小3特別活動「ぼうさいマスターになろう」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小3特別活動
「ぼうさいマスターになろう」指導アイデア

文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。6月は、学級活動(2)「ウ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成」の議題として、「ぼうさいマスターになろう」の実践を紹介します。

教室以外の場所で地震や火災が起きた場合に、自分の命を守るための安全で適切な避難行動ができるようにすることをねらいとしています。避難訓練や日常生活の中で、自分の命を守るために自分ができることを意思決定するようにします。

執筆/神奈川県公立小学校統括教諭・長谷川絵美
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
 日本体育大学教授・橋谷由紀

年間執筆計画

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4月 学級活動(3) ア 3年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ ぼうさいマスターになろう
7月 学級活動(1) なかよし集会をしよう
9月 学級活動(3) ウ 学習パワーアップ大作せん
10月 学級活動(1) 係発表会をしよう
11月 学級活動(1) クラス運動会をしよう
12月 学級活動(1) 今年もがんばったね集会をしよう
1月 学級活動(2) エ よくかんで食べよう
2月 学級活動(3) イ スッキリそうじ~みんなのためにきれいに~
3月 学級活動(1) ありがとう集会をしよう

学級活動(2)ウの指導について

学級活動(2)「ウ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成」について、学習指導要領には、次のように示されています。

現在及び生涯にわたって心身の健康を保持増進することや、事件や事故、災害等から身を守り安全に行動すること。

学級活動(2)ウには、保健に関する指導と安全に関する指導があります。本題材で扱う防災については、日常生活を安全に保つために必要なことを理解することや、進んできまりを守り、危険を回避し、安全に行動できる能力や態度を育成することを内容としています。
子供たちが日常の安全に関する問題に気付き、必要な情報を進んで集め、よりよい解決方法を考えて、自分に合った具体的な目標を立てて取り組むことができるようにしましょう。

避難訓練との関連について

学習指導要領解説特別活動編には、保健や安全に関する指導については、避難訓練などの学校行事と関連付けて指導を行うことが重要であると示されています。本題材のように、いつ、どこで起こるか分からない自然災害への対応に関する学習においては、子供たちが自分事として真剣に考えるのが難しいことがあります。
そこで、今までに経験してきた避難訓練の場面を想起したり、避難訓練後に自分の立てためあてについて振り返ったりするなどして、実際の行動と結び付けて考えられるようにしましょう。

学級活動(2)の一連の学習過程について

事前の指導、本時の指導、事後の指導の一連の学習過程については、学習指導要領解説(特別活動編)には、「①問題の発見・確認」「②解決方法等の話合い」「③解決方法の決定」「④決めたことの実践」「⑤振り返り」、そして、「次の課題解決へ」と示されています。簡易的に示すと次のようになります。

また、意思決定に向けた本時の学習については、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つの段階の学習過程を重視しています。子供たち一人一人が自己の問題の解決方法などについて意思決定をし、強い意志をもって粘り強く実践する場が大切になります。

【つかむ】…課題の把握
→適応や健康安全に関わる題材について、本時の課題をつかみます。
【さぐる】…原因の追究
→課題の原因や解決する必要性などについてさぐります。
【見つける】…解決方法等の話合い
→みんなでよりよい解決方法や努力することなどについて話し合います。
【決める】…個人目標の意思決定
→話し合ったことを生かして、自己の課題を解決するために努力すべき具体的な個人目標を決め、実行への強い決意をもちます。

事前の指導

事前に避難訓練や防災についてアンケート調査を行います。そうすることで、題材への関心を高めるとともに、本時の課題をつかみやすくします。

本時のねらい

本題材では、教室以外の場所で、地震や火災が起きた場合に、自分の命を守るための安全で適切な避難行動ができるようにすることをねらいとしています。
3年生の子供たちは、小学校生活の中で何度も避難訓練を経験していて、教室で地震が起きたときには、机の下に入るということは理解しています。しかし、災害はいつ起こるか分からないため、学校の中の様々な場所での避難の仕方を理解し、自分自身で判断をして適切に避難ができるようにする必要があります。また、地震が起きたときには、火災も同時に発生することが多いことから、火災が起きたときの対応についても合わせて確認します。そして、避難訓練や日常生活の中で、自分の命を守るために自分ができることを意思決定するようにします。

本時の指導

【つかむ】

今までの自分の避難訓練への取り組み方について振り返り、課題をつかむ。

①今までの避難訓練のときに意識していたことについて話し合う
今まで経験してきた避難訓練の中で気を付けてきたことや大切にしてきたことを共有し、自分たちが防災に対して学んできたことを確認します。

これまで、避難訓練の時にどんなことに気を付けてきましたか?

地震が来たらすぐに机の下に入るようにしました。

火事のときはハンカチを口に当てました。

いざというときのために、真剣にやるようにしてきました。

②事前にとったアンケートの結果をもとに、防災に対する自分たちの課題に気付く

アンケートの結果を提示し、多くの子供たちが「本当に地震や火事が起きたときに心配なことがある」と回答していることを共有できるようにします。今までの避難訓練に真剣に取り組んできたにもかかわらず心配なことがあったり、低学年だったときの避難訓練では、教師の指示や放送を聞けていなかったりと、思っていたより課題があると実感することで、課題解決への意欲を高めることができます。
また、地震や火事はいつ、どこで起きるか分からないことから、教室以外の場所にいるときや、教師や友達が周りにいないときの行動についてなどにも課題があることに気付けるようにすることがポイントです。

これは前にみんなにとったアンケートの結果です。気が付いたことはありますか?

本当に地震や火事が起きたら心配だと答えた人がとても多いね。

避難訓練は一生懸命やっていたけど、実際に地震が起きたときに、もしも周りに先生や友達がいなくて1人だったら不安だな。

廊下や階段を歩いているときに地震が来たら、机の下に入れないからどうしたらいいのかな。

授業の様子

【さぐる】

学校内で地震や火事が起きたときの危険性について考える

①校内の写真を見て、どのようなことが危険なのかを話し合う
実際の校内の写真(廊下、階段、トイレ、校庭など)を提示し、具体的な危険性についてイメージできるようにします。
また、大地震が起きたときのシミュレーション動画を視聴し、実際にどのような状態になるのか、被害が出るのかなどを知ることで、より自分事として考えることができるようにすることも効果的です。

②地震や火事が起きたときの避難の仕方を知り、まとめる
各自治体などから出されている資料を活用し、地震や火事が起きたときの避難の仕方について知ることができるようにします。校内の様々な場所、地震と火事の避難の仕方について共通していることをまとめることで、避難するうえで大切なポイントに気付くことができます。

【見つける】

地震や火事が起きたときに安全に行動をするためには、どのようにすればよいか考え、話し合う

具体的な個人目標の意思決定を行うために、地震や火事が起きたときにどのような行動をしていくとよいのかを話し合います。行動を具体的にイメージするための手立てとなるよう、「地震や火事が起きたとき」「日常生活からできること」など項目を提示し、整理しながら板書することがポイントです。

わたしは、廊下ではしゃがんで頭を守るようにします。

ぼくは、いつも放送や指示をしっかりと聞いて、いざというときに困らないようにしたいと思います。

わたしは、避難訓練のときに今までは先生や友達についていくだけだったけど、どう避難すればよいか自分でも考えて行動しようと思います。

【決める】

地震や火事が起きたときや、避難訓練で気を付けたいことを決め、ワークシートに書く

「見つける」で話し合ったことなどをもとに、自分に合った具体的な個人目標を考え、学習カードに書きます。

通学路の途中の崖のそばには近寄らないように気を付ける。

避難経路をしっかり覚えて、どこで地震が起きてもすぐ避難できるようにする。

実際に地震や火事が起きたときのことを想定したうえで、「いつも放送をしっかり聞くようにする」といった日常生活の中で取り組める目標を立ててもよいことを伝えましょう。
何人かに発表してもらい、自分の立てた目標を修正する際の参考にできるようにします。

学習カード例

板書例

板書例

事後の指導

【振り返る】

自分の決めた目標や実践方法について、振り返る

学級活動(2)の学習では、自分が決めためあてや方法を一定の期間継続して実践し、帰りの会などで振り返りの場を設定するようにします。本題材の特性を考慮すると、避難訓練前に授業を行い、振り返りは避難訓練後に行うと効果的です。そうすることで、自分の決めた目標に対して達成できたかどうかを振り返ったり、新たな課題を見付けて実践への意欲をさらに高めたりすることにつながります。予告なしの避難訓練や休み時間を想定した避難訓練などのときに合わせて行うことも考えられます。
また、学年だよりや学級だよりなどを通して、子供たちの学習の様子を家庭に伝え、防災についての保護者の意識を高め、連携を図り、家庭や地域でも気を付けられるようにすることも大切です。

【参考文献等】
『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説(特別活動編)』文部科学省 東洋館出版社
『みんなでよりよい学級・学校生活をつくる特別活動 小学校編』文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 文溪堂
『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校 特別活動』文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 東洋館出版社
『学校防災のための参考資料 「生きる力」を育む防災教育の展開』文部科学省

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


安部恭子視学官

監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


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楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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