」の問題が、新聞やテレビで取り上げられています。

先生は、「いじめ」を絶対に許しません。先生はこのクラスで、「いじめ」が起きないように全力を尽くします。ですから、みなさんも「いじめ」の問題を、真剣に考えてください。

人をいじめることは、どんな理由があっても、絶対に許されることではありません。

もし、今、いじめられている人がいたら、勇気を出して誰かに相談してください。あなたは一人ではありません。あなたを守ろうという人は必ずいます。それを信じて、お家の人、先生、友達、誰でもよいですから相談してください。

もし、今、周りに、いじめている子やいじめられている子がいたら、見て見ぬふりをしないで、必ず家の人や先生に教えてください。教えたことによって、あなたがいじめを受けることは絶対にありません。

みなさんが大事にしなければならないことは、相手の立場に立って、心の痛みを感じることができるかどうかということです。そして、自分がされていやだと思うことは、人に対して絶対にしないことです。

みんなで、次のことを考えて行動していきましょう。

①いじめる人を絶対に許しません。
②いじめを受けたときは、「助けて」と声をあげます。
③いじめを見たときは、そのことを大人に伝えます。
④命は、かけがえのない大切なものです。

初期段階での発見システムづくり

とはいえ、それでも起きるのが、いじめです。積極的に認知し、積極的に解決していくことが大切ですね。一番困るのは、陰でいじめが進行し、かなりひどい状況になってから分かるということです。

そこで、初期の段階で発見できるようにします。

(1)ミニアンケートを定期的に実施する

月に1回はミニアンケートを取りましょう。困っていることはないか聞くだけでよいでしょう。今はタブレットを活用すれば、簡単にアンケートがとれますよね。学校で取り組んでいるところも多いと思います。

ポイントは、教師から見て大したことがないなと思う相談事でも、丁寧に対応するということです。そうした対応の積み重ねが、「この先生ならば真剣に相談に乗ってくれる」という信頼につながります。

(2)相談しやすい状況をつくる

日記や生活の反省ノートなどを書かせている場合は、日常的にSOSを出しやすい状況になっていると思います。クラスに相談箱を設置して、いつでも悩みを受け止めるようにしている先生もいます。

子供が困ったときに、相談できるような状況を意図的につくっておきましょう。

(3)子供をよく観察する

子供の様子をよく観察していると、いじめを発見できることも多いものです。

例えば、休み時間一人一人の子がどのような様子なのか見ておくとよいでしょう。いつも一人でいる子はいませんか。特に昼休みに、教室に一人で残ってる子はいないでしょうか。

私は、昼休みは子供と遊ぶことも多かったのですが、あえて教室や図書室、校舎の裏、体育館なども見て回りました。また、外に出ても子供と遊ばずに、遊んでいる様子を眺めることもありました。ドッジボールで、いつも的になっているような子がいれば要注意です。

そのほか、
・席替えをしたときに机を離す
・給食で特定の子の給食を配膳しない
・掃除で特定の子の机を運ばない
・手紙やノートなどを配るときに、特定の子のものだけ配らない
・体育などでチームをつくる時に、特定の子がいつもグループに入れない

そこに、差別、いじめが潜んでいます。そういうサインを見逃さずに、いじめとして対処していく必要があります。

いじめ防止に向けた子供たちの自治的活動

教師の取組と並行して、いじめ防止に向けた子供たちによる取組も行っていきましょう。

(1)学級会でいじめをテーマに話し合う

以下のような流れで、「いじめ」を学級会で取り上げ、話し合いましょう(学年に応じてアレンジしてください)。

○これまで経験した、いやなことを発表する(言える人だけでOK)
○どうすればそのようなことがなくなるか話し合う
○いじめ防止のために心がけることを1人ずつ1枚の紙に書く
○その紙を模造紙に貼り、クラスに掲示する

(2)ありがとうの投書箱を設置する

友達にしてもらって嬉しかった行動や言葉を、学級に設置した投書箱に自由に投函する活動です。ある程度たまったところで、学級委員等が帰りの会などで発表します。

まとめ

いじめを含め学級の様々な問題を子供たちで話し合い、解決していくことも大切です。そうした取組については、この連載で別の機会に述べたいと思います。

今回はいじめに対する教師の働きかけと、子供たちの自治的関わりを中心に述べました。

いじめられた子は一生消えない心の傷を負うこともあります。今回述べたことを定期的に繰り返していくことで、より大きな効果が出ます。様々な側面から、いじめ防止、いじめ対応をしていきましょう。


千葉県公立小学校校長・瀧澤真先生

瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。

イラスト/イラストAC

【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
保護者を味方にする学級経営術(全13回)

【瀧澤真先生ご著書】
『まわりの先生から「むむっ!授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。』(学陽書房)
『まわりの先生から「おっ!クラスまとまったね」と言われる本。』(学陽書房)

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